<取材協力>
ブライトリング(BREITLING)
スイスが世界に誇る名門時計ブランド【ブライトリング(BREITLING)】は今年、創業140周年を迎えた。この記念すべき機会に、ブライトリングをあらゆる視点から掘り下げ、その魅力をひも解く連載企画・第5話は、「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ」に合わせて3日間にわたり行った現地取材の模様をダイジェスト的にお送りする。
【スイス現地取材】WATCHNAVI編集長・水藤によるレポート
<1日目>“THEN & NOW” ポップアップミュージアム in チューリッヒで140年の歴史に触れた! コチラ>>>
<2日目>“B”列車で行こう!目的地のジュネーブでブランド初のコンプリケーションとご対面! コチラ>>>
<3日目>ブライトリングの時計製造拠点「クロノメトリー」でキャリバーB19搭載コンプリケーションと再会! コチラ>>>
<1日目>140年の歴史に触れた「THEN & NOW」ポップアップミュージアム in チューリッヒ
ブライトリングが築いた140年の歴史を知る旅は、チューリッヒから始まった。複数のブランドが集い、その年の下期にリリースするニューモデルの発表の場として2020年から開催されている「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ」は、その名の通りジュネーブの市内にて行われている。このイベントに合わせてチューリッヒには期間限定でブライトリングのポップアップミュージアムがオープン。まずはこれを取材した。同ミュージアムでは「THEN & NOW」をテーマに、ブライトリングの歴史と最新作を展示。ミュージアムピースは地下1階に、ニューモデルは地上1・2階にAIR、LAND、SEAそれぞれの世界を演出したうえでディスプレイされていた。
プレスプレビューには、ブライトリングのCEOジョージ・カーン氏やヘリテージ部門の責任者ジャンフランコ・ジェンティル氏、そして創業一族の3代目ウィリー・ブライトリングの息子グレゴリー・ブライトリング氏が登壇し、ブランドの輝かしいヒストリーを語るとともに、興味深いエピソードなども紹介してくれた。なお同ミュージアムには貴重なアーカイブピースが展示されており、訪れる人々がブライトリングの豊かな歴史や知られざる物語を知るきっかけとなったことだろう。とりわけ注目を浴びていたのが、最新のマニュファクチュールムーブメントとなる「パーペチュアルカレンダー クロノグラフ キャリバーB19」を搭載した3部作の展示だった。
今回の「THEN & NOW」ポップアップミュージアム in チューリッヒは、ブライトリングの栄光の歴史を広く知ってもらうことを目的とするもので、その魅力に触れられる重要かつ貴重なイベントとなったに違いない。今後は世界の有名都市にて同様の展示会が催される予定とのことで、時計好きにとって楽しみのひとつとなりそうだ。
<2日目>“B”列車で一路ジュネーブへ。ブライトリング初のコンプリケーションは超弩級だった
ブライトリング現地取材の2日目は、チューリッヒ駅から「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ」が開催されているジュネーブへ向かうため、“B”を掲げている特別特別列車に乗り込むことから始まった。ブライトリングから提供されたチケットには「9:43発」と記され、駅の電光掲示板には「BREITLING – 140 YEARS OF FIRST to Genève. Enjoy your journey」の表示。まさにこれから始まる旅に気分が盛り上がった。10番ホームでブライトリングのコスチュームを着た女性にチケットを見せ、乗車。ブライトリングのための列車は、約3時間をかけてジュネーブのコルナヴァン駅に到着した。
到着後、新作発表のプレスカンファレンスまで時間に余裕があったため、ジュネーブのブライトリング ブティックを訪問することに。その途中、ジュネーブのシンボルであるレマン湖の大噴水を望むモンブラン橋に、市の紋章と「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ」の旗がはためいているのを見た。この近くに立地するブティックではヘリテージピースの展示会「THE TIME CAPSULE」が見学でき、昼下がりの時間帯にも関わらずその盛況ぶりに感嘆。併設されたブライトリング キッチンも新鮮だった。その後、ニューモデル発表の会場へと向かった。
