IWCの新工場やキーパーソンを取材【後編】――声高らかに掲げた「8年保証」を支える原動力

2019/12/29 19:35
SHARE ON

スイスの高級時計ブランド、IWCの全貌を知る全3編の大特集。【前編】ではファクトリーツアーとCOOへのインタビューを、【中編】では革新にチャレンジし続ける姿勢について紹介した。ラストとなる3編目は、新サービス「8年保証」を実現させることに貢献する自社製ムーブメントと、IWCのレギュラーコレクションについて解説する。

IWCの自社製ムーブメント

製品に応じ、IWCは様々なムーブメントを開発してきた。最も新しいものでは、「パイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイア」に搭載される自社製Cal.32110がある。これは、今回取材した同社COOのアンドレアス・マンフレッド・ヴォル氏曰く、「今後のベースのひとつになる」という。その通り、史上初のシリコン製パーツを内蔵する一方で、伝統の双方向爪巻き上げ機構も組み込みながら、価格は極めて良心的。この他にも、ヴォル氏が心血を注いだマニュファクチュールセンターの完成に合わせて新世代クロノグラフムーブメントとなるCal.69000シリーズと、マルチタイムゾーン表示のCal.82000シリーズも登場した。これに既存のCal.50000シリーズなどを加えると、ほぼIWCで展開する機能のほとんどを自社製ムーブメントでカバーできることになる。ヴォル氏は「これから自社製ムーブメントの比率を高めていきます」とも語っていた。

[IWC史上初めて先進的なシリコンパーツを投入]

ガンギ車とアンクルレバーをシリコン製にして耐摩耗性を強化したのが、3針ウオッチ用のCal.32000シリーズ。双方向爪巻き上げシステムと大型バレルによって、3日巻きを実現

シャフハウゼンの地で、IWCはマニュファクチュールとして歴史を積み重ねてきた。現在は3針用から超複雑ムーブメントまで内製化を達成しており、いずれも精度、耐久性、信頼性を追求し、つねにアップデートがなされている。

 

IWCのレギュラーコレクション

現在、IWCには6つのコレクションがある。大定番である「ポルトギーゼ」は、1939年当時としては破格の大型腕時計としてデビュー。それより前の1936年には、パイロット・ウォッチの起源となる「スペシャル・パイロット・ウォッチ」もある。だが、IWCミュージアムの案内人によると、1940年の「ビッグ・パイロット・ウォッチ 52 T.S.C.」の開発には、ポルトギーゼの存在が大きく関わっていたという。それほどポルトギーゼは、当時としては革新的だったのだ。

そうして男性向けの本格ウオッチに活路を見出したIWCは、1955年に「インヂュニア」を発表。さらに1967年の「アクアタイマー」、1969年の「ダ・ヴィンチ」へと続く独創コレクションも登場。これにモダンドレスウオッチの「ポートフィノ」が1988年から加わり、現代に至る基礎が築かれたのだ。

「ポルトギーゼ・オートマティック」

「ポルトギーゼ・オートマティック」Ref.IW500704 146万3000円/細いリーフ針とアラビア数字を共通とする、クラシカルなドレス系シリーズ。ルーツは1930年代に製作した、懐中時計用ムーブメントを使った高精度モデルだ。Cal.52010搭載

陸・海・空のプロフェッショナルウオッチとクラシックを体現するドレスウオッチから構成されるIWCのレギュラーラインナップ。質実剛健な一貫したスタイルこそ、時を経ても色褪せることのないIWCの真骨頂といえる。

 

新たなマザーファクトリーの完成から約1年。IWCが今回打ち出した「8年保証」には、ブランドがこれからもさらに新規開発にチャレンジしていくことの表明でもあるに違いない。だが、私たちは安心して手にすればよい。なぜなら、いつの時代もIWCは、“プローブス・スカフージア(シャフハウゼンの優秀な、そして徹底したクラフツマンシップ)”の精神で時計を作り続けているのだから。

 

問:IWC TEL.0120-05-1868
https://www.iwc.com/ja/home.html

TAG

人気のタグ