スイスの名門ウオッチブランド【ブレゲ(BREGUET)】が、創業250周年のアニバーサリーイヤーを祝うスペシャルモデルを発表した。近年の研究開発の集大成となる「エクスペリメンタル 1」がリリース。限定生産モデル。
革新的な10Hzトゥールビヨンを採用
トゥールビヨン、“ペルペチュエル”ウオッチ、コンスタント・フォース脱進機、パラシュート耐衝撃機構、ブレゲひげゼンマイなど、ブレゲが時計界に残した功績は数多い。今回、ブランドはその偉大な遺産を受け継ぎながら、既成概念に捉われず、未来への探求を具現化する新コレクション「エクスペリメンタル 1」を発表した。本機のハイライトは、ブレゲ史上初となるマグネティック脱進機とコンスタント・フォース機構を備える10Hz(毎時7万2000振動)トゥールビヨンの搭載だ。ブレゲが2010年以来改良を重ねてきた“磁場を制御する技術”を応用し、脱進機には、磁気面を与えられた2つのガンギ車と、磁気の爪を持つアンクルを採用。コンスタント・フォース脱進機の原理から着想を得たこの構造は、機能の連結が満たされないとトゥールビヨンが停止する、極めて繊細な調整が施されている。ここで重要なのは、この機構によってテンプやガンギ車の回転への伝達インパルスを切断できる点だ。この切断技術こそが、ブレゲが10Hzという驚異的な高振動トゥールビヨンを、本機で実現可能にした最大の要因である。トゥールビヨンのキャリッジの慣性はほとんど影響を受けず、高振動による滑らかな回転は、肉眼では捉えられないほどの連続性をもって時を刻む。10Hzトゥールビヨンは、現代の多くの腕時計よりも遥かに安定し、正確さも特徴。その証として「エクスペリメンタル 1」はブレゲ・シールの認証に加え、24時間で±1という驚異的な歩度精度が保証されている。これは、本機が“科学機器”の領域にある精密計器の証左といえる。
歴史的モデルに敬意を捧ぐ文字盤デザイン
「エクスペリメンタル 1」は直径43.5mmのボリュームあるケースに、温かみと濃密な輝きを放つブレゲゴールドを使用。レギュレータータイプのダイヤルは、オフセンターで分、6時位置で時、そして12時位置のトゥールビヨン上で秒を表示。これは歴史的なコレクションとなる「Ref.3448」や「Ref.1747」からインスピレーションを得た意匠だ。特に「Ref.1747」は、アブラアン-ルイ・ブレゲ生誕250周年の1997年に誕生したレギュレータータイプの現代的な腕時計の先駆けであり、ブランドが本機をその正当な後継者と位置付けていることが分かる。さらに、アブラアム-ルイ・ブレゲが製作した初のマリン・クロノメーター「No.104」が当時、非常に珍しかったアラビア数字を採用していたように、インデックスにアラビア数字を用いた。また、デザイナーは、スポーティな「マリーン」コレクションの歴史を振り返り、特別な構造を持つラグ、初のインターチェンジャブル機能を持つラバーストラップなど、そのデザインコードを取り入れている。さらに視認性を最大限に高めるために、全ての表示に蓄光塗料を塗布。ソリッドゴールドを用いたブリッジの構造もまた、工芸技術の極致を体現しており、表面はサテン仕上げ、あらゆる角には手作業による形状仕上げとミラーポリッシュを施し、モチーフの厳格なフォルムを際立たせている。香箱のゼンマイに初めてブルーを用いた点は、単なる回顧でなく、革新への意志を示すディテールといえるだろう。
この特別なシリーズは、偉大なアブラアム-ルイ・ブレゲの功績を称えると同時に、時計コレクターにとっては、後のブレゲのコレクションで発展するであろう革新的な要素を、限定シリーズという形でいち早く手に入れる稀有な機会を提供する。この「エクスペリメンタル 1」が切り開く未来が、今後のブランドのコレクションにどのような影響を与えるのか、大いに注目が集まる。
ブレゲ「エクスペリメンタル 1」 Ref.E001BH/S9/5ZV 価格要問い合わせ/手巻き(Cal.7250)、毎時7万2000振動、72時間パワーリザーブ。18Kブレゲゴールドケース(シースルーバック)、ラバーストラップ。直径43.5mm、厚さ13.3mm。10気圧防水。限定モデル。
問い合わせ先:ブレゲ ブティック銀座 TEL.03-6254-7211 https://www.breguet.com/jp ※価格は記事公開時点の税込価格です。限定モデルは完売の可能性があります。
Text/三宅裕丈
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