記者会見では、前日に引き続きの登場となるジョージ・カーンCEOが140周年を迎えたブライトリングの最新トピックスを紹介。新たにオープンした「THEN & NOW ミュージアム」に加え、「パーペチュアルカレンダー クロノグラフ キャリバーB19」搭載の3部作を披露した後、同社お馴染みの動画プレゼンテーション「ブライトリング・サミット・ウェブキャスト」を上映。革新的なこのマニュファクチュールムーブメントを搭載する「プレミエ」「ナビタイマー」「クロノマット」は、いずれも18Kレッドゴールドケースの贅沢な仕様で、各140本のみの限定生産。ボックスもこだわりが込められた特製のもので、創業140周年記念のブランドブック『140 YEARS IN 140 STORIES』の特別表紙版が付属している。この3部作は、オリジナルモデルの誕生年の順で詳細が明かされた。
「プレミエ B19 ダトラ 42 140周年アニバーサリー」 Ref.RB19401A1B1P1 777万円
創業一族の3代目、ウィリー・ブライトリングの「コックピットから社交場へ」という発案から1943年に登場したプレミエの現行世代にキャリバーB19を搭載した「プレミエ B19 ダトラ 42 140周年アニバーサリー」は、艶やかなブラックラッカーのダイアルが目を惹く。外周にはクロノグラフ秒目盛りの入ったレッドゴールドのリングをセット。さらにその外縁を一段高い位置で取り囲むのは、タキメータースケールが記されたマットブラックのリングだ。コレクションの特徴であるアラビア数字インデックスのほか、顔を描いたムーンフェイズディスクの月、ボックス型サファイアガラスとプレーンベゼルの組み合わせなど、現代ブライトリングらしいモダンレトロな雰囲気に仕上がっている。
スペック:自動巻き(キャリバーB19)、毎時2万8800振動、約96時間パワーリザーブ。18Kレッドゴールドケース(シースルーバック)、アリゲーターストラップ。直径42mm、厚さ15.6mm。100m防水。世界限定140本。
「ナビタイマー B19 クロノグラフ 43 パーペチュアルカレンダー 140周年アニバーサリー」 Ref.RB19101A1H1P1 777万円
サンレイフィニッシュが施された18Kレッドゴールドのダイアルにブラックの回転計算尺を組み合わせた一本。ナビタイマーは、航空機オーナー協会(AOPA)向けに1952年に開発された時計でありながら、そのスタイリッシュなデザインにより著名なアスリートやミュージシャンも愛用。1962年には宇宙を飛んだ初のスイス製クロノグラフとしても知られる、永久不変のアビエーションウオッチである。その歴史的な意匠を残しながら、永久カレンダーとムーンフェイズのディスプレイを立体的に加えることで高級感がありながら計器としての魅力も増した印象を受けた。計算尺を含む様々な情報が整然と並んだ文字盤からは、デザイナーの優れた手腕がうかがえる。
スペック:自動巻き(キャリバーB19)、毎時2万8800振動、約96時間パワーリザーブ。18Kレッドゴールドケース(シースルーバック)、アリゲーターストラップ。直径43mm、厚さ15.6mm。3気圧防水。世界限定140本。
「スーパークロノマット B19 44 パーペチュアルカレンダー 140周年アニバーサリー」 Ref.RB19301A1G1S1 777万円
1983年の誕生以来、ブライトリングの歩んできた時代が色濃く反映されてきた「クロノマット」のキャリバーB19搭載機は、直径44mmの大型モデルをベースにした「スーパークロノマット B19 44 パーペチュアルカレンダー 140周年アニバーサリー」。このタイムピースで特筆すべきは、なんといってもスケルトンダイアルだ。文字盤側から複雑な永久カレンダーのメカニズムが垣間見られる特別デザインは、時計ファンなら心が踊らずにはいられないだろう。また、このブランド初となる仕様を採用してもなおひと目で「クロノマット」とわかる存在感は、セラミックベゼルの15分おきに配置された突起型ライダータブや「オニオン」型リューズ、伝統的なルーローブレスレットをモチーフにしたラバーストラップなどのディテールが、いかに強い個性を持って設計されているかを再認識することにもなった。
スペック:自動巻き(キャリバーB19)、毎時2万8800振動、約96時間パワーリザーブ。18Kレッドゴールドケース(シースルーバック)、ラバーストラップ。直径44mm、厚さ15.3mm。100m防水。世界限定140本。
