シン・国産時計【カシオ(CASIO)】編 vol.3 ―― オシアナスの美を高める仕上げ技術 日本が誇る4大ウオッチメーカーの重要人物をルポ

新型コロナウイルスの世界的まん延の関係から、改めて日本には輸入品が数多く出回っていることに気付かされた人もいるだろう。時計市場においても欧州勢を中心に入荷が遅延し、予定されていた発売日が延期となった新作もある。

そこで時計だけではなく注目を集めているのが、“国産”だ。スイスに次ぐ時計大国の日本には、長い歴史を持つ4大メーカーが存在し、国内外問わず高く評価されている。いま再び、“国産”の底力を見つめ直すきっかけとして大手4社のキーパーソンに取材し、その高度な技術や斬新なアイデア、先進的なデザインの魅力あるコレクションについて尋ねた。

第3回は、【カシオ(CASIO)】のエレガントウオッチ、オシアナスの商品企画を統括する佐藤さんへの取材内容をお届けする。

 

【FINISHING(フィニッシング)】

時計に魂を吹き込むフィニッシュワークの妙――独自表現を追求したその先に見えたもの

カシオ発のウオッチブランドでも、F=フィニッシュ(仕上げ)において秀でているのが、オシアナスだ。「エレガンス・アンド・テクノロジー」を掲げた美しい佇まいは、2004年の誕生以来、ビジネスマンや世界を旅するユーザーを筆頭に愛されている。

仕上げといえば、ケースに施されるザラツ研磨が広く知られるところだが、注目したいのは、ブランドのイメージカラーである「オシアナスブルー」をあの手この手で表現する、その加工だ。なかでも、サファイアガラスのベゼルには力を注いでおり、江戸切子職人とのコラボモデルなどは、記憶に新しいだろう。

最新シリーズ「OCW-S6000」にも、そのフィニッシング技術の結晶ともいえるワンパーツのサファイアガラス製ベゼルを装着している。

サファイアガラス特有の輝きを得るために

これまでのオシアナスで、ベゼルに使用されたサファイアガラスは、いずれもチタンの枠にインサートしたもの。OCW-S6000シリーズでは、24面に及ぶ多面のファセットカットを施し、宝石さながらに削り出している。

(佐藤さん)「これまでオシアナスにおけるエレガンスの象徴だったサファイアガラスの美観を、ユーザーにも思う存分楽しんでいただきたいと、“オシアナスブルー×サファイアガラス”という新たな表現にチャレンジしました。ファセットカットについては、周囲が正12角形になるよう、側面の上部に12面、同じ辺を共有する下部に12面で、合計24となる3Dデザインとなっています。加工が難しいために、1面たりとも歪みは許されませんが、協力企業との技術連携で培ってきたサファイアガラスの加工技術で実現可能となりました」

上下に角度がついた24の斜面が光を屈折して、ベゼルの内側から宝石のように輝き出すような設計は、このような企業努力の上にあるものといえる。

 

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