<取材協力>
G-SHOCK
直近10年のG-SHOCK史において、フルメタルモデルの「GMW-B5000」ほどシンボリックなベストセラーはない。「オリジン」と呼ばれる、いわゆる「DW-5000」の系譜を継ぐ伝統的なスクエアフォルムをフルメタルで実現したこのモデルは、再びG-SHOCKの存在を世に知らしめた。そして今回、次世代のフルメタルG-SHOCKとなる「GMW-BZ5000」が新登場。開発リーダーへのインタビューを通し、ニューモデルの優位性を深堀りする。

↑フルメタルG-SHOCkの最新シリーズ「GMW-BZ5000」。
“正常進化”というありきたりな表現は望ましくない
1983年、「壊れない時計」として驚異的な耐衝撃性を備え登場したG-SHOCKは、数々の機能の搭載、先進的なマテリアルの採用、さらにはユニークなデザインを取り入れ、時計界に新たなトレンドを生み出し続けている。今や海外にも広く愛用者を持つ時計ブランドとして、累計1億5000万本(2025年3月末時点)のセールスを記録し、全世界・全世代に時計を腕に着ける文化を根付かせた存在といっても過言ではないだろう。時計に興味を持った者ならば誰もが一度は通るブランド、それがG-SHOCKなのである。
〈1983年デビュー【DW-5000C】オリジン〉

↑DW-5000C-1A 参考品/記念すべきファーストモデル=オリジンは、“落としても壊れない時計”というカシオ技術者・伊部菊雄氏のアイデアにより発明。およそ2年をかけて製品化された。四角いベゼルがそのネーミングは、自由落下=重力(GRAVITY)に由来する。
そして40年以上にわたる歴史の中で、初号機「DW-5000C」から纏ってきたスクエアフォルムを特徴とする「オリジン」はアイコニックなコレクションとして現在も君臨しており、ブランド設立35周年を迎えた2018年には初めてのフルメタルシリーズGMW-B5000がデビューした。それまで高級ラインにあたる「MR-G」や「MT-G」ではメタル外装の採用例があったが、スクエアフォルムでの実現には重量と耐衝撃耐性との兼ね合いがあって困難であったものの、緩衝材となる樹脂パーツの機能的進化や設計の見直しによって課題を克服し、GMW-B5000は完成へと至った。結果、このシリーズは大成功を収め、ロングセラーを記録している。
〈2018年デビュー【GMW-B5000】〉

↑GMW-B5000D-1JF 8万4700円/初代G-SHOCKのデザインをベースに、初めてフルメタル化された記念碑的モデル。樹脂モデルとは一線を画す重厚な作りが特徴で、ケース内部に樹脂製のバッファーを備え、G-SHOCK固有のタフネスを実現した。Bluetooth®搭載電波ソーラー。
≪フルメタルG-SHOCK比較 新作「GMW-BZ5000」&定番の「GMW-B5000」≫
↑新作のGMW-BZ5000と定番のGMW-B5000は、ほとんど同サイズ。MIP液晶の違いはあるものの、搭載機能も変わらない。しかしながら手に持った時の確かな質感や、ディテールの隅々まで行き届いたフィニッシングには目を見張るものがある。とはいえ、GMW-B5000はやはり名作。どちらか1つを選ぶとなると、苦慮するに違いない。
これらのステップを経て今回、「オリジン」とフルメタルのDNAを受け継ぐニューシリーズGMW-BZ5000がリリースされることとなった。最新作こそG-SHOCKの歴史と革新を証明するモデルであることを、開発を指揮した小島一泰さんの解説を交えながらひも解こう。
AIを用いた開発がG-SHOCKに新しい活力を与える
新作GMW-BZ5000の特徴のひとつが、開発時にAIを用いている点だ。2023年発表のフルゴールドのコンセプトモデル「G‑D001」に始まり、MT-Gの「MTG‑B4000」でもデザイナーが描いた原案をもとに、生成AIによるシミュレーションと開発陣の試行錯誤によってG-SHOCKの基準を満たす耐衝撃構造を作り上げた。AI × ヒトの共創デザインは、今回で3例目となる。

