東京の風景とともにハイエンドウオッチを愛でる連載「TOKYOタイムピース」。今回は、つねに最高品質を追求し続けるドイツ・ザクセンの至宝「A.ランゲ&ゾーネ」が手がけた、大胆かつ美麗なトゥールビヨンを取り上げる。
文/小暮昌弘 撮影/シバサキフミト スタイリング/石川英治(TRS)
時の間は影をひそめる神秘的なトゥールビヨン
18世紀から19世紀にかけて活躍した自然科学者であり、探検家であったアレキサンダー・フォン・フンボルト(1769-1859年)という偉人がいる。
フンボルトペンギン、フンボルト海流、あるいは月面のフンボルト海まで、多くの地名や植物、動物の名前がこの偉人フンボルトに由来しているという。近代地理学の祖といわれ、著書『コスモス』は、“近代地理学の金字塔”とも称される。彼は、『種の起源』を書いたチャールズ・ダーウィンにも影響を与えた。
そんなフンボルトが愛用したのが、18世紀末のザクセンで精密時計製造技術の基盤を確立した名時計師ヨハン・ハインリッヒ・ザイフェルトが作ったクロノメーターだ。この「リヒャルト・ランゲ・トゥールビヨン“プール・ル・メリット”」の個性的なダイアルデザインは、ザイフェルト作の高精度クロノメーター第93号に由来するもの。極限の精度を実現するための二大複雑機構の「チェーンフュジー(鎖引き機構)」と「ワンミニッツトゥールビヨン」を同時に搭載するという稀有なモデルだ。
フンボルトはかつて、愛用のクロノメーターを数々の科学的な測定にも用いたという。この時計がもし当時存在していたなら、きっと彼の腕元で時を刻んでいたのではないだろうか。
問:A.ランゲ&ゾーネ TEL.03-4461-8080
https://www.alange-soehne.com/ja/
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