《開発リーダーにインタビュー》スタイリッシュな8角形G-SHOCK「2100系」初のフルアナログ・クロノグラフは、文字盤からメタル外装までこだわりが満載だった

<取材・撮影協力>
G-SHOCK

メタルボディのG-SHOCKの歴史を紐解くと、1996年の「MR-G」に始まり、2018年に「オリジン」の機能美を継ぐ「GMW-B5000」の誕生によってその存在感が高まった。初代G-SHOCKから数えて35周年にリリースされた後者は記憶に新しく、ブームを巻き起こしたこともあってフルメタルモデルのラインナップは強化され、2022年の「GM-B2100」へと繋がった。そして今回、フルメタルに加えてフルアナログの「GMC-B2100」がデビュー。ベールに包まれた部分も多いこの最新作について、開発者へのインタビューを通して全貌を明らかにする。

[WATCHNAVIの視点]フルアナログとアナログ・デジタル各々の利点

「GMC-B2100」の存在を知った際、筆者がまず疑問に感じたことが「GM-B2100」との棲み分けだった。同じオクタゴンフォルムのフルメタル、かつ針を持つアナログという点で非常に似ている。加えて、多針のクロノグラフという点にも惹かれた。近年では「G-STEEL」や「グラビティマスター」にクロノグラフが存在しているが、インタビューを通じてこれらとは全く異なるアプローチから生み出されたことを知ることができた。核心に迫る前に、新作「GMC-B2100」と現行「GM-B2100」のスペック比較、フルアナログとアナログ・デジタルの違いについて、WATCHNAVI編集部の見解を述べたい。

≪フルメタルG-SHOCK比較 新作「GMC-B2100」&「GM-B2100」≫


<新作・2024年リリース>
GMC-B2100D-1AJF

<現行・2022年リリース>
GM-B2100D-1AJF
縦(12時 – 6時位置) 46.3mm 44.4mm
横(3時 – 9時位置) 51.3mm 49.8mm
厚さ 12.4mm 12.8mm
質量 171g 165g
搭載機能 ●タフソーラー
●Bluetooth
●タフソーラー
●Bluetooth

新作「GMC-B2100」はリューズを搭載しながら横幅を抑えた設計とすることで、「GM-B2100」とほぼ同等のサイズを実現。厚さについては若干薄い。これはビジネスユースを見越しての設計と推し量られる。機能はともに「タフソーラー」と「Bluetooth」を搭載しており、継続的に稼働し、スマホとリンクすることで正確な時刻表示やタイムゾーン変更が容易だ。

表示デザインについては、筆者の感想を踏まえた評価としたい。まず、アナログ全般に共通していえることだが、デジタルよりも時間の流れを感覚的に掴みやすいのが特徴といえる。左右対称の見た目がその理由のひとつ。Apple Watchなどのスマートウオッチの登場によってデジタル表示を好む人も増えたが、フォーマルなシーンにも使いやすいアナログ表示が好まれている。

また、「GMC-B2100」は秒針(最も細い針)をセンターに搭載しており、クロノグラフながらシンプルな3針時計のように機能する。これは機械式クロノグラフと大きく異なる点だ。なおモード切り替えを行ってクロノグラフを作動する際には、機械式と同じようにこの細い針がクロノグラフ秒針として機能する。一方の「GM-B2100」の場合、センターには時分用の長短針のみがセットされており、秒については液晶部に表される。個人的には時間感覚を掴みやすいため秒も針で表されることにメリットを感じるが、好みが別れるポイントといえる。

[開発リーダーに聞く]メタルG-SHOCK「GMC-B2100」はどこが革新的なのか?