↑カシオ計算機 時計事業部 商品企画部 第一企画室 小島 一泰さん/1992年にカシオ計算機に入社。2018年までデザイナーとしてG-SHOCKやプロトレックのデザインディレクションを担当し、2019年からはチーフプランナーとして従事。ハートレート搭載のDW-H5600、バイオマス樹脂を採用したプロトレック、さらに今回のGMW-BZ5000の開発を指揮した。
(小島さん)「AIを開発プロセスに組み込んだことで、デザイン案の創出から構造検証モデルの生成までを自動化でき、従来数か月を要していた初期試作サイクルを大幅に短縮しました。これにより、デザイナーと設計者がより多くの時間を検討と微調整に充てられるようになり、製品の品質向上に貢献しています」
製造段階でのAI利用は未知数で、むしろきめ細やかな仕上げはロボットよりも職人の手作業がモノをいう。また、設計の微調整やデザイナーの嗜好を取り入れる際には、AIは併用しづらい。しかしながらAIは、G-SHOCKの開発スピードを上げることに貢献しており、さらに注目すべき分野といえるだろう。具体的にはどのようなシーンでAIを活用しているのか?
「ひとつは耐衝撃構造についてです。まず、過去の耐衝撃試験で培った衝撃分布結果などをAIに入力させ、『高い堅牢性と軽量化の両立』『基本デザイン形状を維持』『外装パーツの分割による多層仕上げ』など、開発要件を3DCADへ入力していきます。この3DCADでのAI活用は『物理空間・構造設計の最適化』に特化したアルゴリズムによる駆動されるもので、ChatGPTなどの一般的なAIとは異なり、専門のインターフェースを介して行われます。これらを経て、設計意図を反映した複数のCAD案が短時間で生成できるのです」

↑外装をフルメタルとするGMW-BZ5000は、ベゼルとミドルケースが異なるカラーに仕上げたメタルパーツを採用。これまでと異なるアプローチだが、これもAI × ヒトの共創デザインによる副産物的なものといえる。
CADで図面を引くことは、現代の時計作りではもはや慣習となっている。ここであえて、突っ込んだ質問をぶつけてみようと思った。近年は衝撃への強さをアピールしている機械式時計が他社から登場しているが、これらを検証してみたり、感想を抱いているのだろうか?
「機械式時計の耐衝撃構造は、ヒゲゼンマイや脱進機周辺を小さなバネやリングで保護する“一点防御”の方式が主流です。一方、カシオが初代G-SHOCKの時に発明し、40年以上も磨き上げてきた構造は根本的に異なります。ムーブメントや電子基板を樹脂インナーで“浮かせ”、外装ではなくインナーで衝撃を受け流すモジュール構造が基本です。さらに専用開発した外装樹脂やバンド、緩衝パーツを配した耐衝撃構造により衝撃を段階的に分散します。このトータル保護設計により厳しい衝撃基準をクリアし、回路や液晶表示までも守っている点が、機械式時計の局所防御とは一線を画す特徴といえます」

↑上の写真はメタルベゼル、樹脂緩衝パーツ、センターケースの展開図。下はフロントビスを取り出しカットで、細部までこだわり抜かれた設計と仕上げがなされていることがよくわかる。前面をカバーするベゼルの凹みはディンプルデザインではなく、実際に機能ネジがセットされており、ミドルケース側からマイナスドライバーで締め、ベゼルを固定している。バイカラーデザインに合わせてミドルケースと同色に仕上げられているのも特徴だ。
40mmから50mmという腕に乗るサイズのケースに、想像を超える技術者たちのアイデアが詰め込まれている。とりわけショックレジスタントの限界に挑むG-SHOCKは、独自の設計の上に成り立っていることがよくわかる。
「GMW-BZ5000はこのような特殊な設計を持つG-SHOCKの最新モデルとなるため、詳細な工程や技術、ノウハウについてはご紹介を差し控えさせていただいているものの、これまで以上に部品の素材選定から構造検討に至るまで厳格な評価プロセスを重ねており、品質と精度確保に一層注力していることは明言できます。そしてこれらは定番GMW-B5000と同様に国内生産を行っており、工場ラインや管理体制も同等です。両モデルにおいて品質面での優劣はなく、お客様に安心してお使いいただける高い信頼性を担保しております」
メイド・イン・ジャパンが再び注目される昨今、新作GMW-BZ5000も国内製造とのことでクオリティは申し分ない。今度は細部まで行き届いた技術を見ていくこととしよう。

