2025年7月、【ティファニー(TIFFANY & CO.)】のアジア最大の旗艦店として東京・銀座に誕生したティファニー銀座。店内には、世界的なアーティストによる作品約50点、そして日本初公開を含む約65点もの貴重なアーカイブピースが展示されている。創業から188年、ティファニーが培ってきた芸術との深い絆に満ちた、まるで美術館のような空間の全貌をこの記事では紹介していく。

高名なアーティストの作品を随所に展示
まず、ティファニー銀座の1階に足を踏み入れると、イタリア出身の芸術家、ミケランジェロ・ピストレットによる『Color and Light』が来訪者を迎える。鮮やかなブルーの背景に破片状の鏡が浮かび上がるこの作品は、見る角度によって映り込む像が変化。ピストレットが追い求めた“鑑賞者と作品、そして空間の境界をなくす”という哲学を、ティファニーのために特別に表現した傑作だ。同じフロアのエレベーターロビーでは、現代アートの巨匠と呼ばれるダミアン・ハーストの『Tiffany Superb』を展示している。精緻な羽を持つ蝶たちが、まるで重力から解き放たれたかのように宙を舞う姿は、ハーストが作品を通して一貫して探求してきた“美”と“死”、そして“変容”というテーマをブランドの美意識と融合させたものとなる。

2階ではミニマリズムの旗手、ドナルド・ジャッドの『Untitled(無題)』が空間に静かな緊張感をもたらす。銅とアクリルというシンプルな素材を組み合わせたこの作品は、ジャッドが追い求めた“体験する彫刻”の理念を体現し、アクリル越しに映し出されるティファニーブルーの光芒は、繊細そのもの。同フロアには、日本での馴染みの深いポップアートの旗手、アンディ・ウォーホルが手がけた『Double Elvis』も展示されている。セレブリティや消費社会を題材とし、銀色の背景に二重に重ねられた往年のスター、エルヴィス・プレスリーの姿は、彼のカリスマ性とコマーシャルアピールの両面を描いたものだ。

そして、日本の芸術との深い絆を示すのは、2階VICルームに展示された日本人アーティスト、ススム・カミジョウの『The Chill』。プードルをモチーフに、書道とグラフィックが融合した彼のスタイルは、日本の芸術を大切にするティファニーの姿勢と共鳴する。また、3階のジェニー・ホルツァーによる『Unavailable』は、社会や政治をテーマに、リネンに油彩と金箔を用いた4つのパートで構成される絵画となっている。

ブランドの豊かな歴史を物語るアーカイブピース
ティファニー銀座では、アート作品だけでなく、ブランドの輝かしい歴史を伝えるアーカイブピースを巡る旅も体験できる。地下1階のダイヤモンドフロアでは、創業者のチャールズ・ルイス・ティファニーが“キング・オブ・ダイヤモンド”と称された所以を物語る精緻なピースを展示。デイジーとキキョウのスワッグネックレスは、19世紀の職人技と審美眼が凝縮された、まさに時代を超えた芸術品であり、ぜひ目にしておきたい。
時計製作の伝統も、ティファニーの重要な一部だ。2階のウオッチギャラリーに展示された懐中時計は、1912年のタイタニック号沈没事故から生還した女性たちが、命の恩人である船長に贈ったもの。この時計は、悲劇の中での感謝という深い物語を今に伝える貴重なアイテムである。また、3階のVICルームを彩る『ウィステリア テーブルランプ』は、日本の芸術に強く影響を受けた創業者の息子、ルイス・コンフォート・ティファニーの作品であり、ティファニー銀座のファサードデザインの着想源にもなった、自然の美を追求するブランドの精神を象徴している。さらに、3階のシュランバージェエリアでは、ダイヤモンドとサファイアが輝く『フルール ド メール』ブローチを展示。これは、伝説的な女優として名を残すエリザベス・テイラーが夫のリチャード・バートンから贈られたものだ。
アートが表現する日本とティファニーの深い絆
19世紀以来、日本の芸術はティファニーに絶え間ないインスピレーションを与えてきた。その絆は、ウィンドウディスプレイに登場する歌川広重の浮世絵や伝統芸能・歌舞伎のモチーフ、そして3階に展示される菊のブローチに見て取れる。一枚一枚がフレッシュウォーターパールでかたどられたこのブローチは、ティファニーと日本との深い絆の結晶ともいえよう。
ブランドの過去と未来が交差するティファニー 銀座は、時を超越したアート作品に彩られ、唯一無二の芸術体験を私たちに提供する。五感を刺激し、心を豊かにしてくれる銀座の新たなランドマークとして、一度は訪れておきたいスポットである。
【ティファニー 銀座】
住所:東京都中央区銀座6-9-2
TEL:0120-488-712
営業時間:10:30~20:30
定休日:不定休
問い合わせ先:ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク TEL.0120-488-712 https://www.tiffany.co.jp
Text/三宅裕丈
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