ブランパンがフラッグシップシリーズの「フィフティ ファゾムス」から限定モデルをリリース。この記念モデルはヨーロッパ・中東・アフリカ、アジア太平洋、北米・中南米のそれぞれに特化した3シリーズ各70本が限定製造された。
1953年の誕生から2003年の復活を経て、現在に至る名作
現在、ブランパンのフラッグシップシリーズとなっている「フィフティ ファゾムス」は、1953年に初のモダンダイバーズとして誕生した。開発したのは、当時のブランパンCEOでレクリエーション ダイビングのパイオニアでもあったジャン=ジャック・フィスター。彼自身の経験を活かし、水中探査のニーズに応える仕様が盛り込まれたオリジナルの「フィフティ ファゾムス」は、防水性、堅牢な二重密閉構造のリューズ、自動巻ムーブメント、ダークカラーの文字盤に映える蛍光塗料を施したインデックス、逆回転防止ベゼル、耐磁性など数多くの特徴を有していた。これら本格スペックがプロダイバーに潜水時の計時装置として認められ、世界中のダイビングパイオニアやエリート海兵部隊が愛用。水中での任務に欠かせないダイビング器材として世界に広まったのである。
それから50年の時を超え、ブランパンの新CEOに就任したマーク A. ハイエックがブランドの保管庫で眠っていた「フィフティ ファゾムス」を発見。若い頃から熱心なスキューバダイバーであった彼は、たちまちこのレガシーピースに魅了され再生プロジェクトに着手したという。そうして2003年には、誕生50周年を記念して3シリーズ各50本で構成された限定モデルを発表するに至った。外装の多くはオリジナルを踏襲しながら、防水性能は50ファゾム(約91m)防水から300m防水へと引き上げられ、100時間パワーリザーブを有するキャリバーに変更。特徴的なエポキシ樹脂製のベゼルインレイは、耐傷性ドーム型サファイアインサートに置き換えられるなど、21世紀型のダイバーズウオッチへと正統進化を遂げたのである。
その後、2007年に本格的にコレクションに加わった現代の「フィフティ ファゾムス」は、今や実践仕様のスペックを持つラグジュアリーダイバーズウオッチとして唯一無二の地位を確立。そして誕生から70周年を迎える今年の1月に、これまでの功績に敬意を表した3シリーズ各70本の限定モデルを発表するに至ったわけだ。しかし、この発表はまだアニバーサリーイヤーの第一幕に過ぎない。「フィフティ ファゾムス」は、ダイバーズウオッチの優秀性もさることながら、その性能のおかげで切り拓かれた「海洋探検」の道と、その後の海洋保護への取り組みも語られて然るべきだろう。
発表された3シリーズは直径42mmという特別なサイズ以外に、海洋から回収された漁網を100%再利用した完全にリサイクル可能な糸で作られたNATO YTT+ストラップが付く。このNATOストラップは、最終的にすべてのブランパンのNATOストラップに展開される予定だという。もちろん持続可能性を見据えた取り組みは重要だが、まだまだ「フィフティ ファゾムス」70周年のアニバーサリーイヤーを語るには十分ではない。ブランドが長年にわたって取り組んでいる海洋保全活動「ブランパン オーシャン コミットメント」を筆頭に、これから約1年の間はブランパンの話題に事欠かなそうだ。
TEXT/Daisuke Suito (WATCHNAVI)
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