世界最古級ブランド【ブランパン】を誰よりも深く知る人物に聞いた最新フィフティ ファゾムス直径42mmの革新性

創業1735年という、現存する時計ブランドで世界最古級の歴史を持つブランパンのことを研究し続ける人物がいる。彼の名前はジェフリー S.キングストン。現在、ブランパンが1年に一度発行しているブランドマガジン「ル・ブラッシュ便り」の主筆を務める彼に、改めてダイバーズウオッチを定義した名作「フィフティ ファゾムス」の歴史と最新作について話を聞いた。

「フィフティ ファゾムス」こそが真のダイバーズウオッチとなった日

今回の取材はブランパン ブティック 銀座にて、ごく限られた招待客と一緒にセミナーを受ける形で実施された。ジェフリー氏は24年間、ブランパンとともに仕事をしているそうだ。最初はブランパンを愛するファンであり、それが高じてブランドの研究を行うようになったという。セミナーの主題はフラッグシップシリーズの「フィフティ ファゾムス」である。

「ブランパンは1950年代当時の共同経営者だったジャン-ジャック・フィスターにより開発されました。熱心なダイバーでもあった彼は、南仏でのダイビング中にボンベの空気残量を読み誤って生命の危機を体験したのです。そこから潜水中に経過時間が把握できるダイバーズウオッチの必要性を痛感し、自身のブランドでダイバーズウオッチを開発することを決めたのです」(ジェフリー氏)

当時、防水仕様のスポーツウオッチは多くなく、映画でスーツを纏った俳優が着用するようなドレスウオッチが主流だったという。そうした時代の流れに反し、ブランパンは本格的なスポーツウオッチの開発に乗り出したわけだ。結果、約100mの深さに耐える防水性能と、耐磁性能、高精度な自動巻きムーブメント、そして経過時間が計測できる逆回転防止ベゼルなど、現在の一般的なダイバーズウオッチに求められる性能のすべてを揃えた「フィフティ ファゾムス」が、1953年に完成したのである。

セミナーではその後、フィフティ ファゾムスが実力を認められ、各国軍が相次いで採用した歴史のほか、ときに競合他社の製品とともにテストされることもあったが、厳格なテストのすべてに合格したのはフィフティ ファゾムスだけだったということなどが語られた。

今年から加わった直径42.3mmの新しいサイズについて

「フィフティ ファゾムスがユニークなのは、誕生当時にダイビング機器の製造と販売を行っていたアクアラングなどのダイビングショップでも販売されていた点。つまり、ダイビング用の機材の一つとして扱われていたのです。その後、クオーツ時計の台頭などの要因によりフィフティ ファゾムスの製造は一時中断しますがマーク A. ハイエック社長兼CEOにより2003年に限定品として復活を遂げ、2007年にはレギュラーコレクションとなりました。以来、直径45mmを基本サイズとしてきたところへ、今年から直径42mmのモデルが加わることになったのです。このサイズを待っていた方は多かったのではないでしょうか。かくいう私も、このサイズを待ち望んでいました(笑)」

最新サイズはチタンと18Kゴールドの素材バリエーションを用意。ステンレススチールについては現時点でオンリーウオッチ用に製造されたのみとなっている。ちなみに、ブランパンがこのモデルに用いるチタンは「グレード23」と呼ばれる最高級品。ジェフリー氏が「ル・ブラッシュ便り」の中でも特性に言及しているが、よりチタンの純度を高めた素材でさらなる軽さと強さを兼ね備えた素材である。

「この直径42mmのフィフティ ファゾムス“5010”は、ひと目で好きになりました。ぜひみなさんも手に取って試してみてください」。ということで、最後は試着タイムとなってセミナーは終了。招待客とジェフリー氏は、互いにブランパンへの愛を共有しながら親交を深めていた。

取材後記

今回、ジェフリー氏は2024年版「ル・ブラッシュ便り」の取材を主な目的として来日したとのこと(次号のコンテンツにはまだ筆者が知らされていない最新作の内容も含まれているそうだが、さすがに教えてもらえなかった)。

「ル・ブラッシュ便り」では、このように時計作りの裏側だけでなく、ブランパンオーシャンコミットメントの取り組みやアール・ド・ヴィーヴル(=暮らしの芸術)といった様々なテーマが扱われており、ブランパンのハイウオッチメイキングを通じてあらゆる世界を知ることができる。そうした多くの記事を現在執筆しているのが、ジェフリー氏なのだ。

彼はアメリカ出身であるものの、30年ほど前、弁護士だった当時に欧州へ渡航する案件が続いた際にブランパンと出逢い、魅せられ、そこから熱心なファンになっていったのだという。昨年のフィフティ ファゾムス70周年イベントがフランスのカンヌで開かれた際には、最大の目玉となる特別限定モデル“Act 3”を披露するべくマーク A. ハイエック氏とともに登壇するなど、いまや研究家としてブランドにとって欠かせない人物となっている。

2023年9月にカンヌで行われたフィフティ ファゾムス“Act 3”ローンチイベントに登壇する社長兼CEOのマーク A. ハイエック氏(左)とジェフリー S.キングストン氏(右)

そんなジェフリー氏さえも待ち望んだ直径42mmのフィフティ ファゾムス“5010”モデルは、筆者もぜひ多くの人に試していただきたいと思う一本。現代的なスタイルを獲得した真のダイバーズウオッチの実力を体験していただきたい。

ジェフリー氏と筆者(左)。ブランパン ブティック 銀座にて

 

製品に関する問い合わせ先:ブランパン ブティック 銀座 TEL.03-6254-7233 https://www.blancpain.com/ja ※価格は記事公開時点の税込価格です。

TEXT/Daisuke Suito (WATCHNAVI)

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