日本発の独立系ウオッチブランド【大塚ローテック(OTSUKA LOTEC)】が手がける機械式腕時計「6号」および「5号改」が、スイス・ラ・ショー=ド=フォンに位置する国際時計博物館(Musée International d’Horlogerie、以下MIH)の永久展示品に選定された。日本の独立系ウオッチブランドから生まれた腕時計が、世界最大級の時計専門博物館の常設コレクションとして収蔵されることは異例であり、その意義は極めて大きい。
世界最大級の時計専門博物館となるMIH

スイス・ラ・ショー=ド=フォンに位置するMIHは、5000点を超える収蔵品を擁する世界最大級の時計専門博物館として知られる。古代の計時機構から現代の機械式腕時計に至るまで、時計の技術史と造形史を網羅的に紹介する同館は、スイス時計産業の中枢に位置する存在だ。そのため、同館の常設展示加えられることは、その時計が文化的・歴史的価値を認められた証といえる。今回、このMIHの永久展示品として選定されたのが、日本の独立系ウオッチブランド、大塚ローテックが製作する機械式腕時計「6号」と「5号改」である。大塚ローテックは、現代の名工とも称される片山次朗氏が2012年に創業したブランドで、設計から製作に至るまでを自社で一貫して手がけている。片山氏はカーデザイナーやプロダクトデザイナーとしての経歴を持ち、2008年に時計製作を開始。独自の表示機構と構造設計を追求したタイムピースを作り続け、2012年より本格的な販売を行ってきた。
GPHG受賞の快挙を成し遂げたレトログラード機構の傑作「6号」
今回、MIHの永久展示品として選ばれた2モデルはいずれも、大塚ローテックの設計思想を端的に示す存在である。
「6号」は2015年に発表されたモデルで、扇形に展開するアナログメーターのような表示を最大の特徴とする。一般的な文字盤構成とは異なり、レトログラード式の時分針を採用することで、限られた表示領域の中に時間情報を効率的に集約。中央には秒表示ディスク、右側には日付表示を配置し、独創的なレイアウトでありながら高い実用性も確保している。直径42.6mmのステンレススチール製ケースには、約40時間のパワーリザーブを誇る自動巻きムーブメントを搭載する。この「6号」は2024年、ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)において「チャレンジ部門」のグランプリを受賞。同部門は3000スイスフラン以下の価格帯を対象とし、設計の独自性と完成度が厳しく問われるカテゴリーであり、本機はその条件下で高く評価された。なお、MIHに展示される個体は、2024年以降に製造された現行仕様となる。
国産初のサテライトアワーウオッチ「5号改」

一方の「5号改」は、2025年に発表された国産初のサテライトアワー腕時計である。回転する「時」表示ディスクと、右側に配置された分表示スケールの重なりによって現在時刻を示す構造を採用し、下部には秒表示用のディスクを装備。複雑な機構でありながら表示の読み取りは直感的で、設計段階から日常での使用を想定した構成になってる。ケースはステンレススチール製で直径40.5mm、厚さ7.6mmに抑えられており、その心臓部には自社製モジュールを備えるMIYOTA製ムーブメントを搭載。この「5号改」は2025年のGPHGにおいて、1万スイスフラン以下の価格帯を対象とし、実用機としての完成度が重視されるカテゴリー「プティエギーユ部門」にノミネートされた。高度な表示機構を備えながら、この枠組みの中で高い完成度を実現させた点は、ブランドの技術的成熟を物語るものといえる。
日本の時計製作が世界の歴史に刻まれる瞬間
日本の個人工房から生まれた二つの機械式腕時計が、MIHの永久展示品として収蔵されたという事実は、大塚ローテックの時計製作が国際的な評価を受けたことを示している。独自の表示機構と構造設計、そして一貫した製作体制によって生み出されたこれらの作品は、現代日本の機械式時計を代表する存在として、多くの愛好家やコレクターたちによって永く語り継がれていくはずだ。
問い合わせ先:大塚ローテック https://otsuka-lotec.com/ ※価格は記事公開時点の税込価格です。
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