高級時計に期待される役割りは、時刻表示のほかに“ステータス”がある。今日においては後者にかかるタスクが高まっている印象で、格式に直結する由緒正しいブランドが重宝されている。これに該当するブランドについて、数多くの時計を扱うトミヤ ユーロサロン店のスタッフ・岡さんに尋ねる機会を得た。
<トミヤ ユーロサロン>岡さん
「シンプルな時計だからこそ、高度な技術や装飾美が求められる」
質問に対して岡さんが回答として挙げたブランドが、“ブレゲ”。理由について次のように解説してくれた。
「創業者のアブラアン-ルイ・ブレゲは、時計の進化を2世紀も早めたといわれている偉人です。新機構や装飾技の発明から製造まで天賦の才を発揮し、その時計はフランス国王ルイ16世や王妃マリー・アントワネットにも愛用されました。こういった語りたくなるストーリーのあるブランドは数が少なく、しかも現在購入できるというのもブレゲの魅力といえます」
マリー・アントワネットの生涯を描いた映画や『レ・ミゼラブル』でも注目されることが多いフランス革命期に、アブラアン-ルイ・ブレゲは生きた。彼の製作したもっとも有名な複雑時計が、過去の記事(https://watchnavi.getnavi.jp/topics/28561)でも紹介した彼女のためにオーダーされたという「No.160」だろう。
「時代を越えて語り継がれるブレゲの活躍は、時計に詳しくない方にも興味を持っていただけるほどドラマチックといえます。そんな格式高いブランドを身に着けることは、この上ない幸せに繋がるのではないでしょうか」
そう語りながらショーケースから取り出してくれたのが、ブレゲ随一のシンプルウオッチだった。
「クラシックは至ってシンプルな3針時計に見えますが、ブレゲならではの伝統が息づくモデルです。ブレゲ・ブルーと呼ばれる落ち着いた色合いのダイアルは、職人が時間をかけて作り上げた貴重なグラン・フー エナメル製。その美しさは、時計界でも一級品です。しかもブレゲ・ブルーのエナメルダイアルは、このモデルで初めて実現したという特別感もあります」
続けて、ブレゲが生んだ“技”の数々も紹介してくれた。
「エナメルダイアル上の個性的な数字や針の形状は、ブレゲ本人が発明したものです。それらを採用しているだけでも、ブランドの歴史を体現している時計といえます。さらに注目いただきたいのが、ケースサイドのコインエッジです。この繊細な装飾も時計に個性を与えています。写真で見るよりも、実際に触れてこそ良さが伝わる時計といえます」
「クラシックとは異なる魅力を放つマリーン。大人の余裕を感じさせます」
岡さんは次に華やかなスポーツクロノグラフを手に取り、ブレゲコレクションの幅の広さについて教えてくれた。
「クラシックはブレゲの歴史を語るうえで外せない定番時計ですが、次にご紹介したいのが正反対のデザインともいえるマリーンです。大人の余裕を感じさせるこのシリーズは、海をイメージさせるギヨシェ装飾を施した美しいダイアルが見どころといえます」
緻密な模様、煌びやかな仕上げ、立体的なローマ数字インデックスなど、見るからに高級感が漂う。さらに複雑な形状のローズゴールド製のケースと針を組み合わせ、独特なスタイルを確立させた。
「いま時計界では、“ラグジュアリースポーツウオッチ”が一大ジャンルとされています。マリーンもそのひとつで、とくにラバーストラップ仕様がその印象にぴったり当てはまります。さらにはブレゲ本人が製作していたマリン・クロノメーター(航海用精密時計)に由来するデザインなど、こちらも語りどころが非常に多い(笑)」
「いずれもブレゲの魅力を存分に備えているといえますが、伝統に根付いた製造方法を実践しているため大量製造にはむかず、希少な品となっています。また、限られたショップでしか扱っていないブランドでもありますので、ご興味を持たれた方はぜひ当店にご来店いただければ幸いです」
わずか40mm前後の機械式時計には、古の時計職人たちが試行錯誤の末に生み出した技術や装飾が生かされている。とりわけブレゲの製品は、伝説の時計師のスピリットが引き継がれているわけだ。こうした威厳あるタイムピースの購入は、今年88周年を迎えるトミヤのような老舗を選びたい。それもまた、“ステータス”になるのだから。
<取材・撮影協力>
トミヤ ユーロサロン
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