サイズを含めた外装は「GM-B2100」とほぼ変わりないことを分かっていただけただろう。コストを抑える前提ならば異なる設計とせずにパーツを共用すればよいが、カシオはその選択をあえてしていない。そこに「GMC-B2100」への強いこだわりが感じられる。そのあたりについて、開発を指揮した泉 潤一さんにずばりうかがってみた。



カシオ計算機 羽村技術センター 時計BU 商品企画部 第一企画室 室長/泉 潤一さん
2009年にカシオ計算機に入社。IT業界に従事していた経験を活かし、グローバル展開のG-SHOCKライン、アクティビティに対応する「G-SQUAD」、メタルを使った「G-STEEL」、そしてファンのニーズに応える革新的な「MY G-SHOCK」といった人気シリーズの企画ディレクションを担当。

 

(泉さん)「現在のG-SHOCKは、大きく4つのコレクションを軸としています。初代G-SHOCKの機能美を継承する5000/5600系、3つ目インジケーターで知られる6900系、アナログ・デジタルコンビでビッグケースの110系、そしてオクタゴンベゼルが特徴の2100系です。これらをG-SHOCKのタイムレスなアイコニックスタイルとして、さらに発展させるプランを実行中です。2100系については2019年デビューのGA-2100から開発に携わっており、とりわけ思い入れが強いですね。2022年にはフルメタル化したGM-B2100を、今回のGMC-B2100ではフルアナログのクロノグラフを実現する流れは技術革新の過程で必然だったといえます」

では、GMC-B2100の開発において最も難題だったことは?

「メタルモデルの重量は樹脂モデルの約3倍となるため、落下時の衝撃も重量に比例し大きくなります。さらに今回は針や歯車のパーツを増やしたフルアナログですし、スタンダードなクロノグラフらしいG-SHOCKを目指したことから繊細なリューズも備えています。ですから、あらゆる角度からの落下を想定したショックレジストのためのアイデアを採用しています」


↑ベゼルは天面に円周状のヘアライン、斜面にミラーの研磨を施す。このようなメタルパーツへの仕上げにより、質感の高い外装が作り出されている。

 

「たとえば、衝撃によってバンドがケースから外れるような事故を防ぐために、ラグを3本足にして屈強なパイプを通したうえにネジで固定する構造を採用しています。これはフルメタルモデル共通の設計で、通常の腕時計と同じ2本足にすると落下時の負荷が分散されずにバンドが外れてしまう可能性があるのです。初号機をフルメタル化したGMW-B5000からのノウハウも活かして、モデルごとの適性に合わせたアレンジを施しています。ちなみにその構造は、ケースバック側から確認いただけます」


↑「GMC-B2100」を分解。3本足のラグやバンドを繋ぐ太いパイプ、防水ガスケットを二重に備えたねじロック式リューズなど、専用設計のパーツを使っている。

 

「表面のベゼルにも落下時は相当なショックがかかります。これに対しては、ベゼルとケースの間に緩衝材としてファインレジンをセットすることで克服しています。計算された形状のこのファインレジンが、衝撃を吸収して逃す効果を備えているのです。同じオクタゴンフォルムの樹脂製GA-2100では、カーボンコアガード構造でケース・モジュール部の耐衝撃性を担保してましたが、今回はフルメタルという素材の特性からGMC-B2100にはメタルとファインレジンの組み合わせが最適だったのです。これも積み重ねてきた経験上、導き出された選択というわけです」



↑オクタゴン形状で、丁寧に仕上げも施されたリューズを右サイドにセット。ねじロック式になっており、リューズを操作することでデュアルタイム操作や時刻操作が行える。

 

2018年にG-SHOCK誕生35周年を記念して開発された「GMW-B5000」は、まさに試行錯誤が重ねられた傑作モデルで、現在もバリエーションを拡大しながらロングヒットを記録している。最新作「GMC-B2100」はそのDNAを受け継ぎながら、新たなチャレンジも随所に垣間見える。中でも際立つのがリューズの存在だ。

「これまでもブランド最高峰のMR-Gやイノベーションを象徴するMT-G、マッシブなG-STEELなどにはリューズ付きのフルアナログモデルがラインナップされてきました。ここで話のスタートに戻りますが、これまでアイコニックな4つの軸(5600系、6900系、110系、2100系)にはフルアナログモデルが存在していませんでした。だからこそ、既存とは一線を画すGMC-B2100の開発にチャレンジしたのです。2100系が持つユニークなオクタゴンフォルムを崩さぬようにリューズの出っ張りを抑え、スクリューロックをかけた状態ならば耐衝撃性も防水性も確保しています。このリューズも8角形と真円を組み合わせたデザインとし、統一感を持たせています」



