<取材協力>
IWCシャフハウゼン(IWC SCHAFFHAUSEN)
1868年、時計技師のフロレンタイン・アリオスト・ジョーンズがスイスの伝統的な時計製造技術とアメリカの工業技術の融合した他に類を見ないウオッチブランドとして、【IWCシャフハウゼン(IWC SCHAFFHAUSEN)】を創業した。以来、革新的なコレクションを輩出し、エンジニアリングの視点からも高く評価されてきた。そのような歴史を持つ名門の2025年最新作を、同社のキーマン2名の証言を交えながら検証する。
↑2025 New Model「インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41」
「形態」と「機能」ともにさらに充実した名機の末裔
IWCシャフハウゼンが現行インヂュニアを披露したのは2023年のこと。発表直後から世界中で予約が殺到し、入手するまでに首を長くして待っていた人も多かったと聞く。それから2年を経た今年、IWCは再びインヂュニアにスポットライトを当ててきた。この狙いについて、製品開発のキーマンであるステファン・イーネン氏にジュネーブで話を聞いた。
<KEYMAN – IWC技術部門アソシエイトディレクター/ステファン・イーネン氏>「プロポーションの維持と機能の追加が両立できました」
↑1997年に時計製造のマスター終了後、2002年にIWCのムーブメント開発者兼デザイナーに就任。以来、技術部門の要職に就いて数々の名作を手がけてきた。いまやブランドの時計開発に欠かせない“IWCの頭脳”である。
(イーネン氏)「2023年に〝フォルムとテクニック〞というテーマで現行インヂュニアを発表し、今年はそのテーマをさらに深めました。かつてジェラルド・ジェンタ氏がデザインしたプロポーションを保ちながら、新たな機能や素材を加えることにしたのです」
結果、永久カレンダーモデルでは秒針を除くことでキャリバーの厚みを0.5mm抑えることに成功。ブラックセラミックモデルはケースバックまで素材を統一する技術進化にも繋がった。もちろん、アイコニックなブレスレット一体型ケースのフォルムをキープしたままである。さらに今年は35mmのサイズバリエーションを追加。インヂュニアファミリーの魅力は増す一方だ。
↑2025 New Model「インヂュニア・オートマティック 42」(左)&「インヂュニア・オートマティック 35」(右)
イーネン氏には、もう一つの今年のハイライトである「パイロット・ウォッチ」についても尋ねた。トゥールビヨンに耐衝撃性能を与えた意欲作は、どのように成し得たのか。
「あの時計は非常に難しい一本でした。こうした耐衝撃性能を時計に持たせる構造については、長年のパートナーであるメルセデス AMGからも非常に多くのインスピレーションを得ています。衝撃吸収というテーマはエンジニアリングと直結する興味深いテーマですからね。彼らなくしては完成しなかった一本です」
2名の天才の発想を凝縮した複雑時計
IWC「インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41」 Ref.IW344903 562万5400円
IWCの“永久カレンダーの父”であるクルト・クラウスが考案したリューズ操作可能な永久カレンダーの構造と、時計デザインの巨匠であるジェラルド・ジェンタのデザインが初融合した一本。自動巻きCal.82600を搭載する。ステンレススチールケース。直径41.6mm。10気圧防水。
フルセラミックの外装を実現した快作
IWC「インヂュニア・オートマティック 42」 Ref.IW338903 296万1200円
オリジナルの形状をセラミックで実現した革新の一本。薄型チタンリングによって保護された自動巻きCal.82110を搭載し、直径42mm(厚さ11.5mm)のケースはシースルーバックながら10気圧防水を備える。オールブラックの外装に、針とインデックスの夜光が映える。
名デザインをフルゴールド&小径ケースで堪能
IWC「インヂュニア・オートマティック 35」 Ref.IW324903 575万3000円
既存モデルから一気に約5mmも小径化したサイズバリエーションの一本。40mmモデルの特徴を踏襲するべく細部まで再設計を行い、ムーブメントも新型の自動巻きCal.47110を搭載する。このほかステンレススチールケースのブラックとシルバーの2文字盤のバリエーションもある。
IWCとモータースポーツ、そして映画との共鳴
