<取材協力>
IWCシャフハウゼン(IWC SCHAFFHAUSEN)
2023年のウオッチズ&ワンダーズで発表され、たちまち予約殺到。限定品でないのにも関わらず、入手困難モデルの筆頭となったIWCシャフハウゼンの「インヂュニア」。人々が魅せられる秘密を、改めて検証する。
ヒット記録更新中の「最も輝かしい失敗作」
IWCシャフハウゼンが初代「インヂュニア」(リファレンス666)を発表したのは、1955年のことだ。当時は戦後復興で急速に先進国の経済が成長し、国際的な移動は船舶から旅客機へと移行。半導体が発明され、徐々に宇宙開発競争が激化していた。そのような背景から、エンジニアや物理学者、医師など、強い磁場にさらされる専門職向けの腕時計を、IWCは製作したのである。そのラウンドシェイプの控えめなツールウオッチは、1930年代からの歴史を持つパイロット・ウォッチにも採用された強固な耐磁シールドと、ペラトン自動巻きシステムを備えたキャリバー82系の搭載を組み込んだ点に最大の特徴があった。その後、IWCは同じラウンドシェイプの第2世代(リファレンス866)を1967年に発表。その一方でインヂュニアを刷新するプロジェクトを進めていたのだった。
かくして1976年、IWCはジェンタデザインによる「インヂュニアSL」をバーゼルワールドで発表する。以降6年間でオリジナルモデルが製作されたのは、わずか600本弱。大成功とは言い難い結果だったが、IWCはインヂュニアの可能性を信じて開発を続け、1989年の「インヂュニア500’ 000A/m」のような複数の派生型を開発していった。

↑最初の「インヂュニア SL」が製造・販売されたのは、1976年から1983年までにわずか598本。その実績からIWCが「最も輝かしい失敗作」と称した。このエピソードをまとめたショートムービーが、公式YouTubeで視聴できる。
一時カタログから姿を消したジェンタデザインのインヂュニアだったが、2005年によりスポーティなルックスで復活(リファレンス3227)。その後、第1/第2世代の流れを汲むラウンドシェイプのモデルを経て、2023年に現行世代へと移行した。ウオッチズ&ワンダーズで発表されたステンレスティール製の3色とチタンモデル1型は、原型に忠実なフォルムと現代技術に基づく高度な構造と仕上げの融合が大好評を博し、直ちに予約が殺到。翌年まで世界中がインヂュニアの入荷を心待ちにする人々であふれたのである。

↑「インヂュニア・オートマティック 40」 Ref.IW328903 184万8000円
1976年に誕生した名作「リファンレンス1832」の流れを汲む最新世代のインヂュニアが、2023年に衝撃の再デビュー。120時間パワーリザーブを誇る次世代定番キャリバー32111を搭載。上の写真は、人気の文字盤色「アクア」。
スペック:自動巻き(Cal.32111)、毎時2万8800振動、120時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース&ブレスレット。直径40mm、厚さ10.7mm。10気圧防水。
そして2025年は、インヂュニアにフルブラックセラミックやパーペチュアルカレンダーといった、IWCが得意とする素材と機構のバリエーションが登場。さらに35mmという新たなサイズも加わった。より選ぶ楽しさの幅が広がったいまこそが、インヂュニアの魅力を再認識できる絶好の機会となっている。
↑「インヂュニア・オートマティック 42」 Ref.IW338903 308万円
伝統のプロポーションをそのままにフルブラックセラミックをまとった、直径42mmの自動巻きモデル。ベゼルとケースバック、ムーブメントの固定に薄型チタンリングを用いることで、厚みを11.5mmに抑えながら10気圧防水を実現した。
スペック:自動巻き(Cal.82110)、毎時2万8800振動、60時間パワーリザーブ。ブラックセラミックケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径42mm、厚さ11.5mm。10気圧防水。
自分好みの一本が選べる多彩な選択肢が出揃った
前述の通り、ジェンタ・デザインの「インヂュニア」は、始まりこそ順風満帆ではなかった。だが、当時は2000スイスフランで販売されていた時計が、現在ではオークションにて20倍に迫る2万ユーロほどで取引されるまでに至っている。こうした評価の高まりは、もちろん最新世代の出来栄えが秀でているからに他ならない。

