独立を貫くスイスの名門マニュファクチュールブランド【ユリス・ナルダン(ULYSSE NARDIN)】が、「フリーク X」のニューモデルを発表した。シリーズ初採用となるグレーエナメルディスクを用いた「フリーク X グレー エナメル」が日本限定25本で発売。価格は700万7000円(税込)。
時計製造の常識を覆した「フリーク」の最新作
2001年、オート・オルロジュリーの常識を覆す存在として「フリーク」は誕生した。ムーブメント自体が針の役割を果たし、回転して時を刻むという前代未聞の仕組みは、時計業界に衝撃を与え、大きな話題となった。それからも「フリーク」は数々の技術的進化を遂げ、20件以上の特許を取得してきた。なかでも特筆すべきは、耐久性・軽量性・耐磁性に優れるシリコンを初めて時計製造に導入したことだ。常識を塗り替えたこの快挙は、「フリーク」の技術的な卓越性を語る上で欠かせない要素となっている。
今回、25本限定で登場する「フリーク X グレー エナメル」は、「フリーク」の大胆かつ先鋭的な機構と、ギヨシェ・フランケを施したグレーエナメルディスクが融合したモデルとなっている。その特徴はユリス・ナルダン傘下のエナメル文字盤製造工房、ドンツェ・カドランが手掛けたホワイトゴールド製ディスク。繊細なギヨシェ模様の上にグレーエナメルが重ねられ、深みのある光沢を獲得した。エナメル装飾は古代エジプトや中国、ローマ帝国で3000年以上にわたり伝承され、17世紀に時計製造と結びついた技法であり、その鮮やかで豊かな色彩は時を経ても色褪せることはない。現代では、時計製造における最も高度なメティエ・ダール(芸術的な匠の技)のひとつに数えられ、限られた工房のみが技術を保持する。その代表格とされるのが、ドンツェ・カドランなのだ。
エナメル文字盤で高い評価を得てきた同工房にとっても、本機の回転ディスクの製造は高度な挑戦となった。アワーディスクはムーブメントと一体化した可動部品であり、複数のネジ留めを伴う精緻な機械構造であるため。各ディスクは1枚ずつ順に製作され、完成には最低でも8時間から12時間を要している。
また、時計全体に繊細なバランスと優美な調和をもたらすグレーエナメルの絶妙なカラーは、「フリーク X グレー エナメル」のために特別に開発された新色だ。さらにアワーディスクには「DONZÉ ÉMAIL(ドンツェ エナメル)」の刻印を見ることができるが、これはシリーズ初採用の特別なディテールとなっている。
自社製造ムーブメント「キャリバーUN-230」を搭載
ブラックDLCチタン製の43mm径ケースには、ホワイトのステッチが施されたブラックバリスティックラバーストラップが組み合わされ、スポーティな印象にまとめられている。また、ブラックに統一したことで、独創的なフェイスが強調された。そして“心臓部”には、72時間のパワーリザーブを誇るマニュファクチュールムーブメント「キャリバーUN-230」を搭載。フライング・カルーセル機構をはじめ、脱進機、ヒゲゼンマイ、テンプはいずれも自社シリコン研究所「シガテック」で製造されたシリコン製である。なおシースルーバックからは、18Kローズゴールド製のローターが姿を覗かせるなど、同キャリバーは表も裏も洗練された美観と精緻な設計となっている。
最先端のテクノロジーと伝統の職人技の融合により生まれた「フリーク X グレー エナメル」は、日本の時計愛好家のためのスペシャルな逸品。製造に多大な労力と時間を要することから、わずか25ピースに限られるのはやむを得ないことといえる。
ユリス・ナルダン「フリーク X グレー エナメル」 Ref.2303-270LE-1AE-J/3A 700万7000円/自動巻き(Cal.UN-230)、毎時2万1600振動、72時間パワーリザーブ。ブラックDLCチタンケース(シースルーバック)、ブラックラバーバリスティックストラップ。直径43mm。5気圧防水。日本限定25本。
問い合わせ先:ソーウインド ジャパン TEL.03-5211-1791 https://www.ulysse-nardin.com/jp_jp/ ※価格は記事公開時点の税込価格です。限定モデルは完売の可能性があります。
Text/三宅裕丈
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