↑GMW-BZ5000前面カバーベゼル。大きく6つの工程を経て完成へと至る。フロントビスがセットされるベゼルのディンプル部も丁寧に加工されるなど、他の外装パーツを連結する機能も有している。
パーツを細分化し、磨きをかけ、より上質な構造美を獲得
先述のように、伝統的なスクエアフォルムをフルメタルで表現したGMW-B5000とGMW-BZ5000は、ほぼ変わらない外観ともいえる。しかし小島さんとのコミュニケーションを通し、その違いに明確に気づくことができた。
「GMW-B5000は、初代DW-5000を可能な限り忠実にメタル化することを第一の開発思想とし、オリジナルのケースフォルムや表示デバイス、操作感を維持するためにパーツ数を絞りながら機能性と質感を両立させたシリーズとなっています。一方でGMW-BZ5000は、新開発の高反射MIP液晶やバイカラー仕上げなど最新技術をデザインに取り入れ、“進化したG-SHOCK像”を表現することを目指しました。AI活用による新たな構造や最適化も、多層的な仕上げ分けとシャープな造形を実現しています」

↑複雑造形のメタルパーツがせめぎ合うように噛み合うためのカギとなるセンターケース。こちらもステンレススチールの塊から削り出された屈強なパーツだ。定番のGMW-B5000はベゼルでセンターケースをフルカバーする構造だが、ベゼルとセンターケースが上下で連結する新開発のアーキテクチャが採用されている。
なお、新作GMW-BZ5000とGMW-B5000は現時点では併売を予定しているという。それぞれ異なる思想で設計されたシリーズであり、G-SHOCKブランドは多様なニーズに応えるラインナップを揃えるためでもある。ここで疑問が生じた。同じくスクエアフォルムのMR-G MRG-B5000との違い。いずれもクラフトマンシップが行き届いている。
「新作GMW-BZ5000は、オリジンであるDW-5000シリーズを最先端テクノロジーで進化させることに特化しています。AIによる形状最適化で新たなデザインにチャレンジし、高度な鍛造技術やIPコーティングによるCNF表現、部品同士の噛み合わせを活用したエッジ表現により、多層的な仕上げ分けを量産性を損なうことなく実現しました。対してMR-G MRG-B5000は、山形工場の熟練職人によるアッセンブリーや微細研磨、表面加工を施し、金属表面に独特の質感を与える工芸的アプローチが魅力です」

↑GMW-BZ5000のフェイスは、斜めから見ても視認性を保っている。これも高性能なMIP液晶のメリットである。
そしてもうひとつ、新作GMW-BZ5000の特色となっているのが液晶だ。いわゆる反転デザインだが、強い日差しの下でも読み取りやすい仕様である。
「GMW-BZ5000のMIP液晶は、ソーラー駆動向けにパネル内部回路の低電圧化により駆動特性を最適化した専用設計です。これにより高反射率・広視野角・高コントラストを維持しつつ省電力化を目指しています。電波受信とBluetooth®同時搭載に伴う消費増は回路設計や運用条件で抑制が期待されますが、ピーク電流や負荷特性の影響で効果は運用状況に左右されます」