↑左がブラックの「GMC-B2100D-1AJF」、右がライトブルーの「GMC-B2100AD-2AJF」の文字盤単体。樹脂製をベースにカシオ独自のダイレクト蒸着とクリアコーティングを施し、薄いながら表現力豊かな文字盤が完成した。透過性が高く、十分にタフソーラーを駆動させられる。

 

また、文字盤カラーも注目だ。定番のブラックに加え、トレンド感のあるライトブルーのバージョンも揃える。雰囲気が大きく異なる2つの文字盤はどう生まれたのだろうか?

「こちらについてもG-SHOCKのチャレンジする姿勢から、文字盤の新たなカラーとして淡いライトブルーを作り出しました。G-SHOCKはいわゆるロングライフを実現するソーラーパワーや長寿命バッテリーの導入を進めており、GMC-B2100にはタフソーラーが必須のスペックだったため、このライトブルーの色調を合わせることも難点でした。透過性のある薄い文字盤の下層にソーラーセルをセットするわけですが、文字盤を載せた時に美しく見え、視認性を十分に保つことが必要とされました。パーツを重ねた状態を見ていただければ、その具合を分かっていただけることでしょう。このような緻密な設計をいくつも重ね、GMC-B2100は完成したのです」



↑スタイリッシュなオクタゴンフォルムを創造するべく、あえてリューズガードを設けずにリューズ自体に耐衝撃性を持たせた。2100系に新風を吹き込むクロノグラフだ。

 

今回のインタビューを通し、数々のG-SHOCKの開発に携わってきた泉さんにとって2100系が特別なシリーズであることが伝わってきた。

「2019年の夏にGA-2100をリリースした当初、大々的な広告を打ったPRはほぼなく、フォーカスされていませんでした。その後、徐々に国内外でSNSを使った発信が増え、メディアにも登場し、お陰様でG-SHOCKのスタイリッシュモデルとして定着するまでに至りました。まさにユーザーの方に育ててもらったG-SHOCKといえます。その延長にあるのが、GM-B2100と、およそ2年の開発期間を経て完成した新作GMC-B2100です。いずれも末長くラインナップされ、多くの方々に慕われるG-SHOCKになることを心から願っています」

 


G-SHOCK「GMC-B2100D-1AJF」 10万4500円/クオーツ。ステンレススチールケース&バンド、無機ガラス風防。縦51.3×横46.3mm、厚さ12.4mm。質量171g。20気圧防水。

 


G-SHOCK「GMC-B2100AD-2AJF」 10万7800円/クオーツ。ステンレススチールケース&バンド、無機ガラス風防。縦51.3×横46.3mm、厚さ12.4mm。質量171g。20気圧防水。

 

モデルの詳細はコチラ>>>

GMC-B2100シリーズ/搭載機能一覧
●耐衝撃構造(ショックレジスト)
●タフソーラー(ソーラー充電システム)
●モバイルリンク機能(対応携帯電話とのBluetooth通信による機能連動:自動時刻修正、簡単時計設定、ワールドタイム約300都市、タイム&プレイス、携帯電話探索)
●アプリ「CASIO WATCHES」対応
●ネオブライト
●デュアルタイム(ホームタイムとの時刻入替機能付き)
●ストップウオッチ(1秒、24時間計、スプリット付き)
●タイマー(セット単位:1分、最大セット:24時間、1秒単位で計測)
●時刻アラーム
●LEDライト(スーパーイルミネーター、残照機能付き、ホワイト色)
●フルオートカレンダー(日付・曜日表示)
●パワーセービング機能(暗所では一定時間が経過すると運針を停止して節電)
●バッテリーインジケーター表示
●ねじロック式リューズ

 

問い合わせ先:カシオ計算機 お客様相談室 TEL.0120-088925 https://gshock.casio.com/jp/ ※価格は記事公開時点の税込価格です。

Text/山口祐也(WN編集部) Photo/吉江正倫、鈴木謙介(インタビュー)

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