創業150年以上の老舗にして、実直な時計作りで世界中で信頼を集める「IWC(インターナショナル・ウォッチ・カンパニー)」。今回、同社随一のロングセラーシリーズである「ポルトギーゼ・クロノグラフ」が久しぶりにモデルチェンジされ、その魅力を高めた。最大の見どころは、自社製造ムーブメントの新搭載である。
高機能な自社ムーブモデルながら手の出しやすいプライスを実現
伝統的なIWCの要素を凝縮したかのような「ポルトギーゼ・クロノグラフ」は、立体的なアプライドインデックス、繊細なリーフ針、縦目のツーカウンターといったクラシカルな意匠が特徴である。ヒット作を数多く揃えるIWCにおいてもトップクラスの人気を誇り、ショップスタッフやジャーナリストといった時計に精通する者たちからも高く評価されている。
その一方で、これまではETA7750をベースとする汎用ムーブメントを採用してきた背景がある。価格面でもスペック面でも鎬を削る、同クラスのクロノグラフが自社ムーブメント化されるなか、あえてムーブメントを変更しなかったのだ。その理由は、ETA7750を独自に改良したキャリバー79350が高いクオリティで安定していることと、サブダイアルの配置などデザインにおいて改良の必要がなかったためと推測される。
しかし「ETA2020問題(今年2020年、スウォッチグループ傘下のムーブメント専門会社であるETA社が、グループ以外への供給を停止するという問題)」もあり、IWCはこの人気クロノグラフのためのムーブメントを自社製造化することに着手。晴れてキャリバー69355が完成したところで、リニューアルを図ったとみられる。
結果、その恩恵は絶大だ。いままで限定仕様ではシースルーバックモデルが存在したが、レギュラーモデルでも自社ムーブメントの美しい仕上げや精緻な駆動が堪能できるように。操作性と耐久性に優れるコラムホイールに作動パーツが変更された。さらに生産コストを抑えることに成功し、ステンレススチールモデルでも80万円台という現実的な価格設定が可能になった。
カラーや素材違いの多彩なバリエーションも引き継がれた
従来機と同様、今回も豊富なラインナップが用意されている。ステンレススチールモデルは4種類の文字盤、18Kレッドゴールドモデルはスレートグレーとシルバーメッキの文字盤が誕生。さらにシャフハウゼンの新工場設立に合わせて、全コレクションの保証期間が2年から8年へと一気に延長されたが、もちろん本作もこれに該当する。
質実剛健なタイムピースであることや手厚いサービス体制への切り替えなど、自社製品に対する絶対的な自信を持つIWCが、シンボリックなポルトギーゼ・クロノグラフをかつてないほどのレベルでブラッシュアップさせた。メジャーブランドのクロノグラフが高額化するなか、ターゲットにしやすい価格帯に抑えつつ、機能主義を貫いて高品質な逸品として完成させたIWCに、敬意を表したい。
問:IWC TEL.0120-05-1868
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