ウオッチナビ編集部が選ぶ手巻きクロノグラフ3選

手巻きムーブメントは、自動巻きに比べて耐久性が高く、ムーブメント自体の厚さを抑えることができる点が魅力だ。そこで今回は、手巻きムーブメントを搭載したクロノグラフモデルを【オメガ(OMEGA)】、【SINN(ジン)】、【TISSOT(ティソ)】から3本ピックアップして紹介する。

ラッカー仕上げのホワイト文字盤を採用

 

本機の最大の見どころは、艶感のあるラッカー仕上げのホワイト文字盤だ。初代スピードマスターが誕生した1957年当時、開発に携わったデザイナーたちの大きな目標のひとつは、優れた視認性を備えた見やすい表示にすることで、シグネチャーともいえるブラックの文字盤にホワイトの針とインデックスというデザインが生まれたのには、このような背景がある。本機では、初代モデルの文字盤と針とインデックスの配色が逆となるが、優れた視認性はもちろんキープ。さらに、ラッカー仕上げのホワイト文字盤上で映えるアクセントとして、「Speedmaster」の文字を赤でデザインする。なお、ムーンウォッチのステップダイアルにラッカー仕上げが採用されたのは、本機が初となる。

1969年製造の「アラスカ I」のDNAを受け継ぐ

「スピードマスター ムーンウォッチ ホワイトダイアル」のホワイト文字は、宇宙遊泳などの船外活動(EVA)の際に着用されるホワイトとブラックの宇宙服をイメージ。「スピードマスター ムーンウォッチ」は、1965年以来、NASAの宇宙飛行士に公式に着用され、さらに月面で着用された最初の腕時計としての歴史も踏まえると、このデザインは必然から生まれたものといえよう。実はホワイト文字の採用には、もうひとつ理由があり、それは1969年に製造されたプロトタイプ「アラスカ I」のプロトタイプの存在だ。宇宙で使う完璧な時計を設計するNASAの極秘プロジェクトの一環として開発され、熱反射率に関する数ヶ月にわたる実験の結果、他の色よりも高い成果が得られたことから、「アラスカ I」にはホワイト文字盤が採用されている。本機はこの希少モデルのDNAを受け継いでおり、ブランドの熱心なファンにとっては心くすぐられるディテールになっている。

オメガ「スピードマスター ムーンウォッチ ホワイトダイアル」 Ref.310.30.42.50.04.001 125万4000円/手巻き(Cal.3861)、50時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット。ドーム型強化サファイアクリスタル風防(無反射加工)。直径42mm、厚さ13.2mm、質量140g。5気圧防水。

 

問い合わせ先:オメガ TEL.0570-000087 https://www.omegawatches.jp/

 

ジンの基本精神を体現する「103」コレクション

 

優れた視認性、刻時・計時精度を誇る実用的なクロノグラフとして、ブランドの基本精神を体現する「103」コレクション。今回、限定モデルとして登場した「103.St.Ty.Hd」は、約20年前に発売されたアクリルガラスと手巻きムーブメントを搭載したモデルをモチーフとしており、衝撃耐性を持つ強化アクリルガラスと58時間以上のパワーリザーブを備えた手巻きムーブメント、キャリバーSW510Mを採用している。

デザイン性と視認性を両立した文字盤

「103.St.Ty.Hd」は41mm径のステンレススチール製ケースに、両方向回転式のブラックカラーベゼルをはじめ、マットブラックの文字盤、ベゼル内側のタキメータースケール、深いグリーンのボアレザーストラップなど魅力的な要素を数多く備える。マットブラックの文字盤には、3時位置に30分積算計、6時位置に12時間積算計、9時位置にスモールセコンドをレイアウト。これらのインダイアルはマットシルクのライトイエローでデザインされており、さらにV字型にシンメトリーに配置したことで、明瞭なコントラストによる高い視認性と均整の取れた表情を見事に両立した。クロノグラフ秒針と分針はダークレッド、30分積算計の目盛りは赤と黒で描かれ、こちらもデザイン性と視認性の向上に大きく貢献。アプライドインデックスと時・分針には夜光塗料を施し、暗所でも問題なく時刻の読み取りが行なうことができる。また、ベゼルの内側に配置されたタキメータースケールを用いることで、時速60kmから時速600kmまでの速度を正確に計測可能だ。

