<取材・撮影協力>
オリス(ORIS)
スイスの時計ブランド【オリス(ORIS)】は今年、創業120周年を迎えた。一貫して伝統的な機械式時計の製造にこだわり、品質、デザイン、価格においてもカスタマーを満足させるコレクションを数多く輩出している。連綿と紡がれたこの歴史により、オリスは現在、世界中で支持を集めるのだ。本稿では、常に未来志向で技術革新を繰り返してきた同社の軌跡を、4つの時代に分けてダイジェスト的に振り返る。
〈草創期:1904年~1940年代〉時代のニーズを捉えた巧みな戦略で創業から短期間で300人超の企業に
↑1929年頃のオリス工場。現在も本社兼工場として使われている。
チューリッヒの西、ドイツ国境に近いヘルシュタインという小さな村にオリスは1904年創業した。同地は交通や人的資源の環境も整っており、時間の重要性が認識された時代背景もあって幅広いジャンルの時計を製作。一時は従業員数が300名を超えたと記録されており、傑作「ビッグクラウン」が生まれたのもこの時代だ。ピンクの外壁が印象的な工場は1929年に建てられたもので、現在も本社として利用されている。
↑ポール・カッティン(左)とジョージ・クリスチャン(右)がヘルシュタインの閉鎖されていた時計工場を買い取り、1904年6月1日にオリスを登録。その社名は、近くを流れる小川に由来している。
1917年 ビッグクラウンのオリジナルを開発
↑1911年、オリス初の航空向け懐中時計を発表。その6年後には、初のパイロットウオッチ「ビッグクラウン」を完成させた。特徴的な大型リューズやコブラ針、アラビア数字インデックスは現行モデルへと引き継がれている。1938年にはポインターデイト機能を搭載したモデルも登場する。
〈黄金期:1950年代~1960年代〉高品位かつ挑戦的な実用時計の数々が世界の市場を席巻!!
1952年にオリス初となる自動巻きウオッチに搭載する「キャリバー601」を、1965年には後世に語り継がれる傑作「ダイバーズ65」を、そして1968年にはクロノメーター精度の「キャリバー652」を開発するなど、高度な技術によって年産120万個の体制を整える。また同時期、時計産業の保護と競争規制のために制定されたスイス時計法(1934年制定)が逆に発展を妨げる悪法と化していたため、オリスが船頭となって同法撤廃のため尽力。結果、スイス時計界に大いに寄与することとなった。
1965年 ダイバーズ65を発表
↑ダイビングなど海のレジャーが普及してきた背景から、オリス初の潜水時計「ダイバーズ65」を世に送り出す。タウンユースにも映えるスマートなデザインに、100m防水やミニッツスケール付き回転ベゼルを備え、高く評価された。2015年にレギュラーコレクションとして復刻。
〈再生・発展期:1970年代~2000年代〉クォーツショックの逆境を乗り越えて再び脚光を浴びる
1969年のクオーツ時計の登場はスイス時計全般を苦境に追い込み、オリスは一時、ASUAG(現在のスウォッチグループ)の傘下に入った。だが1982年、現会長ウルリッヒ・W・ヘルツォークらが経営権を取得。再び独立ブランドとして歩み始め、クオーツ全盛の時代に機械式中心を打ち出して成功を収める。1991年のムーンフェイズ付きの「キャリバー571」や1997年のワールドタイマーは、機械式に強いこだわりを持つオリスならではの発明として歴史に名を遺す。
2000年代からは先進メカが話題に
↑1997年発表のワールドタイマーは、ケース側面に配置された2つのボタンでメインのローカルタイムを調整できる。利便性の高いこの機能は、他社に先駆けてオリスが実用化した。
〈未来に向けて:2010年代〜〉最新ムーブメント「キャリバー400」も内製化を達成
↑オリスのマニュファクチュールムーブメント「キャリバー400」。
オリスには200個を超える自社ムーブメントを手掛けた歴史があり、近年はその技術的側面を蘇らせることに注力している。それが最強スペックの「キャリバー400」誕生に繋がった。とくにスマホやイヤホンなど磁気を発する電子機器が身近な現代において、耐磁性に注目が集まっている。本機はガンギ車とアンクルをシリコン製とし、他の30以上の部品にも非磁性素材を使って2250ガウス耐磁を実現しているのだ。
