<取材協力>
IWCシャフハウゼン(IWC SCHAFFHAUSEN)
エンジニア精神が息づくタイムピース。スイスの名門時計ブランド【IWCシャフハウゼン(IWC SCHAFFHAUSEN)】のコレクションは、時代を超えてそのように評価されてきた。過度な装飾を避けた流行に左右されないスタイル、視認性を第一とするシンプルかつ力強い文字盤、さらに高精度で耐久性に優れたムーブメントまで、実用性重視のプロフェッショナルなモデルを数々輩出してきた。2025年に発表されたニューモデルもこれに該当することを振り返りながら、IWCの魅力を再検証する。
スクリーンの中でもエンジニア精神を象徴するアイテムとして登場
IWCは2024年、西暦3999年まで調整不要、ムーンフェイズに限っては4500万年にたった1日の誤差という、革新的なセキュラー・パーペチュアル・カレンダー機構を備える「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」の発表で世界を席巻した。着用に現実的なケース(直径44.4 mm)にサイズを留めながら、同メカニズムのほかにペラトン自動巻きや7日間パワーリザーブといったIWCお馴染みの機能も付加された本機は、ジュネーブ・ウォッチ・グランプリ 2024で金の針賞を受賞。IWCの技術力や芸術性が改めて評価された。

↑「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」 Ref.IW505701 価格要問い合わせ
ブランドもIWCファンもその歓喜が続く中、2025年はまず、映画『F1®/エフワン』に登場する架空のF1レーシングチーム「APXGP」のスポンサーに就任することが発表された。IWCといえば、現実世界では2013年から「メルセデスAMG・ペトロナス・フォーミュラワン・チーム」の公式エンジニアリングパートナーを務めている。そのような背景に加え、本作監督であるジョセフ・コシンスキー氏(IWCの時計が登場する『トップガン マーヴェリック』でも監督)との良好な関係もあり、スクリーンにはIWCのエンジニアリングを象徴するパイロット・ウォッチやインヂュニアが複数が“出演”したほか、コラボレーションモデルはセルアウトを記録するなど、映画とともに大成功を収めた。本作は続編の噂もあり、再びIWCが参戦してくれることを期待せずにはいられない。
パイロット・ウォッチには「トップガン・ミラマー」の新作が登場
IWCのエンジニア精神が息づくタイムピースはほかにも登場している。2007年よりパートナーシップを結ぶアメリカ海軍の戦闘機兵器学校、通称「トップガン」との関係から誕生したこのコレクションは、いずれもプロの使用に耐えるハイスペックと美しいカラーリングが魅力で、2025年は新たにフレッシュなライトブルーが加わった。「トップガン・ミラマー」とネーミングされたこのライトブルーもまた、世界共通の色の標準システム「パントン」を提供するアメリカのパントン社との協力から生み出されたカラーで、そのインスピレーションは、「トップガン」のミラマー海兵隊航空基地にて教官がフライトスーツの下に着ていたというライトブルーのTシャツに由来するもの。ニュアンスのあるブルーが加わり、コレクションの幅が広がった。

↑「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ 41 トップガン・ミラマー」のケースバックは、ねじ込み式のチタン製。ここに権威あるトップガンのロゴや1000ピース限定を示すナンバーが刻印されている
シンボリックなミリタリーテイストと穏やかなライトブルーを特徴とする「トップガン・ミラマー」は、今回2モデルが登場した。ひとつ目がその名も「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ 41 トップガン・ミラマー」。「IWC トップガン・ミラマー」色のセラミックケースを基本に、同色の視認性の高い文字盤とラバーストラップを融合させた一本で、秀逸なカラーバランスだ。また、直径41.9mmの適度なケースサイズであることや、「パイロット・ウォッチ」伝統の機能と言える軟鉄製インナーケース内蔵の高耐磁性など、ユーザビリティを高めるための工夫も凝らされている。

↑「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ 41 トップガン・ミラマー」 Ref.IW389409 206万8000円/自動巻き(Cal.69380)、毎時2万8800振動、46時間パワーリザーブ。セラミックケース、ラバーストラップ。直径41.9mm、厚さ15.5mm。10気圧防水。世界限定1000本
ふたつ目が、やや小振り(直径41mm)のステンレススチールケースを用いた「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ 41」である。「 トップガン・ミラマー」の印象的なカラーで文字盤とラバーストラップを彩り、より精悍な雰囲気にまとめている。先に紹介したリミテッドモデルとの違いはほかにもあり、非限定であることや、サファイアクリスタルバック仕様のため搭載するIWC自社製造の「キャリバー 69385」を鑑賞できる。高級クロノグラフの証とされるコラムホイールを採用しており、裏からはクロノグラフを作動させることでこのパーツが回転する姿を楽しめるほか、ムーブメントのメカニズムの壮大さや美しい装飾を眺めることも可能だ。なおリミテッドモデルと共通で、IWC専用の「EasX-CHANGE®」システムを採用したラバーストラップのため、工具を用いずにストラップ交換ができる仕組みとなっている。

