国内ではコロナ禍もひとまず落ち着く方向にあり、街は活気を取り戻しつつある。休業や時短営業を余儀なくされた時計店にも、客足が戻りつつあると聞く。そこで暑くなる季節に向けて毎年需要が高まる、腕元を彩る“夏”時計をピックアップ。まずは定番のダイバーズウオッチということで、スイスの「ミドー(MIDO)」から紹介しよう。
いまもっとも需要のある価格帯から本格時計を狙う
今回の《10万円+αの“夏”時計》記事を制作するのには理由があった。時計メディアに携わっていることから、「安くて良い時計は?」という漠然とした質問を投げかけられることが多く、先日も、今夏、初めて機械式時計を買ってみたいという相談があり、よい機会なのでレポートすることにした。
その時に筆者が候補に挙げた一本が、ミドーの「オーシャンスター 200」。昨年から今年にかけて多くの時計と出会った中でも、10万円台の価格帯ではとくに好印象だったことが根拠となっている。デザインもスペックもそつがなく、“最初の一本”としての条件を満たしている。さらに相談者が希望する「しっかりとしたブランドだけど、知る人ぞ知る」にも当てはまるためだ。
ミドーの存在を知らない人もきっといるため、解説しておこう。
世界最大の時計製造グループ「スウォッチグループ」(オメガやロンジンなど複数社から構成)に属しており、2018年には創業100周年を迎えた老舗ブランドである。“本物の美しさは時代を超える”の理念のもと、むやみにトレンドを追わずに普遍の美を追求し、さらに手の出しやすいプライスレンジに収める。そのような特徴やレッドブル主催のクリフダイビング公式パートナーを務めていることから、欧米では20代や30代からも好意的に受け入れられている。
デイリーユースに適したスタイリッシュなダイバーズ
「オーシャンスター 200」に話しを戻そう。
海洋にインスピレーションを得た同シリーズは、もともと1954年にミドーが開発したオリジナルモデルの系譜を継ぐダイバーズウオッチである。20気圧防水の基本モデルはダイバーズらしいオーソドックスなデザインながら、スケルトン加工された時分針、カラーリングされた60分間スケール付きの逆回転防止ベゼル、ビジネスタイムに便利な日付&曜日表示を備え、日常使用に最適な仕様となっている。また、蓄光型のスーパールミノバ夜光が塗られた針と立体感あるアプライドインデックスを用いて、夜間や海中においても時刻が読み取りやすい。
≪試着レビュー≫
日本人の腕に馴染むサイズとローズゴールドカラー
ケースの直径が42.5mmと標準よりもやや大きいが、一方でスリムな設計になっているため、試着時には大きすぎるという印象を持たなかった。むしろ、半袖になる機会が増える夏には、このくらいの存在感があってよい。
オーソドックスなステンレススチールモデルもラインナップされているのだが、昨年は写真のローズゴールドPVDモデルが売れ行き好調だったようだ。海を彷彿とさせるネイビーブルーと、ラグジュアリーなゴールドカラーの組み合わせが絶妙なバランス。12万円台というコストパフォーマンスの良さも、評価されてのヒットだろう。
プロフェッショナル仕様の上位モデルにも注目!!
オーシャンスター 200のワンランク上に位置付けられているのが、「オーシャンスター ダイバー 600」だ。こちらは海底探索のための本格派ということで、大深度の水圧に耐える屈強な作りになっている。さらに深海調査や油田開発、軍の水難救助隊らの熟練ダイバーにしか行えない飽和潜水に対応するべくヘリウムガス排出バルブも装備されている。
とはいえ、通常よりも強力なルミノバ グレードX®が使われていたり、ムーブメントは高精度なCOSC認定クロノメーター仕様へとアップグレードされており、耐磁性や耐久性、耐摩耗性に優れるシリコン製ヒゲゼンマイも搭載。これらは通常使用においても役立つ機能だ。オーシャンスター 200に比べてひと回り大きいが、ケースの質感や存在感も上位機種ならではの魅力がある。
なお、本機も加工なしのステンレススチールモデルが存在するが、“知る人ぞ知る”から選ぶならフルブラックに仕上げられたブラックDLCモデルがイチオシ。漆黒に映えるオレンジ秒針が特別感を演出し、腕元のアクセントとして活躍してくれることだろう。
≪試着レビュー≫
プロが選ぶツール感を味わえるビッグ・ダイバーズ
直径が43.5mm、厚さが14.05mmのケースは、細腕の人にとっては余るサイズ。写真は時計を装着する腕回り17.5cmの筆者が試着したシーン。やはりオーシャンスター 200と比べると存在感は別格だ。そのため装着感が損なわれるかと思いきや、ラバーストラップが肉厚で品質も高いので腕へのホールド性は良好。安心感も得られた。
大型のためケースをぶつけたり擦ってしまいがちだが、DLC加工によって硬度が高められていることで、小傷がつきにくい外装になっている。さらにサビにも強い。DLCは精悍な漆黒デザインを形成するためだけではなく、プラクティカルな視点でもメリットが大きい。
両モデルともにミドーのストロングポイントを凝縮している
いずれの時計も、これからのアウトドアシーズンに使える機能と都会にマッチするデザインを備えた、汎用性の高いダイバーズである。しかも10万円台前半から、複数モデルより選べる選択肢がある。このコストパフォーマンスの秘訣は、ずばり同グループのムーブメント専門メーカーから高性能なメカ(キャリバー80)の供給を受けることができること。これによってコストは抑えられ、外装へのこだわりを施すことも可能になっている。
余談だが、相談者は国から支給される「特別定額給付金」を時計購入にあてようかと検討中とのこと。同様の考えの人もいるのではないだろうか。それならば夏本番に向けて「オーシャンスター 200」を、海のアクティビティが趣味なら「オーシャンスター ダイバー 600」を候補に入れてはいかがだろう。
問:ミドー/スウォッチ グループ ジャパン TEL.03-6254-7190
www.midowatches.com