時計ブランドの肖像「IWC」――すべてをさらけ出す高級ウオッチメーカー(中編)

躍進著しいIWCを解き明かす特集第2回目は、創業150周年を機に開設されたシャフハウゼン郊外の新工場を駆使した新たなマニュファクチュール体制と、6つの人気コレクションについて詳しく解説します。

≪特集第1回目≫時計ブランドの肖像「IWC」――この場所でしか作り得ないタイムピース(前編)はコチラ!

キーワード3:MANUFACTURE[マニュファクチュール]

ビジターの受け入れを前提にしたIWCの新工場、「マヌファクトゥール・ツェントルム」。開放的なガラス窓から差し込む自然光が、時計師の手元を照らす。工房のファサードと同じく、内部もブラックとホワイトで統一されている

 

ウオッチナビ編集部が訪れた「マヌファクトゥール・ツェントルム」は、IWCにとって最高の環境をゼロベースから考え抜いた理想の工場です。延べ床面積は1万3500㎡、従業員200名以上が各々の作業にあたっている新拠点は、2018年8月に落成し、フル稼働で生産を行っています。

このビッグプロジェクトの陣頭指揮を執ったのが、現CEOであるクリストフ・グランジェ・ヘア氏です。同氏曰く、「この工場では、一般の見学者も受け入れることを想定しています。素晴らしい時計を作り上げるだけではなく、それが完成するまでのユーザーエクスペリエンスも提供したい。そう考えたのです」と語っています。

その言葉の真意は、工場に入ってすぐに理解できました。ファクトリーツアーの動線が考えられており、来訪者はあらゆる工程が一望できるのです。聞けば、新工場では年間1万人の見学者の受け入れを想定しているといいます。確かに、私たちは通路に引かれたグレーのガイドライン内であれば、自由に内部を見て回れました。

各コーナーには作業内容も明記されており、実際に作られるサンプル品を手にすることも可能でした。ここまですべてをさらけ出している高級ウオッチメーカーは、ほかに思い当たりません。言い換えれば、自分たちが手掛けている製品への絶対的な自信の表れとも言えるでしょう。

地下1階は主にケース製作フロアになっており、自社製品のほぼすべてのケースがここで作られています。またこのフロアには、治具の製作やトレーニングのための十分なスペースも割り当てられていました。

最新鋭の設備が並んだT1(パーツ製作)フロア。受けやギアを切り出す前の金属棒なども、ここにストックされる。IWCのユニークな点は、金属板から受け板をカットするときのデザインに、美しさを求めていること。花が開いたようにかたどられたプレートからも、特有の上質感が漂う

 

1階は自社ムーブメントのパーツの切り出しと、その組み立てを行うフロアになっています。IWCが擁する6つのコレクションに搭載される自社キャリバーのうち、コンプリケーションを除く82系、52系、59系、89系、69系、新型の32系が製造されているそうです。ここまで内部を巡って気になったのが、多くの設備を白と黒で統一している点。これは、調和を望んだヘア氏のこだわりを反映したものだといいます。

新工房では、超微細加工を含む自社ムーブメントのパーツの切り出しから作業が始まる。受けやレバーなどの繊細なパーツまで手作業による仕上げを施し、時計の品格に相応しい美観を作り上げる。これもまた「プローブス スカフージア(シャフハウゼンの優秀な、そして徹底したクラフツマンシップ)」の精神である

 

キーワード4:SIX COLLECTIONS6 コレクション]

現在、IWCには大きく分けて6つのコレクションがあります。これらはすべてフラッグシップであり、いずれも劣らぬエピソードと個性が備わっています。このような陸・海・空のあらゆるフィールドを見据えたラインナップが、コレクター心を刺激し続けている理由です。

 

INGENIEUR

優れた耐磁性を有するエンジニア向けの堅牢時計として、1955年に登場。全方位的な高性能はカーエンジニアリングに着想を得たもので、今もその哲学を受け継いでいます。

インヂュニア・オートマティック Ref.IW357001 55万6200円
1950年代の歴代モデルを彷彿とさせる、シンプルなシルバーダイアルを採用。SSケースは直径40mm、厚さ10.3mmというスリム設計ながら、実用的な12気圧防水を確保。自動巻き

 

DA VINCI

ダ・ヴィンチは、1969年にクオーツ時計として誕生後、1985年発表の永久カレンダーモデルで一世を風靡。2017年のリニューアルを経て、現行の美しいスタイリングとなりました。

ダ・ヴィンチ オートマティック Ref.IW356601 63万7200円
1980年代の歴代モデルに着想を得た3針ウオッチ。直径40.4mm、厚さ10.2mmのケースに、サントーニ社製のアリゲーターストラップでエレガントに仕上げた。自動巻き。SSケース

 

PILOTS WATCH

初代「スペシャル・パイロット・ウォッチ」は、民間航空を対象として1936年に登場。当初から-40~40℃までの気温変動に耐え、高い耐磁性も有する高性能時計でした。

ビッグ・パイロット・ウォッチ Ref.IW501001 157万1400円
46.2mm径ケースに、ダイヤモンド型リューズが個性的な一本。視認性の高い文字盤の3時位置に、7日間パワーリザーブの表示を配す。自社製の自動巻きムーブ、Cal.52110を搭載。SSケース

 

PORTUGIESER

1930年代終盤、ふたりのポルトガル商人から依頼を受けてIWCが製作した、大型の高精度ウオッチがルーツ。創業125周年を迎えた1993年に復活を遂げ、現在に至ります。

ポルトギーゼ・オートマティック Ref.IW500705 143万6400円
独自の「ペラトン自動巻き上げ機構」を備えた、7日間巻きの自社製Cal.52010を搭載。2カウンターを配した文字盤が、クラシックな雰囲気を醸し出す。SSケース。直径42.3mm

 

PORTOFINO

1984年にデビューした比較的新しいコレクション。イタリアのリゾート地に由来する名称の通り、地中海式の優雅なライフスタイルにマッチする時計として好評を博しています。

ポートフィノ・オートマティック Ref.IW356501 54万5400円
真っすぐ伸びたラグにより、直径40㎜のラウンドフォルムが際立つ。複雑にカーブした時分針の形状が、シンプルな造形のアクセントに。自動巻き。SSケース

 

AQUATIMER

1960年代の誕生当時から、200m防水や内回転ベゼルを備えた本格派だったアクアタイマー。現在は、アウターベゼルを使って内側のスケールを操作する構造を採用しています。

アクアタイマー・オートマティック Ref.IW329001 62万6400円
セーフダイブ・システム付き機械式回転式アウター/インナーベゼルと、30気圧防水を備えながら厚みを14.2mmにまで抑えた機能的な一本。自動巻き。SSケース。直径42mm

 

画像ギャラリーはコチラ↓

 

問:IWC TEL.0120-05-1868
https://www.iwc.com/ja/home.html

 

【あなたにオススメ!】IWCの2大定番対決!「ポルトギーゼ・クロノグラフ」×「ポルトギーゼ・オートマティック」

TAG

人気のタグ