↑「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ 41」 Ref.IW388117 109万4500円/自動巻き(Cal.69385)、毎時2万8800振動、46時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)、ラバーストラップ。直径41mm、厚さ14.5mm。10気圧防水
IWCのエンジニア精神を語るうえで外せない「インヂュニア」が充実
2025年は「インヂュニア」も複数発表され、ラインナップはより充実したものとなった。2023年に登場した現行コレクションは、1976年発表のジェラルド・ジェンタ氏デザインによる「インヂュニアSL」を受け継いだ一体型ブレスレットを合わせたスタイルで、扱いやすい直径40mmのサイズで登場し、従来よりもシャープなデザインにまとまっている。
そして2025年、「インヂュニア」は新しいアプローチで時計界にサプライズをもたらしたと言えるだろう。新作の中で最も反響が多いと聞くのが、オールブラックがマッシブな「インヂュニア・オートマティック 42」だ。直径42mmのケースからテーパードを効かせたブレスレットまで、素材をブラックセラミックで統一したブランド史上初の試みは新鮮そのもの。セラミックパーツひとつ一つに施された仕上げも完璧である。ムーブメントを鑑賞できるサファイアクリスタルバックが、ブラックの外装に合わせてスモークカラーに仕上げられている点も見逃せない。

↑「インヂュニア・オートマティック 42」 Ref.IW338903 308万円/自動巻き(Cal.82110)、毎時2万8800振動、60時間パワーリザーブ。ブラックセラミックケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径42mm、厚さ11.5mm。10気圧防水
スポーティな「インヂュニア」にラグジュアリーなエッセンスを
ブラックセラミックの「インヂュニア」は見た目のインパクトに加え、想像を超える軽やかさに驚いたが、逆に高級時計ならではの重厚さを打ち出したのがフルレッドゴールドモデルだろう。ケースと一体型ブレスレットに煌びやかな18Kレッドゴールドを採用し、立体的なグリッドパターンをあしらったブラック文字盤にはソリッドゴールドのアプライドインデックスをレイアウト。IWCのエンジニア精神が息づく「インヂュニア」を、技術でも美意識でもさらに上のステージへと押し上げる逸品となっている。

↑「インヂュニア・オートマティック 40」 Ref.IW328702 735万9000円/自動巻き(Cal.32111)、毎時2万8800振動、120時間パワーリザーブ。18Kレッドゴールドケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径40mm、厚さ10.4mm。10気圧防水
IWCの十八番となる永久カレンダーとのミックスで新境地を開拓
IWCのシンボリックな機能のひとつに、永久カレンダーがある。同社生え抜きの時計師クルト・クラウス氏が手掛けた設計をベースとする永久カレンダーは、日付・曜日・月・ムーンフェイズ・閏年の各表示を備える複雑なメカニズムながら、リューズひとつで調整ができる優れもの。これとスマートな「インヂュニア」の組み合わせは史上初だ。そのほか、巻き上げ効率の高いペラトン自動巻き機構や約60時間パワーリザーブを備え、ケースはステンレススチール製かつ直径41.6mmという、日常使いに適した仕様も嬉しい。爽やかさと気品を兼ね備えたブルーの表情も秀逸である。

↑「インヂュニア・パーペチュアル・カレンダー 41」 Ref.IW344903 585万2000円/自動巻き(Cal.82600)、毎時2万8800振動、60時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径41.6mm、厚さ13.3mm。10気圧防水
新鮮味あふれるスモールサイズで新たなユーザー層を獲得
古くからインヂュニアを知る者であれば、2025年に最も驚いた新作は「インヂュニア・オートマティック 35」かもしれない。かつてそのビッグサイズから“ジャンボ”とも呼ばれた「インヂュニアSL」が持つ固有のスタイルを受け継ぎながら、直径35mm、厚さ9.4mmのジェンダーレスなサイズへと変換させたのが本機となる。この新たな選択肢の登場により、手首が細い人でも快適なフィット感を得られるといった好意的な反響があるほか、ステンレススチールモデル(シルバーメッキ文字盤またはブラック文字盤)と18Kレッドゴールドモデルから選べることによって新規ユーザー獲得のきっかけとなっている。

