GMTの次はクロノグラフで“プライベート・ラグジュアリー”を表現した「トンダ PF クロノグラフ ミステリューズ」【WATCHES & WONDERS GENEVE 2026新作】

世界最大の新作時計見本市「WATCHES & WONDERS GENEVE」は、スイス・ジュネーブで2026年4月14日〜20日に開催。ここで発表された新作から、注目すべき腕時計を取り上げていく。本稿では、高級機械式時計のミニマリズムの先駆者となったパルミジャーニ・フルリエの話題作を、WATCHNAVIの視点でチェックする。

必要な時に2つめの時分針が出現する新発想のクロノグラフ

パルミジャーニ・フルリエ新作「トンダ PF クロノグラフ ミステリューズ」Ref.PFC908-1020001-100182/601万7000円 自動巻き(キャリバーPF053)、毎時2万8800振動、60時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット。プラチナベゼル。直径40mm、厚さ13mm。100m防水。

パルミジャーニ・フルリエが2021年に発表したヒット作「トンダ PF」コレクションは、バーリーコーンギヨシェを施した文字盤に、控えめなサイズのアプライドインデックスを持つ。これらが、ブランドのアイデンティティであるデルタ針と新たなシンボルとなるPFロゴ、ブレス一体型のケースフォルムなどの特徴的なデザインと融合。結果、ミニマルでありながらひと目でそれとわかる強い個性を両立させている。このモデルはすぐに発展型が登場するのだが、その方向性がまた「トンダ PF」のキャラクターをより強固なものにしたのだった。

パルミジャーニ・フルリエが目指した「トンダ PF」は、チャイニーズカレンダーのような特別モデルでない限り、通常使用時に2針、ないしは3針フェイスへの強いこだわりだった。そうして開発されたのが、「ラトラパンテ」のメカニズムを応用したコンプリケーション。2つの分針を持つ「トンダ PF ミニッツ ラトラパンテ」や、その逆に2つの時針を持つ「トンダ PF GMT ラトラパンテ」はいずれも、それが必要なときだけ出現させるギミックにより世界を驚かせたモデルである。そして迎えた2026年にメゾンが披露したのは、すでにコレクションにある人気機構「クロノグラフ」の3針化だった。

新作は7時30分位置にプッシュボタンを装備。ラグと統一されたフォルムは面積が広く押し心地が良い。緻密なローレット刻みが施されたベゼルにはプラチナを採用。

「トンダ PF クロノグラフ ミステリューズ」の名が与えられた最新作は、通常は3針ウオッチとして機能する。だが、7時30分の位置にあるプッシャーを押すと瞬時にロジウムメッキされたシルバートーンの時・分・秒の3つの針が12時位置に帰零し、クロノグラフ計測をスタート。この間、現在時刻は下層に隠れていたローズゴールドの時・分針によって示され続けるので、オーナーが時間を見失うことはない。なお、このモデルはシングルプッシュ式になっており、2プッシュ目で計測がストップ。3プッシュ目でリセットとなる。このリセット時の動きがとてもユニークで、本来のクロノグラフのように12時位置に戻るのではなく、積算秒針はストップ時の位置から運針を継続。シルバートーンのクロノグラフ時・分針は、再びゴールドトーンの針を覆う位置へと戻るのである。

左がクロノグラフ計測時、右がリセットした状態。中央に5本の軸を持つ腕時計は、それだけで内部機構の複雑さを物語る。

この極めてユニークな発想を実現するのは、ひとつの垂直クラッチとふたつの水平クラッチが組み込まれた、新型キャリバーPF053。自動巻き一体型クロノグラフをゼロベースで開発した専用設計になっており、クロノグラフの制御にはコラムホイールを採用している。パーツ点数は362個、振動数は毎時2万8800振動で、60時間パワーリザーブを確保し、さらにトリプル・クラッチまで有しながら厚みを6.8mmにまで抑えた点も賞賛に値する。もちろんセンターローターはブランドの流儀にならい22Kローズゴールド製である。

キャリバーPF053。写真の右下にプッシュボタンがあり、操作するとコラムホイールが連動。各種レバーが連動してクロノグラフをスタート→ストップ→リセットの順に切り替わる。
多くのレバーによってトリプル・クラッチを制御。写真はふたつの水平クラッチのメカニズムを展開しているイメージ図。振動ピニオンやハートカムが確認できる。

まさしくクロノグラフを再定義するユニークな本機の文字盤は、職人の手作業によるバーリーコーンギヨシェが施されたミネラルブルー。それがクロノグラフとは誰も思えないほどのシンプルさによって文字盤全体がキラキラと輝く様子は、あたかも光を浴びた水面のさざ波を連想させる。そこからプッシュ操作によってローズゴールドの針が出現すると、時計の秘めた壮大なコンプリケーションが一気に解放され、テクニカルな表情へと一変。こうした操作を思うがままに楽しめるのはもちろんオーナーだけであり、「トンダ PF」コレクションに与えられた“プライベート・ラグジュアリー”のビジョンなのである。

実際に着用した状態。着用者はパルミジャーニ・フルリエCEOのグイド・テレーニ氏だ。

創業30周年を迎え、極めて野心的なクロノグラフを作り出したパルミジャーニ・フルリエ。ユニークなクロノグラフが豊作となっている2026年のWATCHES & WONDERSにおいて、世界の時計好きたちはどのような評価をするのだろうか。少なくとも筆者は、時計の持つコンセプトに忠実なクロノグラフを完成させた点において、「トンダ PF クロノグラフ ミステリューズ」を高く評価したい。

問い合わせ先:パルミジャーニ・フルリエ pfd.japan@parmigiani.com https://www.parmigiani.com/jp/ ※価格は記事公開時点の税込価格です。限定モデルは完売の可能性があります。

Text / DAISUKE SUITO (WATCHNAVI)

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