時計の機能を100%活用できる知識を紹介!実用機構の使い方完全丸わかりマニュアルVol.5【ベゼル編(航空回転計算尺・インナーベゼル)】

腕時計には時刻を知る以外にも、日付や月齢などのカレンダー情報を確認したり、精密なタイム計測を行ったり、他国の現在時刻を知ったりと、さまざまな機能が装備されている場合が多い。そんな各種機能の基本的な使い方や機構の原理などを初心者にもわかりやすく丁寧に解説していく。知っておけば役立ち度は満点なので、しっかり学習しておこう!

 

ベゼル編 〈航空用回転計算尺〉

計算機能を追加することでクロノグラフの潜在能力と可能性を飛躍的に進化させる

ベゼルを指で回すだけで複雑な計算が瞬時に可能

ベゼルを回すと数値や記号が描かれたリング(ベゼル内の黒い部分)も一緒に回り、ダイアル外周部の数値やマークと合致させるように操作することで、かけ算やわり算、キロやマイル、ノットの単位換算などパイロットに必要な各種計算が簡単に行える機構。元来は科学者の簡易型手動計算機器として開発された装置を、パイロット用に改良&超小型化して腕時計に組み込んである。

航空用回転計算尺搭載モデル ブライトリング「ナビタイマー B01 クロノグラフ 43」

Ref.AB0138241G1P1 113万3000円

航空に関する一連の計算が実施できる回転計算尺を備えた傑作として、70年以上も愛され続ける定番クロノの新世代コレクション。機能性を極めた緻密なデザインに、エレガンスを加味した独創的な造形も大きな魅力だ。自社製自動巻きキャリバー01搭載。直径43mm。ステンレススチールケース。3気圧防水。

問い合わせ先:ブライトリング・ジャパン TEL.0120-105-707 https://www.breitling.com/jp-ja/

MPH・KM

↑ダイアル外周部のMPH・KMと記されたポイント。速度や時間換算をする際などに使用する。

 

10目盛り

↑ダイアル外周の赤い10と、計算尺の赤い10。ともにかけ算やわり算、距離換算などに使う。

 

STAT

↑STATとはマイルのこと。KM(キロ)やNAUT(ノット)と併用し、それぞれの速度変換を行える。

 

36の三角

↑36の位置にある赤い三角マークは、1時間=3600秒であることを示す。時・分・秒の換算などに活用。

 

NAUT

↑ノット(海里)を意味するマーク。主に速度や距離の変換や計算に使う。

 

上の6つの目盛りやマークを軸に、各種計算などが可能

【かけ算】14×8を計算

↑ダイアル外周の赤い10に、計算尺の14(被乗数)を合わせる。

↑ダイアル外周の8(乗数)に対抗する計算尺の数値(112)が答え。

 

【わり算】650÷13を計算

↑割られる数650(=65)と、ダイアル外周の割る数(13)を合致。

↑ダイアル外周の赤い10に対抗する計算尺の数値(50)が計算値。

 

【必要な速度の計算】470マイルを45分で飛行するには

↑ダイアル外周に時間(45)、計算尺には470(47)マイルを設定。

↑MPH(Miles Per Hour)に対抗する計算尺の数値63(630)が答えとなる。

 

【時・分・秒の換算】2.2時間は何分?何秒?

↑ダイアル外周の赤い10に、計算尺の22(2.2時間)を合わせる。

↑ダイアル外周のMPHに対抗する計算尺の数値(132)が分を示す。

↑ダイアル外周の赤い36の三角に対抗する計算尺の79.2(7920)が秒だ。

 

【キロ・マイル・ノットの換算】時速10K/mはそれぞれ?

↑ダイアル外周のKMマークと、計算尺の10(10Km)を合わせる。

↑ダイアル外周のSTATに対抗する62の数値がマイルを示す(約6.2マイル)。

↑ダイアル外周のNAUTがノット換算の速度(54)を指し示す(約5.4ノット)。

 

【機構の仕組み】

計算尺を備え、ケース前面に上乗せ加工される両方向回転式のベゼル。複雑な計算を瞬時に正確に行うため数値やマークは緻密に描かれ、確かな操作性と安全性を確保するため厳格な基準に沿って製造や組み立てが行われている。

 

ベゼル編 〈インナーベゼル〉

安全性と操作性に優れたベゼル方式でゴツさを抑えたスマートなデザインを装う

ベゼルに直接触れずに安全・確実な操作が可能

通常の回転式ベゼルはダイアル上部のケースの縁(ガラスの外側)に設置されるが、これをダイアル外周部(ガラスの内側)に装備して、ケースサイドのリューズなどで動かす方式のこと。回転式ベゼルが内部にあるため海藻や岩などとの接触事故による誤作動の心配がなく、またベゼルの目盛りと針との距離が近いため、経過時間が読み取りやすいというメリットがある。

インナーベゼル搭載モデル ボール ウォッチ「エンジニアマスター ダイバークロノメーター」


Ref.DM2280A-S1CJ-BE 35万2000円

インナーベゼルを操作する2時位置のリューズは、押し込みながら回した時だけベゼルが回転する特許構造を持ち、水中でも安全に操作が可能。インデックスや針はもちろん、インナーベゼル内の目盛りにも自発光マイクロ・ガスライトを内蔵し、抜群の視認性を誇る。自動巻き。直径42mm。ステンレススチールケース。30気圧防水。

問い合わせ先:ボール ウォッチ・ジャパン TEL.03-3221-7807 https://www.ballwatch.co.jp/

 

【基本の操作】

↑2時位置のリューズを押しながら回すと、インナーベゼルも回転する。

↑左右どちらにも回るので、分針の先端にベゼルの起点部(▼)を合わせる。

↑分の経過をベゼルの数値で確認できる(写真は15分経過時)。

 

【機構の仕組み】

2時位置にあるインナーベゼル操作用リューズ奥には歯車があり、通常時はリューズを回しても空転するが、押しながら回すとその歯車に力が伝わり回転を開始。その歯車と嚙み合う構造のベゼル内側の歯車にも力が伝わり、インナーベゼルが回転するようになっている。

 

Text/外山明秀(トイズハウス)、平野翔太(WN編集部) Photo/山口雅則

◎本記事は『ウオッチナビ 2023 Summer Vol.90』より抜粋・編集しています。