間もなく創業230周年を迎えるスイス時計ブランドの名門「ジラール・ペルゴ」が、日本限定18本のスペシャルピースを発表した。「1966 イースト・トゥ・ウェスト」の名が与えられた最新作は、いまから160年前にスイス時計を日本に広めるべくやってきた創業者一族のフランソワ・ペルゴへのトリビュートモデルと言える。デザインに携わったのは「DRxロマネリ」ことダレン・ロマネリで、価格は145万2000円。
クラシックなのに極めて現代的
一見してわかる通り、このモデルは王道の丸型ドレスウオッチがベースだ。文字盤にはオニキスを嵌め、そこへメタライゼーションによってハサミのついたDR xのロゴを浮かび上がらせている。秒針までブラックに統一する一方、時分針とGPロゴにはゴールドカラーを採用。黒と金の2色で構成された3針といってしまうのは簡単だが、デザインを手掛けたダレン・ロマネリの意図はさらに深い。
「ジラール・ぺルゴ 1966 イースト・トゥ・ウェスト」には、「二面性」というテーマがあるという。イースト・トゥ・ウェスト(東から西へ)なるモデル名も、テーマを象徴する要素のひとつ。スイスから日本へと渡ったフランソワ・ペルゴを象徴する言葉は、同時にダレン・ロマネリの拠点であるサンフランシスコとの共同制作という韻も踏んでいる。さらに、ジラール・ペルゴとダレン・ロマネリがともに大の親日家であることから、この日本限定プロジェクトは実現した。
ジラール・ペルゴは、2020年の新作でオニキスダイアルの「1966 インフィニティエディション」(188本限定/MR.PORTERでの限定販売/118万8000円)をすでに発表している。最新作もその流れを受けた印象ながら、ケースにブラックDLCを施すことでより黒の世界を強めている。コレクション名が示す1966は、もちろんその当時のドレスウオッチのデザインを色濃く反映したことを意味するのに対し、モダンなブラックのカラーリングは「二面性」の世界の構築に欠かせない要素だったに違いない。
これをさらに推し進めるのがオニキスダイアルと同化しそうなほどに黒く仕上げられた秒針だ。じっくりと動く時分針に対し、常に動き続けるセンターセコンドはまさしく「静」と「動」を表現したもの。同じくGPロゴのゴールドカラーと、メタライゼーションされたブラックのDRxロゴもまた色とサイズの対比で極めてユニークな表情を作り上げている。色使いに関して言えば、ストラップにさりげなく取り入れられたゴールドステッチも個性的。文字盤を見る角度に現れるワンポイントにより、時計全体に調和をもたらしている。
裏もまたケースと同じくDLC処理を施したサファイアクリスタルバックになっており、そのガラス面にスモーキー加工を施す。安定性はもちろんその美しさにも定評あるジラール・ペルゴのマニュファクチュールムーブメントは、文字盤と同じく大胆なサイズで配置されたハサミ入りのDRxロゴとともに見透すことができる。ブラックのメタル部分にはシリアルナンバーが入り、誰の目にもその希少性が伝わりやすい。
このコラボレーションに際して、ダレン・ロマネリは、こう述べている
“私がジラール・ペルゴと協力しようと思った理由の一つは、フランソワ・ペルゴの伝説にあります。彼は非順応主義者で、トレンドセッターでした。同様に、私もファッションとアートで実験をしたいと思っており、さまざまな協力者と作業したいと思っています。また、私は日本と日本文化への愛着によっても知られています。もしフランソワ・ペルゴが生きていたとしたら、たぶん意気投合したことでしょう。”
フランソワ・ペルゴが初めて来日した1860年は、まだ日本は独自の時間を採用しておりスイス時計を広められる状況ではなかったという。それも4年後の1864年2月6日、第14代将軍徳川家茂(1846~ 66)の時代には日本とスイスで就航通商条約が締結されたのを皮切りに事態が好転し始め、1873年に日本の鉄道が西欧の計時システムを採用すると一気にスイス時計の輸出が伸びたそうだ。フランソワ・ペルゴは、日本を拠点にアジア各国を広く移動したとされるが、いつも日本を第二の故郷に考えていたようで、実は彼のお墓は横浜外国人墓地にある。2020年12月18日に発表された最新作「1966 イースト・トゥ・ウェスト」は、まさしく時空を超えて作り上げられた日本のための特別な一本といえるだろう。
Text/Daisuke Suito(WN)
問い合わせ先:ソーウインド ジャパン TEL.03-5211-1791
https://www.girard-perregaux.com/ja
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