新型コロナウイルスの世界的まん延の関係から、改めて日本には輸入品が数多く出回っていることに気付かされた人もいるだろう。時計市場においても欧州勢を中心に入荷が遅延し、予定されていた発売日が延期となった新作もある。
そこで時計だけではなく注目を集めているのが、“国産”だ。スイスに次ぐ時計大国の日本には、長い歴史を持つ4大メーカーが存在し、国内外問わず高く評価されている。いま再び、“国産”の底力を見つめ直すきっかけとして大手4社のキーパーソンに取材し、その高度な技術や斬新なアイデア、先進的なデザインの魅力あるコレクションについて尋ねた。
第2回は、引き続き【カシオ(CASIO)】の時計開発のリーダー、齊藤さんへの取材内容をお届けする。
【MATERIAL(マテリアル)】
国産時計では随一となるカーボンの使い手としての矜持――独自の積層表現で黒色のカーボンに美を与える
M=マテリアルは、技術や機能に強みを持つカシオの得意とする分野である。その証拠に、ウレタン樹脂ケースから始まったケース素材の進化は、1990年代にはグラスファイバー強化樹脂のインナーケースやチタンケースなども導入。2010年にはバンドにカーボンインサートを挿入した「GW-S5600-1JF」を送り、続く2017年には積層カーボンのベゼルを用いた「GST-B100X-1AJF」をリリースした。そして2019年、遂にカーボンモノコックケースによるカーボンコアガード構造の「GWR-B1000-1A1JF」が登場。カシオは国産時計におけるカーボン使いをリードしてきたと言っていい。
(齊藤さん)「軽量で強靭なカーボン素材は、G-SHOCKに不可欠な素材です。構造上の強度を保つのはもちろんのこと、成形技術の向上によって、あらゆるパーツに使用できるようになっています」
(齊藤さん)「カーボン繊維をどのように樹脂に配合して、基準を満たすだけの強度を保つかを試行錯誤してきました。この強度と成形のバランスが肝となります。G-SHOCKでは、結果として段階的に採用してきました。ひとつは、積層カーボン。もうひとつは、モノコックボディ。そして最後に、マッドマスターに採用されたフォージドカーボンです」
薄肉でも丈夫で自在ゆえ成形はG-SHOCK向き
昨秋登場したばかりの「MTG-B2000YBD-1AJF」は、正面から見ると従来の“MT-G然”とした顔立ちだが、サイドから見ると違った表情を覗かせる個性的な一本だ。ベゼルを支えるサイドフレームに、前述の「積層カーボン」が採用されている。
(齊藤さん)「黒い部分がカーボン樹脂シート、赤い部分がグラスファイバー樹脂シートになります。これら複数枚ずつを交互に235枚を重ねて硬化させます。12時、3時、6時、9時位置以外のサイドを削り出すことで、最上部のカーボンがケースサイドに回り込んでいるように見えるという、非常に凝った作りになっています。これはやはりG-SHOCKは面白いことにトライしているなと、感じてほしい遊び心の表現です。当然、強度は高いですから、サイドバンパーとしての役割も果たしています」
G-SHOCK MT-G「MTG-B2000YBD-1AJF」15万9500円
カーボンコアガード構造を装備したMTG-B2000シリーズに、積層カーボンのベゼルフレームを採用。正面から見ると、ベゼル脇からフレーム最上層部のカーボンライクな編み込み模様がチラリと覗き、外装デザインにおけるアクセントとして貢献している。
スペック:クオーツ(Bluetooth搭載電波ソーラー)。カーボン積層フレーム、ステンレススチールベゼル(ブラックIP加工)、内面反射防止コーティングサファイアガラス風防、レイヤーコンポジットバンド。縦55.1×横51mm(厚さ15.9mm)。重量131g。20気圧防水。
MTG-B2000シリーズ/搭載機能一覧
●トリプルGレジスト(耐衝撃構造・耐遠心重力性能・耐振動構造)
●デュアルコアガード構造
●ねじロック式リューズ
●マルチバンド6(世界6局標準電波受信システム)
●タフソーラー(ソーラー充電システム)
●モバイルリンク機能
●針位置自動補正機能
●針退避機能
●デュアルタイム
●ストップウオッチ
●タイマー
●時刻アラーム
●パワーセービング機能
●日付・曜日表示
●フルオートカレンダー
●ホワイトLEDライト(スーパーイルミネーター、残照機能付き)
●ネオブライト