ジン「103.St.Ty.Hd」 66万円/手巻き(Cal.SW510M)、2万8800振動、約58時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース、ボアレザーストラップ。直径41mm、厚さ14.8mm、質量69g。20気圧防水。世界限定1000本。2024年初夏発売予定。

 

問い合わせ先:ホッタ TEL:03-5148-2174 https://sinn-japan.jp/

 

ヴィンテージデザインのクロノグラフ

1970年代に高い評価を得たモデル「PR516 クロノグラフ」のデザインを再現し、機能面を最新技術でアップデートしたクロノグラフコレクションが誕生した。ドライビングスピリットを熱く搔き立てるスポーティなデザインが特徴のコレクションとして、メカニカルモデルと3つのクオーツモデルがラインナップしている。

ティソ PR516コレクションは、堅牢性とスタイリッシュさを兼ね備え、様々なスタイルにマッチするスポーティなデザインが特徴。ステンレススチールケースに、計時機能を備えた3つのクラシックなデザインのサブダイアル、ベゼルにはタキメーターが施されアドレナリン全開のアクティビティに必要なスピード計測をすることができる。メカニカルモデルとクオーツモデルでそれぞれ異なるサブダイアルの配置が、両者のデザインの違いを引き立たせている。ベゼル、インデックス、そしてバトン型の時分針には、スーパールミノヴァ®を採用しており、あらゆる条件下でも明るく発光し、優れた視認性を確保した。ドーム型の形状で、上品な印象を与えるステンレススチール製ブレスレットは、インターチェンジャブル機構を採用しており、ストラップを付け替えることでフォーマルにもカジュアルなスタイルにも合わせることができる。

クラフツマンシップを象徴するメカニカルモデル

搭載するムーブメントには、ティソとして初めてETA/バルジューA05.291を採用し、PR516のための新しいデザインが施されている。「TISSOT 1853」の文字が刻まれたスペシャルなデザインが施されたブリッジを採用。さらにゼンマイはスライディング式ではなく固定式ブライドルが採用されており、完全に巻き上げられた状態でロックすることができる。

A05.291の最も注目すべき特徴の一つは、最長68時間という驚異的なパワーリザーブだ。この稼働時間は、新しく設計されたバレルの構造によって実現されている。A05.291のもう一つの重要な特徴は耐磁性だ。ひげゼンマイに高い耐磁性を持つニヴァクロン™を組み込むことで、時計への磁場の影響を大幅に減らすことを実現。この革新的な素材は、磁気による停止や残留影響を最小限に抑えるだけでなく、さまざまな環境で安定した性能も保証する。

摩耗や経年変化による精度への影響を抑え、ムーブメントの長期的な信頼性を向上させるため、従来のインデックス組み立ての代わりにレーザーによる精密調整を採用。この先進的な方法により、多くのムーブメントが精度を失うパワーリザーブの終盤に、安定性と精度を保証する。毎時2万8800振動で動作するA05.291は、最適なパフォーマンスを発揮するよう設計されており、エラボレグレードで、日差±5秒の精度を実現している。

ティソ「PR516 クロノグラフ」 Ref.T149.459.21.051.00 27万3900円/手巻き(Cal.A05.291)、毎時2万8800振動、最長68時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット。サファイアクリスタル風防。直径41mm、厚さ13.7mm。10気圧防水。

 

問い合わせ先:ティソ TEL.03-6427-0366 https://www.tissotwatches.com/ja-jp/ ※価格は記事公開時点の税込価格です。限定モデルは完売の可能性があります。

Text/平野翔太(WN編集部)

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