【シリーズ】次の世代に繋げるためのACTION–あらゆる慈善活動のために時計ブランドができること

ac腕時計は大切にするほど長く愛用できる一方、ひどい扱いをすればすぐに壊れてしまう。それは人間も、地球も同じこと。未来のために行動を起こした時計界の現状を、シリーズ「次の世代に繋げるためのACTION」としてレポートする。

今回は、時計ブランドが行っている労働環境の改善や自然保護、宇宙環境にまで及ぶ、各社の取り組みを紹介する。

オメガは、持続可能な未来を創造するための2つの任務を支援。ClearSpace社によるスペースデブリの除去プロジェクトをサポートし、Privateerとは宇宙にある物体の位置特定を通じて将来の探査の道を拓くことを目指す

 

世界中の人々が笑顔で暮らせる世の中へ

あらゆる時計ブランドは、その規模の大小はあれどSDGsが叫ばれるもっと前から社会貢献活動を積極的に行ってきた。その代表例が、オーデマ ピゲ。同社は、創業者一族のジャスミン・オーデマが設立した財団を通じ、1992年から様々なプロジェクトを通じて世界の森林保護運動を支援している。

ショパールが2014年に発表した初のフェアマインド認証を得たゴールド製モデルのケースバック。9時側に「FAIRMAINED」の刻印が確認できる。こうした出自が追跡でき、正当性のある素材の使用が今後はより強く求められる

 

近年ではショパールが、先の開発目標の採択以前から「サステナブル・ラグジュアリーへの旅」へと出発。2014年には世界で初めてフェアマインド認証を受けた南米産のゴールドウオッチを発表した。以来、ショパールは責任を持って採掘されたゴールドで全製品を作ることを目標に掲げ、2018年7月にこれを達成。現在メゾンの製品には、RJC(責任ある宝飾のための協議会)認定の精製所とのパートナーシップを通じてCoC(加工・流通管理)認証されたゴールド、あるいはスイス・ベター・ゴールド・アソシエーション(SBGA)が認定した供給元からのゴールドという、トレーサビリティが明確な2つのルートのどちらかから調達されている。もちろんゴールド以外にも、あらゆる素材でショパールは第3者機関との連携や厳格な自社基準をもとにした「責任ある調達」を、サプライヤーを含め実践中だ。

©G.Maillotpoint-of-views.ch 2021年10月、カルティエとケリングはサステナブルな業界の実現に向け、「ウオッチ&ジュエリー イニシアティブ 2030」を創設。写真はウオッチズ&ワンダーズで握手を交わす両社代表

 

女性の社会進出もまたSDGsの目標だが、これをいち早く促してきたのがカルティエだ。このメゾンは、1933年に〝ラ パンテール〞と呼ばれたジャンヌ・トゥーサンをクリエイティブ ディレクターに任命してから女性をさまざまな要職に起用してきた。「女性エンパワメント」活動の先進企業として、2006年に創設した「カルティエ ウーマンズ イニシアチブ」では、社会にインパクトを与える女性起業家を支援。ビジネスの発展とリーダーシップスキルの促進に必要な経済的、社会的、人的支援を行い、これまでに62 か国に及ぶ262名の有望な女性起業家をサポートしてきた。また、カルティエ ジャパンとしても女性エンパワメントのコミュニティづくりを目指す「カルティエ ウーマンズ カンファレンス」を4月に開催している。

「改善」のための取り組みでいえば、オメガはスペースデブリ(宇宙ゴミ)除去ミッションに参画すると宣言。宇宙には現在、約4400基の人工衛星が地球の周りを周回している一方、役目を終えた人工衛星やロケットの残骸、爆発や衝突により発生した破片など、不要な人工物体も多く漂っている。その数は地上から追跡されている10㎝以上の物体で約2万個、1㎜以上は1億個を超える(JAXA発表より)。そうした軌道上の宇宙ゴミは秒速7〜8㎞で周回しており、1㎝に満たないサイズでも金属に穴を開けるほどの脅威。今後の宇宙開発に大きな悪影響を与えることは間違いなく、オメガにとっても由々しき問題なのだ。

このように今自分が手にしている腕時計を作るブランドはどのように社会貢献活動を行っているのか。それを調べるだけでも十分。それが、活動の一翼を担うことに繋がるのだから。

 

本記事は『ウオッチナビ 2022 Autumn Vol.87』より抜粋・編集しています。

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