今年のIWCの大きなトピックスは時計の新作に留まらない。6月公開の映画『F1』の劇中にて、IWCのブランドロゴやタイムピースが幾度となく登場するのだという。その経緯について、フランツィスカ・グセル氏はウオッチズ&ワンダーズのIWCブースで編集部にこう述べている。
<KEYMAN – IWC CMO(最高マーケティング責任者)/フランツィスカ・グセル氏>「エンジニアのための時計作りは私たちの哲学です」
↑異業種にてキャリアを積んだのち、2015年よりIWCのチーフ・マーケティング・オフィサー兼サスティナビリティ委員長に就任。同社のマーケティング&コミュニケーション部門を統括するなど、その活動は多岐に及ぶ。
(グセル氏)「今回のパートナーシップは『トップガン・マーヴェリック』と同じチームが映画『F1』を制作することが重要なきっかけとなりました。長きにわたりエンジニアのための時計を手がけ、それをアイデンティティ、哲学とするIWCに相応しいテーマだと思いましたね」
↑2025 New Model「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ 41 “APXGP”」
2004年にメルセデスAMGと、2013年からは同ペトロナス F1チームとタッグを組み、いまもエンジニアリングパートナーとして互いに技術を高め合っている。IWCにとってモータースポーツの世界が新たな素材や構造の糧となっていることは周知の事実だ。こうした背景を知ったうえで、映画『F1』に登場する「APXGP」のマシンにIWCとメルセデスのロゴが並ぶ様は、それだけで感慨深い。
↑2025 New Model「パイロット・ウォッチ・パフォーマンス・クロノグラフ 41」
「この映画では、主演を務めるブラッド・ピット氏が特別にセージグリーンダイアルにカスタムしたインヂュニアSL(リファレンス1832)を着用しています。それに加えてチームエンジニアにも、新作『パイロット・ウォッチ・パフォーマンス・クロノグラフ』などの時計を、120本ほど提供しました。それら劇中に登場する時計がスト
ーリーの中で重要な役割を果たすので楽しみにしてください」
チームエンジニアも着用する特別仕様
IWC「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ 41 “APXGP”」 Ref.IW388116 105万2700円
映画『F1』に登場する架空のF1チーム「APXGP」に通じるゴールド、ホワイト、ブラックのカラーを取り入れた特別仕様。チームロゴが入ったラバーストラップは独自のEasX-CHANGEストラップ交換システムを備える。ステンレススチールケース。直径41mm。厚さ14.5mm。10気圧防水。
チームカラーに忠実なゴールドクロノグラフ
IWC「パイロット・ウォッチ・パフォーマンス・クロノグラフ 41」 Ref.IW388309 410万8500円
セラミック製タキメーターベゼルを持つ「パフォーマンス・クロノグラフ」に18Kレッドゴールドケースを初採用。ブラックラッカー文字盤の艶感と金色の針、インデックスも好相性を見せ、特有のラグジュアリーさを醸し出す。自動巻き。直径41mm。厚さ14.7mm。
1万Gの衝撃に耐える驚愕コンプリケーション
IWC「ビッグ・パイロット・ウォッチ・ショック・アブソーバー XPL トゥールビヨン・スケルトン」 Ref.IW357701 3095万9500円
フライング・ミニッツ・トゥールビヨン搭載の自動巻きCal.82915を、独自技術「SPRIN-g PROTECTショックアブソーバーシステム」で保護し、1万Gを超える耐衝撃性能を確保。セラタニウム製ケースの両サイドにはラバーバンパーが付く。直径44mm。厚さ13.1mm。
ブラッド・ピット主演の映画『F1』にIWCのタイムピースが登場!
今夏公開の映画『F1』は、『トップガン・マーヴェリック』を手がけたジョセフ・コシンスキー監督の最新作。製作を担当したジェリー・ブラッカイマー氏(写真右)は、音楽を手がけたハンス・ジマー氏らとウオッチズ&ワンダーズのIWCブース来場した。
問い合わせ先:IWCシャフハウゼン TEL.0120-05-1868 https://www.iwc.com/jp/ja/
※価格は記事公開時点の税込価格です。
Text/水藤大輔(WATCHNAVI) Photo/嶋田敦之
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