↑MIP液晶はユーザーの好みに応じて2種類のフォントから選択が可能。これもG-SHOCKでは初の機能となる。
またこのMIP液晶は、「クラシック」と「スタンダード」と名付けられた2種類のフォントデザインを切り替えて表示できる。どのような議論などを経て開発されたものなのか?
「2種類のフォントは、社内外のヒアリングやアンケートで、G-SHOCK伝統の7セグ風クラシックフォントのほうが落ち着く、無機質すぎない温かみがあるといった声が多く寄せられたため、あえて“クラシック”と“現代的ラインのスタンダード”を選択できる仕様としました。クラシックは初代G-SHOCKの記憶を継承する安心感を与え、スタンダードは視認性やモダンデザインとの親和性を重視した仕様です。この両軸をユーザーニーズに合わせて切り替えてご使用いただけます。使い分けを楽しんでいただけたら幸いです」

↑GMW-BZ5000シリーズ発表時、カラーバリエーションのラインナップは全3種類となった。いずれもバイカラーで、G-SHOCKらしいデザインにまとめられている。
AI × ヒトの共創デザインがG-SHOCKの進化を加速させる
「GMW-BZ5000の企画開発では、“オリジンDW-5000の伝統”と“最先端技術の融合”という、一見相反する2つの要素を高い次元で融合させるという挑戦に取り組みました。初期段階で伝統の角形フォルムや耐衝撃デジタル時計の始祖というオリジンのアイデンティティを守りつつ、AIが導き出した構造を取り入れた数々のデザインを用意。デザイン、企画、営業、プロモーションから成る組織横断チームで視認性や量産性、コストを多角的に検証しました」

↑気づきにくいが、実はスクリューバックも見どころのひとつ。上の写真は製造工程で、下の写真が定番(左/GMW-B5000)と新作(右/GMW-BZ5000)を比較して撮影したもの。外装のデザインに合わせてスタイリッシュに進化しており、専用工具によって開閉が可能な形状となった。
「特にバイカラーデザインやエッジ表現、フルドットをいかしたUIデザインには数々の試作を重ね、AI支援設計による構造最適化を導入し、パーツ同士の噛み合わせ精度にも徹底的にこだわりました。こうしてオリジンのDNAを受け継ぎながら、最新のテクノロジーを余すところなく搭載し、独自のデザインと機能性を両立したことが今回のアピールポイントといえます。そして何より、この製造を実現するために大勢の技術者が関わっています。ぜひ店頭でお試しいただき、そのクオリティを実感いただきたいです」

G-SHOCK「GMW-BZ5000D-1JF」 9万3500円/クオーツ。ステンレススチールケース&バンド&スクリューバック、無機ガラス風防。MIP液晶。縦49.3×横43.6mm、厚さ13mm。質量172g。20気圧防水。
モデルの詳細はコチラ>>>
GMW-BZ5000シリーズ/搭載機能一覧
●耐衝撃構造(ショックレジスト)
●タフソーラー(ソーラー充電システム)
●マルチバンド6(電波時計:日本・北米・ヨーロッパ・中国地域対応)
●モバイルリンク機能(対応携帯電話とのBluetooth®通信による機能連動:自動時刻修正、簡単時計設定、ワールドタイム約300都市+オリジナルポイント、タイム&プレイス、携帯電話探索)
●アプリ「CASIO WATCHES」対応
●ワールドタイム(世界55都市+UTC。ホームタイムとの時刻入替機能付き)
●ストップウオッチ(1/100秒(1時間未満)/1秒(1時間以上)、24時間計、スプリット付き)
●タイマー(セット単位:1分、最大セット:24時間、1秒単位で計測)
●時刻アラーム
●LEDライト(フルオートライト、残照機能、残照時間切替(1.5秒/3秒)付き、ホワイト色)
●フルオートカレンダー
●パワーセービング機能(暗所では一定時間が経過すると表示を消して節電)
●バッテリー充電警告機能
●操作音ON/OFF切替機能
●12/24時間制表示切替
問い合わせ先:カシオ計算機 お客様相談室 TEL.0120-088925 https://gshock.casio.com/jp/ ※価格は記事公開時点の税込価格です。
Text/山口祐也(WN編集部) Photo/吉江正倫










