この秋、3つのブランドから魅惑の新作が届いた。幾何学的なスクエアデザインをモダンに昇華した【ノモス グラスヒュッテ（NOMOS GLASHÜTTE）】「テトラ オリジンズ」。葉巻文化へのオマージュを刻む【クエルボ・イ・ソブリノス（CUERVO Y SOBRINOS）】「エスプレンディドス ヴィトラ」。そして、柔らかな曲線にゴールドの輝きを宿した【レイモンド・ウェイル（RAYMOND WEIL）】「フリーランサー クッション」。クラフツマンシップと美意識が交錯する新作が揃った。
自然の色をまとうノモスの新たな表現
ドイツ時計ブランド「ノモス グラスヒュッテ」のクラシックモデル「テトラ」に、洗練された4つの新色を揃えた「テトラ オリジンズ」が登場。自然界の要素から着想を得た繊細なカラーパレットが、幾何学的なスクエアケースと共鳴し、テトラの新たな魅力を描き出す。
「テトラ」は、ノモス唯一のスクエアモデルとして知られる。無駄のない直線で構成されたケースは、ドイツ・グラスヒュッテの精緻な時計製造の伝統を受け継ぎながら、現代的な美学を映し出す存在である。新作「テトラ オリジンズ」は、そのミニマリズムの中に色彩の表情を取り込み、個性と静けさを共存させた。柔らかな角度をもつラグと高さわずか6.5mmのスレンダーなフォルムが、手首に心地よくフィットする。搭載するのは、ノモス自社開発のスウィングシステムを備える手巻きキャリバー「DUW4001」。堅牢性と精度を兼ね備えたムーブメントであり、ブランド哲学「真の卓越は工芸と個性の調和に宿る」を体現する心臓部である。
オーカー（NM437） ― 大地の光をまとう黄金
古代の職人や王族が愛した顔料を思わせる、温もりあるゴールデンイエロー。二色のイエローにレッドのインデックスを組み合わせたスモールセコンドが、豊穣と生命力を感じさせる。落ち着きの中に華やぎを宿す一本である。
テラコッタ（NM438） ― 陽光を映す赤土の温もり
強い日差しを受けた大地を思わせる赤みを帯びたブラウン。スモールセコンドのコントラストカラーが奥行きを生み、力強くも優しい印象を与える。ジュエリーやファッションと自然に調和する、温かみあるトーンが魅力だ。
グリーン（NM439） ― 静穏と再生の色
地中海の庭園を思わせる、穏やかで抑えられたグリーン。ライトブルーのスモールセコンドにイエローのインデックスが彩りを添え、知性と独立心を象徴する。控えめでありながら印象的なバランスを持つカラーである。
バサルト（NM440） ― 元素の奥行きを秘めて
火山鉱物を想起させるバサルトブラック。マットな質感の中にアンスラサイト、フクシア、イエローの差し色が潜み、深みのある輝きを放つ。スクエアケースの造形を際立たせるモノトーンの美がここにある。
「テトラ オリジンズ」は、色彩を通じて“個性の静けさ”を表現するコレクションである。スクエア型ステンレススチールケースが繊細な色合いを引き立て、スモールセコンドが生き生きと文字盤に躍動感を与える。穏やかなトーンと精緻なディテールが織りなすこの時計は、装う人の内面を静かに映すキャンバスのような存在である。
ノモス グラスヒュッテ「テトラ オリジンズ」 Ref.NM437 41万8000円／手巻き（Cal.DUW4001）、53時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース（シースルーバック）、ヴィーガンベロアストラップ、サファイアクリスタル風防。直径29mm、厚さ6.5mm。5気圧防水。
問い合わせ先：大沢商会 時計部 TEL.03-3527-2682 https://nomos-glashuette.com/ja
CSWCと共に歩んだ10年の絆
キューバの情緒を宿すスイス高級時計ブランド、クエルボ・イ・ソブリノスが、シガースモーキング・ワールド・チャンピオンシップ（CSWC）とのパートナーシップ10周年を祝し、新作「エスプレンディドス・ヴィトラ」を発表した。象徴的な葉巻の形状にちなんで名づけられたこのモデルは、葉巻を愛する人々のライフスタイルと、ブランドが大切にする温かみあるエレガンス、職人技、そしてラテンの伝統を体現した一本である。
2015年に始まったクエルボ・イ・ソブリノスとCSWCのパートナーシップは、葉巻文化と時計製造という二つの世界を“時間の芸術”で結びつけてきた。権威ある国際大会の公式タイムキーパーとして、同ブランドは精密な時計技術を通じて“スローな時間の愉しみ”を共有してきたのである。競技のルールはただひとつ、最後までゆっくりと葉巻を味わった者が勝者となる。そこには、忍耐と集中、そして優雅さが試される独自の美学がある。2025年シーズンも世界50カ国以上で予選が行われ、クロアチア・スプリトで開催されたグランドファイナルの優勝者には、特別に「エスプレンディドス・ヴィトラ」の限定版が授与された。
