プリンタヘッドの製造技術ルーツは腕時計製造にあった
《取材協力者》
秋田エプソン代表取締役/遠藤正敏さん
秋田エプソンのたどってきた道のりは平坦なものではない。しかし、その歴史があってこそ現在のオリエントスターが作られたといっても過言ではない。遠藤社長に、工場の歩みを聞いた。
(遠藤社長)「秋田エプソンは、1986年にオリエント時計100%出資で設立した『秋田オリエント精密』が前身です。秋田に拠点を置いたのは、人や土地などのコスト面でしょう。一方で、諏訪精工舎をルーツに持つセイコーエプソンのムーブメントを製造してきた経緯があり、完全子会社となったいまもそのDNAを継承しています。私たちは腕時計加工で培ってきた精密加工、金型製造・保全の技術を世界に提供するほか、様々なプリンタヘッドやウェアラブル、医療機器などの広範な機器の製造も行っています」
遠藤社長は、自らもオリエントの熱心なコレクターで、工場に併設されたものづくりミュージアムには私蔵品も展示されている。その時計への愛が、いまのオリエントスターを支えているのだろう。正面玄関を入ってすぐ、見学者を最初に迎え入れる「AECスクエア」には、クオーツ時計の組立キットが用意されていた。子供でも取り組みやすいよう低めの台に置かれたキットは、工場の起源が腕時計であることと、ものづくりの技術を次世代に伝承したいという社長の願いが伝わってくる。
(遠藤社長)「2019年に1拠点体制になり、いまの秋田エプソンにいる多くの人が、時計部品を作ったり、プリンタヘッドを作ったり、水晶振動子を作ったり、様々なものづくりを経験してきました。これからも“最強のものづくり集団”を合言葉に、秋田から最高品質の製品をお届けしていきます」
オリエント/オリエントスターの多くの製品が手の届く価格でも品質が高い理由は、高精度で作られた金型がキーポイントのようだ。大量生産に向くプレス加工が高精度で行え、そこに自社開発マシンによるオートメーションも加われば、機械式でも効率良くムーブメントの製造が可能。その恩恵を、私たちは享受していることに改めて気付かされた取材でもあった。
オリエントスター誕生70周年目の大変革! 秋田エプソンで生み出されるシリコン製ガンギ車使用ムーブメントの機械式フラッグシップ
オリエントスター「スケルトン」Ref.RK-AZ0002S 31万9000円
クラシックコレクションの最上位となる「スケルトン」の新世代機。美しさを増したオープンワークダイアルが最大の魅力だ。秋田エプソンで組み立てられる自社製造の46系キャリバーF8B63には、シリコン製ガンギ車や最新の機構が採用されており、パワーリザーブの大幅な強化に成功した。
スペック:手巻き(自社製Cal.F8B63)、70時間以上パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)、両球面サファイアクリスタル(SARコーティング)、本ワニ皮革ストラップ。直径38.8mm(厚さ10.6mm)。5気圧防水。
問い合わせ先:オリエントお客様相談室 TEL.042-847-3380 https://www.orient-watch.jp/orientstar/
Text/水藤大輔 Photo/岸田克法
- TAG