↑「インヂュニア・オートマティック 35」 Ref.IW324901 161万7000円/自動巻き(Cal.47110)、毎時2万8800振動、42時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径35mm、厚さ9.4mm。10気圧防水
〈過去から未来まで。IWCのエンジニアリングに対するチャレンジは続く〉
ここまでに紹介した「パイロット・ウォッチ」と「インヂュニア」からの意欲的なニューモデルに振り返りでも証明されるように、IWCは産声を上げた1868年の当初から、徹底したクラフツマンシップやプラグマティズム(実用主義)に則った質実剛健なプロダクト、すなわちエンジニア精神が息づくタイムピースを手掛けてきた。しかし、IWCのチャレンジはそれだけに留まらない。2025年からは国内でIWCによる認定ヴィンテージモデル販売プログラム「IWC. Curated.」をスタートさせたのだ。ポイントは以下の3つに集約される。
⚫︎厳選されたヴィンテージモデル
IWCのレガシーを象徴するアーカイブピースが対象。同社ミュージアムの専門家が、歴史や時計製造の伝統において重要な意味を持つモデルを個別に選定・調達した個体を再販する。そのため、世界中のコレクターが熱視線を送っている。
⚫︎本社が完全な修復と認定を実施
販売するヴィンテージモデルは、シャフハウゼンにあるIWC本社内に整えられた専門スキルを持つ職人が在籍する部門にて修復が行われる。この徹底した修復プロセスを経て、個々に公式認定書を発行。
⚫︎信頼と安心の保証
すべての「IWC. Curated.」ウオッチにはIWCの国際限定保証が付属する。さらに製品登録を行うことで、保証は最大8年間へと延長となる。要するに新品同様、クオリティと信頼性をIWCが保証している。
なお「IWC. Curated.」の取り扱いは、専門的な知識と経験を必要とするため厳選された一部のIWCブティックのみ(2025年末時点では、スイス・イギリス・ドバイ・日本=IWC 銀座ブティック)となっている。また、顧客が探している特定のヴィンテージモデルを、IWCの専門家が調達を支援するソーシングサービスも実施していく。IWCのエンジニアリングがいかに優れているかを実感できる、注目のプロジェクトなのだ。
〈「VAST」とのコラボレーションはIWCに無限の可能性をもたらす〉
未来への視点も、IWCは忘れていない。2025年末、世界初の商業宇宙ステーション「Haven-1」の設計と建設を進めているアメリカの宇宙居住技術企業「VAST(ヴァスト)」と、IWCは宇宙開発における戦略的な技術提携を結び、公式タイムキーパーの就任を発表した。「VAST」は、人類の低軌道における長期的な存在感を拡大し、宇宙での新たな科学的進歩の時代を切り開くという目標を掲げている。IWCはこのパートナーシップを通し、宇宙という過酷な環境下において時計製造の限界にチャレンジしていくこととなる。
具体的には、長時間の宇宙飛行に耐えうる機械式時計の研究・開発を加速させるべく、VASTのエンジニアはIWCの試作モデルに対し、打ち上げ時の振動環境のシミュレーション試験や「Haven-1」との材料の適合性評価といった厳格なテストを実施している。よってIWCの時計の信頼性が宇宙環境で証明されることとなり、将来的には宇宙飛行士が着用するオフィシャルウオッチの製作も担うこととなるだろう。IWCはすでに、「Inspiration4」や「Polaris Dawn」といった民間宇宙飛行ミッションに携わり、この分野のノウハウを蓄積している。「VAST」との提携はIWCの技術をさらに深化させ、エンジニア精神が息づくタイムピースは地球上だけでなく、悠久の宇宙へと羽ばたくこととなる。まずは「VAST」とのスペシャルなコラボレーションモデルの登場を期待しよう! 今後もIWCの動向から目が離せない!!
九州初の路面店となる「IWC 福岡ブティック」が誕生
IWCは2025年10月4日、「IWC 福岡ブティック」をオープンした。九州最大の都市・福岡の中心地に誕生したこの新ブティックは、総面積168平方メートルを超える広々とした2フロア構成となっており、国内ブティックでは初めて導入されたブラック&ホワイトを基調とする最新コンセプトを採用している。そのモノクロームのコントラストに、ベージュや洗練されたブルーのアクセントを効果的に組み合わせ、モダンかつスタイリッシュな内観が整えられており、IWCが誇る質実剛健なエンジニアリングとラグジュアリーな世界観を表現。ゆっくりと寛ぎながら時計選びに没頭できる。なお、近年は福岡の主に天神エリアに名立たる高級時計ブランドのブティック出店が続いており、「IWC 福岡ブティック」もこれに続く新スポットとして、時計好きならば注目せずにはいられない。

↑1階には、「インヂュニア」をはじめ、「パイロット・ウォッチ」「ポルトギーゼ」「ポートフィノ」など、長年愛されてきた名作から革新的な最新モデルまで代表的なコレクションを展開。ソファやバーカウンターを設置。2階にはもうひとつのラウンジと、ワークショップやイベントを実施できるスペースが設けられている
【IWC 福岡ブティック】
住所:福岡県大名1-1-45
TEL:0120-801-868
営業時間:11:00〜19:30
定休日:不定休
問い合わせ先:IWCシャフハウゼン TEL.0120-05-1868 https://www.iwc.com/jp-ja
※価格は記事公開時点の税込価格です。限定モデルは完売の可能性があります。
Text/山口祐也(WATCHNAVI編集部)
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