IWCの新工場やキーパーソンを取材【中編】――革新にチャレンジし続ける姿勢

2019/12/25 17:30
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IWC特集【前編】では、ファクトリーツアーとCOOへのインタビューの模様を紹介したが、今回の取材ではシャフハウゼン本社のミュージアムも訪問した。ここで再発見できたのは、IWCが打ち出してきた革新の歴史。新しいことに挑戦しながら紡がれた伝統によって、かけがえのない信頼を勝ち取ってきた。その証として、歴史的なタイムピースが存在する。

自信を持ってチャレンジできるだけの製造体制がある。だからIWCは革新に挑み続ける

【メカニズムの革新】飽くなき高精度の追求から実用性のさらなる向上まで

創業者の手によるジョーンズ・キャリバーの長い緩急針は、精密な歩度調整のためのもの。1950年のペラトン自動巻き方式も、より高効率での巻き上げを目指したものだった。技術が進歩したいまはさらなる革新を遂げている。

ミュージアム所蔵のジョーンズキャリバー。テンプの軸受けから伸びる緩急針が特徴的。プレート下部の「H」は、高精度を示す刻印
ペラトン自動巻き方式は、ローターの動きにカムが連動。回転方向により互い違いに動く2つの爪レバーがギアを回す

【メカニズムの革新】を象徴する現行モデル

パイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイア Ref.IW326802 65万4500円/ブランド初のシリコン脱進機や、新開発の潤滑剤を取り入れるなどして、72時間パワーリザーブとさらなる耐久性を確保したCal.32110を搭載。ローターには伝統の双方向爪巻き上げ方式の発展型が組み込まれる

 

創業者の開拓者精神が挑戦的な製品開発へと結実

F.A.ジョーンズがシャフハウゼンに目をつけたのは、ライン川の豊富な水流を元にした水力発電を用いて、アメリカ式の近代的な製造体制を築くためだった。加えて、当時のスイスの人件費は安く、伝統の時計製造技術もある。ボストンからはるかスイスに渡るだけの魅力があったわけだ。そして、彼の読みはあたり、いまやシャフハウゼンは時計製造の盛んな街となったのである。

こうした創業者の考えは、まさしく新しいマニュファクチュールセンターにも当てはまるだろう。近代的な設備と伝統的な時計製造の融合。また、聞くところによると親子三代勤め上げている人もいるという。最適な環境があり、働き手に愛されるブランドの製品に妥協などあるはずもない。だからこそ、IWCがこれまでに挑んだ革新的なモデルは、いずれも時計界のマスターピースとなってきたのだ。

例えば1980年にポルシェ・デザインと作り上げたチタンケースの時計は、いまも愛用する時計ファンが多い。当時の革新的な素材でありながら何十年を経ても現役で使えるという事実は、揺るぎない頑丈さの証明である。そして、こうした数々の裏付けに基づき、IWCはいまも独立独歩の開発を進めている。IWCの提示した革新に触れること、それは時計界の新たなマスターピースを手にすることと同義といえよう。

長年の製造拠点だったシャフハウゼンにあるIWC本社。現在は試作品の製造や試験、最終検査などが行われている

 

【マテリアルの革新】レッドゴールドもチタンもセラミックも得意な素材

2019年はセラタニウムやArmor Gold®、特別カラーのセラミックなど、素材開発のリーディングカンパニーとしての存在感を見せたIWC。その歴史は古く、創業当初からレッドゴールドを採用。チタンでも先駆者になっている。

高温の炉から取り出されたばかりのセラタニウムケース。その製法はシークレット
一番右にあるのは、1874年に製造されたレッドゴールドケースのポケットウオッチ
1980年にポルシェ・デザインと開発して以来、チタニウム製ケースの製造でIWCは常に先を進んでいた

【マテリアルの革新】を象徴する現行モデル

パイロット・ウォッチ・クロノグラフ・トップガン“モハーヴェ・デザート” Ref.IW389103 128万1500円/1986年のダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダーから始まった、IWCのセラミック開発の歴史。現代では、他にないサンドカラーを作り出すほど、技術力は高い。素材特性も最高位に引き上げられている

パイロット・ウォッチ・ダブルクロノグラフ・トップガン・セラタニウム Ref.IW371815 171万6000円/IWC最新の革新マテリアルが、セラタニウム。特別なチタン素材をセラミックのように高温の炉で焼き上げることで素材の組成を変化させ、強さと軽さの共存を実現した。わずかにグレーがかったブラックカラーの見た目も特徴だ

 

【オートオルロジュリーの革新】ハイコンプリケーションでも独創性を発揮

IWCの複雑時計として最も有名な歴代モデルは、IWCの頭脳クルト・クラウス氏が考案した西暦表示を持つ永久カレンダーとクロノグラフを備えた1985年発表の「ダ・ヴィンチ」。その後の複雑機構開発は、まさに破竹の勢い!

IWCのコレクションには、様々な複雑機構がある。これらはマスターウオッチメーカーが担当

【オートオルロジュリーの革新】を象徴する現行モデル

ポルトギーゼ・トゥールビヨン・ミステール・レトログラード Ref.IW504601 1419万円/まるで宙空に浮かぶかのように回転運動するフライング・ミニッツ・トゥールビヨンを12時位置に備えた複雑時計。文字盤左下にあるレトログラード式のデイト表示は、月の変わり目をダイナミックに報せる。総部品数368個のうちトゥールビヨンが82個を占める

ビッグ・パイロット・ウォッチ・コンスタントフォース・トゥールビヨン“プティ・プランス” Ref.IW590303 価格要問い合わせ/特許取得のコンスタントフォース機構は、輪列を伝わる駆動力の流れから脱進機を切り離した構造。ひげゼンマイが一時的に蓄えた一定の力をガンギ車が受けることで、安定した精度を実現。ケースは、新素材「Armor Gold®」だ

 

問:IWC TEL.0120-05-1868
https://www.iwc.com/ja/home.html

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