今回の3部作に共通して搭載されている「キャリバーB19」は、18Kレッドゴールド製の自動巻き上げローターが特徴となっている。このローターには、ブライトリングが現代クロノグラフの基盤を築いたモンブリランのファクトリーを職人が緻密なエングレービングで描いているのだ。本機のベースムーブメントは、2009年に開発されたブライトリング自社開発・製造の「キャリバー01」で、石数を47石から39石へと技術的に減らすことに成功し、パワーリザーブを従来の約70時間から約96時間まで伸ばしている。12時間計は持たないが、6時位置に月と閏年を同軸表示、12時位置にムーンフェイズを追加。そして何といっても、月ごとの日数を自動判別して約1世紀にわたり正確なカレンダー表示を行う永久カレンダー機構を備えている。これだけの機能を詰め込みながらの合理的な設計に、ただただ感服するばかりだ。
<3日目>ブライトリングの製造拠点「クロノメトリー」で自社ムーブメントの深部に迫る
明くる取材最終日はバスに乗り込み、ラ・ショー・ド・フォンにある「クロノメトリー」へと向かった。この製造拠点で出迎えてくれたのは、ファクトリーツアーの案内役で前日の「ブライトリング・サミット・ウェブキャスト」ムービーにも出演していたファブリス氏。エントランスに掲げられている印象的な航空写真がすべて日本の航空写真家、徳永克彦氏が撮影したものだという説明を彼から受けた後、応接室へと通された。ここで、インハウスウオッチの製造拠点にふさわしい場所として時計作りの伝統が根付くラ・ショー・ド・フォンを選んだという理由や、現在はクロノメトリーに300名程度、グレンヘンにある本社には220名ほどの従業員が働いていること、パーツを製造する建物とそれを組み立てる建物で構成されていることなどの説明を受けた。そしていよいよ、ムーブメントの製造の工程を巡るツアーが始まったのだ。
↑「クロノメトリー」のエントランス。ブライトリングのルーツを物語る航空写真が出迎える。
2009年に増築されたパーツを製造する建物では、金属加工、パーツ洗浄、クオリティチェックの各部門を見学(詳細は、「ブライトリングの時計製造拠点「クロノメトリー」でキャリバーB19搭載コンプリケーションと感動の再会!【ブライトリング取材レポート】<3日目>で紹介)。いずれも、専門の技術者と最新鋭のマシンが揃えられ、環境に負荷をかけない取り組みがなされていた。後半では、マニュファクチュールムーブメント「キャリバー01」の組み立てを行う建物へ。マシンを導入したベルトコンベア式のラインが構成されていた一方で、職人による手作業が必要なパートも多く感じられた。次に精度チェックの部門へ。6姿勢での精度チェックを行い、COSC認定を受ける規準を満たす精度を確認している様子をうかがった。自らに課した難題「100%クロノメーター」の実現は、もはや製造ラインの一部に組み込むほどブライトリングにとって当たり前となっているわけだ。この工程はきっと他社にとって驚異的に思えることだろう。その後、針とダイアルを取り付け、ケーシングを行ってやっと時計の姿に。さらに3日間にわたる自社検品後に、ストラップの取り付けなどが行われ、晴れて世界各地へと出荷されていく。
↑COSC認定クロノメーターの規準精度を満たさないムーブメントは再調整となる。
ファクトリーツアーをひと通り終え、改めて感じたことは、精度や耐久性、多機能化など、機械式時計は基本原理をそのままに進化を続けていること。一方、その時計作りの伝統を未来へ繋げるには、製造体制においても時代にあった体制を敷く必要を強く認識した。そして今回訪れたクロノメトリーでは、不良品があっても廃棄せず、リサイクルを徹底しており、パーツの切削などにオイルではなく水を使うなど、万全の設備を整えていたことに驚いた。ブライトリングは企業としての社会的取り組みにおいても、ビーチクリーンや植樹の活動、アップサイクルされたウォッチボックスの開発、ラボグロウンダイヤモンドの使用といった、サステナブルな時計製造の対象は広範囲に及んでいるのだ。
↑「クロノメトリー」内には創業者らの胸像なども設置され、歴史と伝統を称えている。
1884年にレオン・ブライトリングが創業し、3代にわたる家族経営を経てシュナイダー家へ、そして現在のジョージ・カーンCEOの時代へと歴史を紡いできたブライトリング。単独ブランドとして創業140周年を迎えたことは、稀有な例といえる。3日間の取材を通し、今なお続く旺盛な開発意欲とそれを実現するスピード感が、同社の大きな魅力となっていることを再確認する経験となった。年間通じて話題を振り撒いてきたブライトリングのアニバーサリーイヤーキャンペーンだが、この年末のサプライズにも期待し、その製造拠点から帰路に着くのだった。
問い合わせ先:ブライトリング・ジャパン TEL.0120-105-707 https://www.breitling.com/jp-ja/ ※価格は記事公開時点の税込価格です。限定モデルは完売の可能性があります。
Text/WATCHNAVI編集部
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