1世紀ブランドを徹底解説【ブライトリング】ナビタイマー&クロノマットなどクロノグラフにおける数々の先駆的な偉業に満ちた140年の歴史

時代の変化や流行に流されず、一貫してクオリティを提供する時計ブランドには、創業から1世紀を超える存在も少なくない。とりわけ機械式時計に対するこだわりの強いブランドは、ユーザーが求める厳しい基準を満たして信頼や安心を獲得してきたからこそ、現在の地位を確立しているのだ。本連載では、1世紀以上の歴史を持つ10の名門をピックアップ。第3回となる今回取り上げる【ブライトリング(BREITLING)】は、2大フラッグシップコレクション「ナビタイマー」&「クロノマット」を中心に解説する。


↑クロノグラフのプッシュボタンをリューズから分離し、2時位置に独立させた世界初のブライトリング製腕時計クロノグラフ。3時位置に30分計、中央軸にクロノグラフ秒針を備える。

 

航空界とともに進化してきたクロノグラフのトップブランド

 

弱冠24歳のレオン・ブライトリングが時計工房を開いたとき、彼の夢はクロノグラフなど計時機能を発展させることにあった。その遺志を継いだ2代目ガストンは、プッシュボタンを2時位置に独立させた腕時計クロノグラフを開発。さらに3代目ウィリーはリセット専用のプッシュボタンを4時位置に設け、リューズ両側に2つのプッシュボタンがある現代的クロノグラフの原型を完成させたのだった。

2024年に創業140周年を迎えたブライトリングの歴史は、こうした先駆的な偉業に彩られている。世界で初めて航空用回転計算尺を搭載すべく1952年に開発が始まったナビタイマーしかり、薄型クオーツが全盛の1980年代に、あえて機械式を採用したクロノマットしかり。前者はパイロットに認められて航空時計のカリスマ的な存在となり、後者は世界的な大ヒットにより機械式復活の起爆剤となった。

 


↑リセット専用のプッシュボタンを4時位置に移設することで、1934年に特許を取得。リューズの両側にプッシャーを置く現代クロノグラフの起源となった。

 

しかも、ブライトリングは飽くなき進化を続けるブランドだ。たとえば先代ナビタイマーまで回転計算尺は特殊なプロテクションプリントを採用していた。これは目盛りをマスキングした上で文字盤色を塗った後、マスキングを剝がし、文字盤素材に施したシルバーのメッキを目盛りとして抜き出したもの。これなら何年たっても目盛りが剥がれ落ちる心配はない。だが、現行モデルはプロテクションプリントがすでに不要となった。文字盤色にシルバー塗装の目盛りを載せているのだが、技術の進化によって精密な印字が可能となり、経年変化でも摩擦でも剥がれ落ちる心配はない。こうした時代ごとの最先端を開発・導入したため、全てのモデルに機能美が息づいている。トレンドを追った美しさではなく、機能追求から生まれた”用の美”だ。

 


↑1983年のフレッチェ・トリコローリ公式モデルを経て、1984年に市販されたクロノマット は世界的に大ヒット。写真は1987年の広告。

 

最近はペットボトルをアップサイクルしたウオッチボックスの導入など、業界初の試みが話題となっている。さらに環境支援活動にも積極的で、大気中の二酸化炭素を除去する技術を開発した企業クライムワークスと、加えて環境に配慮した水素飛行機による世界一周を目指すクライメート インパルスとも提携した。

日本のファンとブランドの距離感が近いブライトリングだが、東京と大阪でポップアップ・ラウンジを開催するなど、カスタマーサービスでもサステナブルを目指しているように見える。時代に合わせて変わるべきもの、時代を経ても変わらないもの、そのせめぎ合いが現代のブライトリングの魅力を形作っている。

 

≪ブライトリング主要コレクション≫

偉大な歴史に敬意を払いながらモダンレトロに進化

(上)ナビタイマーのオリジナルモデル Ref.896

1952年に開発が始まり、その2年後に最初のナビタイマーRef.806をパイロット協会(AOPA)会員向けに納品。約40mmのステンレススチールケースにバルジューCal.72を搭載し、回転計算尺の周囲に滑り止めのビーズ装飾が施された。

(中)ブライトリング「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43」 Ref.AB0138211B1A1 124万3000円

初代モデルから続く機能美を踏襲しつつ、2022年に全てのディテールを更新。回転計算尺の角度を緩やかにしてタキメーターを外し、AOPAロゴが復活した。インデックスは多面形状化し、またドーム型サファイアクリスタルのレンズ効果で緻密な目盛りも視認しやすくなっている。

スペック:自動巻き(Cal.ブライトリング01)、毎時2万8800振動、約70時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径43mm、厚さ13.6mm。3気圧防水。

(下)ブライトリング「ナビタイマー オートマチック GMT 41」 Ref.A32310171C1P1 77万6600円

アイコニックな回転計算尺を継承しながら、モダンレトロにアップデートされたナビタイマーのGMTモデル。24時間表示をインナースケールに配すことで、視認性とデザイン性を高度に両立した。文字盤は爽やかなアイスブルーのほか、ブラックやシルバー、18Kレッドゴールドケースとグリーンの組み合わせなども用意されている。

