パテック フィリップが1000本限定/309万円(税抜)のステンレススチールウオッチを発表

毎年スイスのバーゼルで開かれていたバーゼルワールドの開催が、2020年は諸事情によりキャンセルになった。これを受けて、同イベントのメインブランドであるパテック フィリップが「今年は新作を発表しない」という噂が関係者の間でささやかれてもいた。だが、そうした声をよそに6月18日、公式サイト及びSNSでパテック フィリップは新たなタイムピースを発表。1000本限定/309万円(税抜)で作られた「カラトラバ Ref.6007」と、新設されたマニュファクチュールの新工場の全貌を詳解する。

歴史の新たな1ページを予感させるリミテッドモデル

パテック フィリップは、時計の創作、開発、製作を行う新工場PP6の着工と完成へのトリビュートとなる独創的なカラトラバ・モデルを特別製作し、6月18日に全世界へ披露した。こうした限定タイムピースの発表自体は、1997年にプラン・レ・ワットの新しいマニュファクチュール落成時の「パゴダ5500モデル」「ミニット・リピーター5029モデル」に前例のあるように、決して特別なことではない。パテック フィリップは、その長い歴史のなかで重要な出来事があるたび、限定製作の記念タイムピースを発表するという伝統がある。

とはいえ、時計業界では「パテック フィリップが2020年に新作を発表しない」という説が定着しつつあったいま、この新作発表を予想できた人は果たしてどれほどいただろうか。しかも、披露されたタイムピースはステンレススチール製のカラトラバ、である。

パテック フィリップ「カラトラバ 6007A」Ref.6007A-001 339万9000円 
自動巻き(Cal.324 S C)、毎時2万8800振動、最大45時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)。直径40mm、厚さ9.07mm。カーフスキン・バンド。世界限定1000本

パテック フィリップのカラトラバといえば、世界的に知られるドレスウオッチの最高峰。ケース素材も貴金属で作られるのが本流だ。それが、特別製作品とはいえ実用重視のステンレススチールの採用に至った経緯にあるのは、やはり特別感だろう。2019年にウィークリーカレンダーモデルRef.5212Aが出ているとはいえ、パテック フィリップのドレスウオッチのなかでステンレススチールを使ったモデルはいまなお極めて珍しいのだから。

さて、新しいカラトラバ6007A-001の外装は、洗練されたステンレススチール仕様のケースと膨らみを帯びた幅広いベゼルを特徴とする。文字盤は、三角マーカーのついたシュマン・ド・フェール(レール)型アワーサークル、カラトラバ6006モデル(2017年以降、現行コレクション)のオープンワークを想起させるバトン型時分針、植字アラビア数字などで構成。中央部に見られるカーボン織様のテクスチャーは先進性を感じさせ、新工場落成で迎えるであろうブランドの新時代をも予感させる。

搭載するムーブメントは、3時位置に日付表示窓を備えた自動巻ムーブメントCal.324 S C。現在、多くのコレクションのセンターセコンドモデルに搭載されている自動巻きムーブメントだ。この名機を見通すことのできるサファイアクリスタル・バックには、カラトラバ十字とともに[New Manufacture 2019]の文字も記されている。ちなみに2019年とあるのは、新工場PP6に最初の部門が移転した年だからだという。

 

マニュファクチュール新工場に与えられた役割

プラン・レ・ワットのパテック フィリップ新工場。建築設計はフリスク・マリニャック・ピドゥー設計事務所(ジュネーブ)。室内設計は、(計画・施工) フライ& ステファニ設計事務所(トネ)。 ジュネーブ州《高エネルギー効率(HPE)》規格準拠の省エネルギー建物。スイスにおける建物のエネルギー効率レベルMinergie-P (Minergie より上位)認定を申請中とのこと

新工場は、2015年にジュネーブ市郊外プラン・レ・ワットにて着工され、2020年初頭に落成。10フロア、全長約200mに及ぶ規模で、今後20〜30年にわたるマニュファクチュール パテック フィリップの成長を支える次世代の拠点になるという。

それまでのパテック フィリップは、1996年に建設した本社工房を拠点としながらも、2003年に外装関係を近隣のペルリーに移転。2009年にも既存のオフィス・ビルを工房に転換し、ムーブメント構成部品をそこで製造するなど、ブランドが発展するにつれて事業活動も分散していた。これらをひとつ屋根の下に統合することが、新工場の大きな狙いとなっているという。

こうした計画は世界が渇望しているブランドの生産量の増加を期待させるが、一方のパテック フィリップは現在の年間約6万2000個の生産量から著しく増加させるつもりはないという。ここ数年、パテック フィリップの時計は実用性をさらに高めるための工夫が様々に凝らされてきた。その結果、キャリバーの種類は増加し、それぞれの平均部品数も増加傾向にある。こうした現在と未来の増大するチャレンジに対応するためには、より効率的で合理的な生産リソースを確保する必要があったわけだ。

なお、10フロアある新工場には時計製造だけに留まらない設備があるという。フロアの内訳は、4フロアの地下がすべての機械技術設備と合計635台収容の駐車場。1〜2階はムーブメントの構成部品の製造と手仕上げに特化、3階は外装部品の機械加工から手仕上げ、組み立て、ジェム・セッティングが主体となるほかアンティークピースのレストレーションや、カスタマーサービスが必要とするスペアパーツの在庫を製造する役割も担っているという。4階はパテック  フィリップ・アドバンストリサーチ、高級時計製作部門、プロトタイプ関連の新ユニットなど、先進的なタイムピース製造に不可欠な部門が配置されているとのこと。5階はエングレービングやエナメル、ギヨシェなどのハンドクラフトのアトリエのほか、時計師や国際セールス・ネットワークのスタッフが研修を行うトレーニング・ルームも備えられているそうだ。6階は、880席の最上階レストランと4つのVIPラウンジがあるという。

 

特別モデルと新工場が象徴するパテック フィリップの新時代。スイス時計界の最高峰の威光は、その存在感をさらに増していくに違いない。

問い合わせ先: パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター TEL 03−3255−8109
http://www.patek.com

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