将来はグランドセイコーに搭載か!? 国産時計史上もっとも複雑な腕時計用のコンセプトムーブメントが登場

日本の時計製造を牽引してきた「セイコー(SEIKO)」が、またしても偉業を達成した。といっても、まだ時計としての完成品は日の目を見ておらず、コンセプトムーブメントの段階であるが、この状態であったとしても取り上げたくなるシロモノである。

スイス勢を震撼させる「未完の大器」と評したい複雑ムーブメント

セイコーが発表した「T0(ティー・ゼロ)コンスタントフォース・トゥールビヨン」は、国産初の定力装置付きコンプリケーションであるだけでなく、世界唯一の機構も組み込まれている。ひと際輝く6時側のゴールドサークルは、その内側に2大機構を同軸上にパッケージング。トゥールビヨンキャリッジが1周60秒で連続駆動するのに対し、コンスタントフォースのキャリッジは1秒ずつ運針するデッドビートセコンドとなる。アームのうちの1本を白くすることで精度テストにも対応。メーカーに聞けば、その精度は日差でコンマ数秒という驚異的な数値を叩き出すという。

毎時2万8800振動(毎秒8振動)という、ハイビートに設定された本コンプリケーションムーブメントは音もユニーク。脱進機が打つ振動の合間に、デッドビートセコンドの作動音が入るのだが、これがまさに「16ビート」のドラム・ビートを彷彿とさせるのだ。加えて、パワーリザーブは約72時間。そのうちの最初の50時間がコンスタントフォース装置によって、テンプの振り角を一定に保つのだという。もし製品化するならば、グランドセイコーからとなるだろうが、同ブランドにとっての史上最高額になることは想像に難くない。

「T0 コンスタントフォース・トゥールビヨン」は、まだ見ぬ国産時計のマイルストーンプロダクツとなる存在。その完成型も驚きをもたらすニュースとなるに違いないが、日本が機械式コンプリケーションムーブメントでも世界を追い越したという事実を、素直に誇らしく思う。

 

トルクを一定に保つコンスタントフォース


ゼンマイを動力源とする機械式時計は、完全巻き上げ状態から解けるにつれて徐々に力を弱めていく。同時に歯車や脱進機に伝えられる力も徐々に弱まり、それが精度を不安定にさせる要因となる。コンスタントフォースは、その力のばらつきに伴う衝撃を一定にするための装置として考案され、長らく時計師の研究対象となっているのである。

 

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