スペック:自動巻き(Cal.ブライトリング32)、毎時2万8800振動、約42時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース、アリゲーターストラップ。直径41mm、厚さ11.6mm。3気圧防水。

 

フルチタニウムで軽量化しつつモダンレトロなスタイルを堅持

ブライトリング「クロノマット B01 42」 Ref.EB0134101M1E1 163万3500円

ライダータブやルーローブレスなどアイコニックな意匠を1984年登場モデルから受け継ぐマルチパーパス(万能)なクロノグラフ。グレード5チタンモデルはブレス仕様でも重さ約150gという計量仕様で、ステンレススチールと色合いが近く質感も高い。ブルーのクロノグラフ秒針が本機の特徴となっている。

スペック:自動巻き(Cal.ブライトリング01)、毎時2万8800振動、約70時間パワーリザーブ。チタンケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径42mm、厚さ15.1mm。20気圧防水。

 

 

”古臭く見えないこと、退屈でないこと”を重視


↑アンティーク時計蒐集家のフレッド・マンデルバウム氏。ジョージ・カーンCEOに見い出 された“世界一のブライトリング・コレクター”は、その豊富な知識を活かし、ブライトリングの製品開発にも深く関わっている。

 

70周年にあたる2022年、ナビタイマーファミリーのアップデートが始まった。その開発を強力に支援したのがフレッド・マンデルバウム氏だ。

(フレッド・マンデルバウム氏)「歴代ナビタイマーのエッセンスを抽出し、現代の技術と洗練された感性で再構築するのが今のブライトリングのやり方。その結果、現行クロノグラフは全てが新しくなりました」 

創業140周年にあたる2024年、新しいオートマチックとGMTの誕生で、ナビタイマーのアップデートがひと段落したことになる。

「重要なのは”古臭く見えないこと、退屈でないこと”。元々の”古臭く見えないこと、退屈でないこと”を重視核となるものを失わないことが大切で、アイコニックなヘリテージ要素を蘇らせつつ、現代的解釈を加えてモダンとレトロのバランスを見極めるのです」

 


↑1962年、オーロラ7号に搭乗したスコット・カーペンター。4時間56分5秒をかけて地球軌道を3周した。

 

同じく140周年を記念した逸品、コスモノートとエアロスペースのこだわりは何だろうか?

「1966年にヨルダン国王がコスモノートを気に入って金無垢の特別仕様を作ったことがあります。国王だけが着けた金無垢コスモノートを、いま、みなさんが着けられる(笑)。宇宙飛行士のスコット・カーペンターと、ヨルダン国王の2つのストーリーを秘めたモデルです」

 

≪ブライトリング主要コレクション≫

24時間で文字盤を1周する特別な時針を備えるナビタイマーの末裔

ブライトリング「ナビタイマー B12 クロノグラフ 41 コスモノート」 Ref.RB12302A1L1P1 295万9000円

NASAのマーキュリー計画で選ばれた最初の7人の宇宙飛行士「マーキュリー・セブン」の一人、スコット・カーペンターは1962年にマーキュリー・アトラス7号で地球周回飛行を成功させた。この偉業を支えた24時間表示のコスモノートを称え、ブライトリング創業140周年アニバーサリーモデルとして限定リリース。

スペック:自動巻き(Cal.ブライトリングB12)、毎時2万8800振動、約70時間パワーリザーブ。18Kレッドゴールドケース(シースルーバック)、アリゲーターレザーストラップ。直径41mm、厚さ13.6mm。3気圧防水。世界限定250本。

 

さらに1985年には、クロノマットでもできなかったアラームや1/100秒計測、複数の時間帯表示などを可能にする新世代のクオーツウオッチとしてエアロスペースを完成させた。

「あるとき電子部品が寿命を迎えて供給が止まることを知ったブライトリングは、巨額投資を行い自社でエンジン部分自体を作ってしまいました。そのような逸話を持つエアロスペースの最新作は、オービター3の偉業にオマージュを捧げたモデルですが、強靭な精神力を持つベルトラン・ピカールでさえ世界一周の途中で弱気になり、18日目の日記に”諦めない限り失敗はない。僕は諦めない”と記している。それはブライトリングの精神性と見事に呼応します。諦めるという道もあるけれど、諦めない、妥協しない。ブライトリング製品には、そんな精神性や物語が詰まっているのです」

 

≪ブライトリング主要コレクション≫

リューズ一本でマルチファンクションを操るハイスペックモデル

ブライトリング「エアロスペース B70 オービター」 Ref.EB70101A1O1E1 64万3500円

オービター3の偉業から25周年を記念して、気球のカプセルと同じオレンジを採用したプロフェッショナルラインモデル。通常の10倍精度を誇るスーパークオーツをチタンケースに搭載する。

スペック:クオーツ(Cal.ブライトリングB70)。チタンケース&ブレスレット。直径43mm、厚さ12.9mm。10気圧防水。

 

 

問い合わせ先:ブライトリング・ジャパン TEL.0120-105-707 https://www.breitling.com/jp-ja/ ※価格は記事公開時点の税込価格です。限定モデルは完売の可能性があります。

◎本記事は『ウオッチナビ 2024 Autumn Vol.95』より抜粋・編集しています。

Text/WATCHNAVI編集部

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