レクタンギュラーケースに葉巻の香りを思わせるダイアル装飾
「エスプレンディドス・ヴィトラ」は、1930年代のブランド黄金期に誕生したレクタンギュラーケースを再解釈したモデルである。流線型のラインと繊細なプロポーションが手首に心地よく沿い、ヴィンテージの風格と現代的な洗練を兼ね備える。このシルエットには、ラテンの感性が生む柔らかな曲線美が息づいている。
ダイアルには、キューバ伝統のタバコの葉をモチーフにした繊細なエングレービングを施す。6時位置のスモールセコンドには立体的なリング装飾をあしらい、立体的な陰影が文字盤全体に奥行きを与える。さらに「Cuervo y Sobrinos」「1882」「Habana」の文字や、赤いアクセントのブランドエンブレムなど、メゾンの個性を象徴する意匠が随所に配されている。
裏蓋のサファイアクリスタル越しには、スイス・ラ・ジュー・ペレ社製自動巻きキャリバー「G120」が姿を現す。68時間のパワーリザーブを誇り、透かし細工のローターに輝くゴールドトーンのエンブレムが、工芸的な美を添える。
スイスの精密とラテンの情熱が出会う場所
「エスプレンディドス・ヴィトラ」は、キューバの温もりとスイスの精密さという二つの文化が融合した、クエルボ・イ・ソブリノスならではの作品である。単なる記念モデルに留まらず、葉巻をくゆらせる時間と同じように、ゆっくりと味わうべき一本。ラテンの陽気さ、クラシックの優雅さ、そして職人の誇り──そのすべてがこの時計の鼓動に宿っている。
クエルボ・イ・ソブリノス「エスプレンディドス・ヴィトラ」 Ref.2452-1VT 65万円／自動巻き（Cal.ラジューペレG120）、68時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース、アリゲーターストラップ、サファイアクリスタル風防。縦47×横35mm、厚さ10mm。3気圧防水。
問い合わせ先：ムラキ TEL.03-3273-0321 https://cuervoysobrinos-japan.com
“W”の美学が息づく新たなフォルム
スイス高級時計ブランド、レイモンド・ウェイルが「フリーランサー クッション」3モデルが発売された。ブランドの頭文字“W”をモチーフにしたギヨシェダイアルと、ゴールドのクッション型ケースが織りなす造形美が際立つ、ユニークでモダンなコレクションだ。
ケースはスクエアの四辺をなだらかに丸めた、柔らかなフォルムが特徴。角の取れた34×34mmサイズのゴールドケースは、性別を問わず手首に自然に馴染む。仕上げは、ヘアライン仕上げによる繊細な質感と、鏡面仕上げの華やかな光沢を組み合わせ、上品なコントラストを生み出している。中でも「フリーランサー クッション ムーンフェイズ」には、ベゼルに60石のラボグロウン・ダイヤモンドをセット。知的なエレガンスをまとう一本に仕上がっている。
“W”が刻む、ブランドのアイデンティティ
ダイアルの中央には、ブランドの象徴である“W”字型のギヨシェパターンを刻み、職人技の緻密さと独創的なデザインコードを融合。立体的なアプライドインデックスが奥行きを与え、視認性を損なうことなく装飾性を高めている。ムーンフェイズモデルでは、月面の陰影をリアルに再現したディスクが印象的で、クラシカルな複雑機構を現代的に再解釈している。
洗練されたブレスレットとストラップ
ブレスレットには、ゴールドPVD仕上げのステンレススチール製5連ブレスレットと、ベージュのカーフレザーストラップの2タイプを用意。5連ブレスレットは細かいコマ構成により手首にしなやかに沿い、ケース同様の2種類の仕上げが高級感を際立たせる。一方のカーフストラップには“W”字型のステッチが施され、柔らかなレザーの質感とともに温もりある雰囲気を添えている。
透明な裏蓋に映える“W”ローター
ムーブメントには、信頼性の高いセリタ社製ベースの自動巻きキャリバーを搭載。シースルーバックからは、ブランドの頭文字“W”を象ったローターが精緻に動く様子を眺めることができる。クラフツマンシップとモダンデザインの融合──それが新たなフリーランサー クッションが表現するレイモンド・ウェイルらしさである。
レイモンド・ウェイル「フリーランサー クッション」 Ref.2490-P-10051 44万円／自動巻き（Cal.RW4200）、毎時2万8800振動、約41時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース（シースルーバック）＆ブレスレット、サファイアクリスタル風防。直径34mm、厚さ9.3mm。10気圧防水。
問い合わせ先：ジーエムインターナショナル TEL.03-5828-9080 https://raymond-weil.jp ※価格は記事公開時点の税込価格です。
Text／平野翔太