2014年 110周年を祝う久々の自社キャリバーを発表
↑長らく自社ムーブメントを製造していなかったオリスだが、10年の開発期間を経て手巻きの「キャリバー110」を完成させた。10日間のロングパワーリザーブや特許取得のノンリニアパワーリザーブインジケーターなど、画期的な機能を備えている。なお本機をベースにスケルトン化したのが「キャリバー115」だ。
2019年 新世代メカとなる「キャリバー400」完成
↑手巻きに続き、自動巻きの自社ムーブメント「キャリバー400」を発表。巻き上げ機構にスライドベアリングを使っており、低摩擦ながら優れた巻き上げ効率を実現し、故障リスクを低減している。日差-3秒~+5秒の精度、5日間パワーリザーブ、高耐磁性、10年保証といった業界最高峰のスペックが魅力だ。毎時2万8800振動。
躍進のオリスを牽引するリーダーにインタビュー
オリス共同経営責任者/ロルフ・スチューダー
1972年、スイス・ルツェルン生まれ。フリブール大学とフランスのモンペリエ大学で法学を学び、弁護士資格を取得。2006年にオリスへ入社し、長年に渡りウルリッヒ・W・ヘルツォーク会長を支えている。
今後もモアチャレンジの精神で愛される時計を目指します
「ヘルツォーク会長が話していましたが、クオーツが主流だった1980年代に日本を訪れた際、多くの若者がオリスに興味を示してくれたことに感銘を受け、これが機械式を継続するきっかけのひとつとなったそうです。我々はプロダクトこそがブランドイメージに直結すると考えており、クラフトマンシップに関心が高い日本の方々に評価してもらえることはまさに光栄です。また時計界では価格の高騰が続いており、手の届く存在であり続けることも我々の使命です。一方でコロナ禍を経て人々の価値観は変わり、よりクオリティが求められるようになりました。その中でモアチャレンジの末に生み出した自社製造のキャリバー400は、オリスのブランド価値を高めることとなり、期待の声が大きい続編ムーブメントの開発にも繋がっています。今後の展開も期待してください!(笑)
2024年、様々なご支援があってオリスは120周年を迎えました。この記念すべき年に誕生した新型アクイスデイトは、リニューアルされたオリス銀座ブティックや全国にある正規店でぜひご体感いただきたいです。完成の域にある定番のモデルチェンジも、まさに挑戦でした。本物を見抜く力を持っておられる日本の方々がどのように評価されるか、とても気になります」
↑オリス「アクイスデイト 43.5mm」 Ref.01 733 7789 4135-07 8 23 04PEB 40万7000円
スタイリッシュなデザインからタウンユースも可能なダイバーズウオッチ「アクイスデイト」がリニューアル。ケースやブレスレットの再設計によってフィット感がさらに高まり、パワーリザーブが41時間へと強化されたスイス製ムーブメントを搭載する。サイズバリエーションは43.5mm・41.5mm・36.5mmの3型で、ミニッツスケール付きセラミックベゼルを共通で備える。
スペック:自動巻き(Cal.733-1)、毎時2万8800振動、41時間パワーリザーブ。ステンレススチール(シースルーバック)&ブレスレット。直径43.5mm。30気圧防水。
日本における新生オリスの象徴店「オリス銀座ブティック」
オリス銀座ブティックは、2019年6月に日本初のオリスブティックとしてオープン。希少なブティック限定モデルを含めてコレクションをフルラインナップしており、今夏初のリニューアルを実施した。
TEL.03-6228-6866
住所:東京都中央区銀座4-3-14 和光オリスビル
営業時間:11:00~19:00
定休日:不定休
※価格は記事公開時点の税込価格です。
Text/山口祐也(WATCHNAVI)
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