↑左から、「インヂュニア・オートマティック 35」「インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41」「インヂュニア・オートマティック 40」。
2023年に発表された「インヂュニア・オートマティック40」は、これまでベゼルをねじ込むために空けられていた窪みを固定ビスに変更。リューズガードを備え、よりスポーティなルックスを強めた。厚みは10.7mmにまで抑えつつ、文字盤のグリッドパターンで時計に格別の立体感を与えることにも成功。120時間パワーリザーブを誇る次世代定番のキャリバー32111を搭載し、それを耐磁シールドで保護することで堅牢スペックも兼ね備えた。
この現代的なフォルムをそのままに、2025年には誰もが親しみやすい35mmという新サイズを発表。これにIWCが長年にわたり研鑽を積んできたセラミックと永久カレンダーというテクニカルなモデルも加えて、現代「インヂュニア」の新境地を開拓したのである。その豊かな魅力を店頭で目の当たりにすれば、きっと自分好みの一本を探さずにはいられないはずだ。

↑「インヂュニア・オートマティック 35」 Ref.IW324901 161万7000円
直径35.1mmと、現行1弾モデルから一気に約5mmもサイズダウンした小径「インヂュニア」。厚さも9.4mmにまで抑えることでケースと一体になったブレスレットのフィット感が高まり、手首の細い人でも快適に装着できる。
スペック:自動巻き(Cal.47110)、毎時2万8800振動、42時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径35mm、厚さ9.4mm。10気圧防水。

↑「インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41」 Ref.IW344903 585万2000円
“IWCの頭脳”と称されるクルト・クラウスが礎を築いた独創永久カレンダーの機構と、ジェンタデザインのインヂュニアが高次元で融合した夢のような一本。秒針をなくすなどの工夫で、特有のフォルムを保持している。
スペック:自動巻き(Cal.82600)、毎時2万8800振動、60時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径41.6mm、厚さ13.3mm。10気圧防水。

↑「インヂュニア・オートマティック 40」 Ref.IW328702 735万9000円
直径40mmの「インヂュニア」にフル18Kレッドゴールドを合わせたラグジュアリー仕様。ソリッドゴールド製アプライドインデックスが、精悍な黒文字盤と呼応し、特有の気品を醸し出している。
スペック:自動巻き(Cal.32111)、毎時2万8800振動、120時間パワーリザーブ。18Kレッドゴールドケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径40mm、厚さ10.4mm。10気圧防水。
新プログラム「IWC. Curated.」にもインヂュニア!
2025年9月からIWCが自社の修復部門にて完全整備を行ったビンテージモデルの販売プログラム「IWC. Curated.」を開始した。日本に割り当てられた3本のうち2本は「インヂュニア」で、しかもリファレンス666(写真右)、1832(写真上)という歴史的にも重要なモデル。これらはすでに成約済みで、2025年11月18日時点では「ヨットクラブ Ⅰ」(写真左)のみが販売中とのこと。購入を検討したい人は、ぜひIWC 銀座 ブティックへ足を運ぼう!
NEW!! IWC 福岡 ブティックオープン
博多天神駅に近い、天神西通りに日本初の最新コンセプトを導入した「IWC 福岡 ブティック」(住所:福岡県福岡市中央区大名1-1-45)がオープン! 2フロア構成、168平米を超える広々としたブティックで、豊富なラインナップとともにブランドの世界を心ゆくまで堪能したい。
国内ではほかに、「IWC 銀座 ブティック」「IWC 新宿 ブティック」「IWC 表参道 ブティック」「IWC 名古屋 ブティック」「IWC 大阪心斎橋 ブティック」「IWC 大阪梅田阪急 ブティック」「IWC 神戸 ブティック」を展開。そして2025年10月末には「IWC 銀座三越 ブティック」がリニューアルオープンしている。
問い合わせ先:IWCシャフハウゼン TEL.0120-05-1868 https://www.iwc.com/jp/ja/
※価格は記事公開時点の税込価格です。
Text/水藤大輔(WATCHNAVI) Photo/吉江正倫
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