連載 第1話【半世紀前の伝説】映画『アポロ13』でも描かれた「オメガ スピードマスター」の偉業――NASAが認める唯一無二のクロノグラフ

本格的な男性用腕時計が発明されてから1世紀以上。その間、現代史における偉業を陰ながら支え、ともに時を刻んだ時計もあった。とりわけこの分野における「オメガ(OMEGA)」の偉大さは、多くの人々が知るところである。先日、打ち上げに成功した「クルードラゴン」でも注目される宇宙開発において、オメガがいかに貢献してきたかを連載3話に分けて改めて振り返りたい。

宇宙への夢を開花させたNASAの「アポロ計画」

去る2020年5月31日はアメリカ、さらにいえば世界のあらゆる国々……つまり、人類にとって特別な日となった。フロリダのケネディ宇宙センターからISS(国際宇宙ステーション)に滞在予定の宇宙飛行士2名を乗せた宇宙船「クルードラゴン」がNASA(アメリカ航空宇宙局)によって打ち上げられ、約19時間後ISSに到達。ドッキングを成功させた。アメリカにとって2011年のスペースシャトル終了以来、実に9年ぶりとなる有人宇宙計画であり、さらには飛び立った宇宙船は史上初の民間企業「スペースX」によって開発・製造されたものだった。これは国家的一大プロジェクトから民間における経済活動の一環、つまりは本格的な宇宙ビジネスの幕開けを意味している。

ケネディ宇宙センターから打ち上げられるアポロ13号。1970年4月11日撮影。

 

こうした目覚ましい宇宙進出の基盤となったのが、同国が1961年から1972年にかけて行った宇宙計画「アポロ計画」といえるだろう。人類が初めて有人宇宙飛行に成功したのは、米ソ冷戦時代の1961年、旧ソ連のユーリイ・ガガーリンによるものだった。宿敵に後塵を拝することとなったアメリカは俄然巻き返しに狂奔し、時の大統領、ジョン・F・ケネディの「1960年代のうちに人類を月に送る」という高邁な宣言とともに、それまで夢物語とされてきた月面探査計画に乗り出し、国家の威信をかけた技術革新が奏功した。そして1969年、「アポロ11号」ミッションでそれは現実となったのだ。その後5回の月面着陸が行われ、一連の試みにより、人類の叡智を結集すれば宇宙への挑戦も決して不可能でないことを誰もが悟った。

人類初の月面着陸を果たしたアポロ11号のミッションは確かに画期的でセンセーショナルだった。しかし、このアポロ計画が先述の決定的な基盤とされるようになった要因は、翌年実行されたアポロ13号の存在が大きいといえるのではないだろうか。実際、アポロ13号で起こった“アクシデント”は、1995年にトム・ハンクスやケヴィン・ベーコンなど人気俳優らの出演で映画化され、広く知られているのだから。

アポロ13号に搭乗したジェームズ・ラベル船長。

 

スピードマスター伝説の始まりは「アポロ計画」にあった

アポロ計画では正確無比で頑強な腕時計の装備が必要不可欠とされ、何社かのクロノグラフが試されたという。テストは高温、低温、衝撃、振動、果ては可聴ノイズなどといったものまで多岐にわたり、時計を破壊しようとしているのではないか、と揶揄されたほど過酷を極める内容だった。その結果、唯一すべての課題をクリアし、故障のなかったオメガの「スピードマスター」が公式装備品に選ばれ、アポロ11号ミッションにおいて人類初の月面着陸が達成されたときにも携行された。その一方で、アポロ13号時にはこの時計が重要な役割りを果たしたのである。その経緯は、時計ファンならずとも興味をそそられるはずだ。

連載 第2話では、アポロ13号を襲った“アクシデント”とスピードマスターの関係を紹介する。

 

伝統のデザインと機能を守り続ける手巻きクロノグラフ

【現行モデル】オメガ「スピードマスター プロフェッショナル」Ref.311.30.42.30.01.005 60万5000円/手巻き(Cal.1861)、毎時2万1600振動、48時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース&ブレスレット。直径42mm(厚さ14mm)。5気圧防水

スピードマスターは1957年にシーマスターの派生機種として初代が誕生。当初はレーシングモデルという位置付けだったが、1963年に発表された第3世代のモデルが1965年にNASAの公認モデルとなり、第4世代がアポロ11号の月面探査で使用されると、宇宙で活躍する“ムーンウオッチ”としての名声を得た。現行の「プロフェッショナル」は1997年に誕生した第6世代で、手巻き式機構や12時間積算計を備えたクロノグラフ、タキメーターなど、当初からの仕様を継承。ムーブメントはカム式のクロノグラフ制御機構を採用したキャリバー1861を搭載する。現在もNASA宇宙ミッションの船外活動ではこのモデルの使用が義務付けられている。

 

問い合わせ先:オメガお客様センター TEL.03-5952-4400
https://www.omegawatches.jp/ja/

 

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