どれだけ薄くなるのか!? ブルガリの世界最薄ウオッチ6作目は自動巻きのトゥールビヨンクロノグラフ

2014年にオクト フィニッシモ トゥールビヨンで初の世界最薄記録を樹立したブルガリは、以降ほぼ毎年のように超薄型ウオッチのワールドレコードを打ち立ててきた。そして、その第6弾となるのが、今まさにジュネーブで行われている「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ」で披露された「オクト フィニッシモ トゥールビヨン クロノグラフ スケルトン オートマティック」だ。世界屈指の総合ラグジュアリーブランドたるブルガリが、ウオッチメイキングの分野で尽くした技術力の結晶を詳しく見ていこう。

 

7.40mm厚のケース内に収められた超複雑機構

もはや腕時計に留まらないアイコニックコレクションとなった「オクト 」。そのタイムピースにおける最大の特徴は、なんといっても八角形と真円が融合した外装と、それを際立たせるために作り込まれた多面ケースだ。

このケースだけ見ても建築的な様式美を感じさせるが、ブルガリはさらに高度な技術力を要するケースデザインでの薄型ウオッチの制作に挑んだ。そして完成したのが、2014年の「オクト フィニッシモ トゥールビヨン」である。実はこの年にブルガリは、手巻きの薄型ウオッチ「オクト  フィニッシモ 」も発表したのだが、それの厚さは5.15mm。対してトゥールビヨン搭載機は5mmと、なぜか複雑機構を搭載した方が薄いという説明し難いパラドックスもあったが、これは超薄型トゥールビヨン開発の過程で作られた副産物的な定番アイテムといえるだろう。

結果、2014年の世界最薄記録の樹立が嚆矢となり約1年の充電期間を経た2016年の「オクト フィニッシモ ミニッツリピーター」、2017年の「オクト フィニッシモ オートマティック」、2018年の「オクト フィニッシモ トゥールビヨン オートマティック」、2019年の「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT オートマティック」と、世界最薄ウオッチを毎年発表。新たな薄型記録を打ち立ててきた。その優秀性、影響力は時計界の権威ある賞「ジュネーブ ウオッチグランプリ」における複数回の受賞がなによりも物語っている。

さて、本題の2020年8月発表作「オクト フィニッシモ トゥールビヨン クロノグラフ スケルトン オートマティック」である。これまでと同じくサンドブラスト加工によって仕上げられた絶妙グレーのチタンケースは、キャリバー外縁を錘が回転することでメインスプリングが巻き上がる「ペリフェラルローター」を採用。今作に関してはトゥールビヨンはブリッジに支えられているが、これが12時側のメインスプリングと対をなすデザインになっており、これだけでも見応えがある。

と、もちろん自動巻きとトゥールビヨンの組み合わせは2018年にブルガリがキャリバー厚にして1.95mm、ケース厚でも3.95mmという離れ技で世界最薄記録を達成済み。これにクロノグラフを搭載したところが、本作の最大のポイントとなる。この時計のプッシュボタンはリューズ上下に2つあるが、下は2018年作と同じくリューズのファンクションセレクターになっており、時間調整とメインスプリングの巻き上げをボタンによって切り替える構造となっている(それゆえリューズは押し引きのポジションがなく、操作は回転のみ)。つまり、クロノグラフはシングルプッシュとなっているわけだ。薄さを極めるためには、歯車をかわしながらいくつもの可動レバーを配置する従来型の機構を踏襲していては成り立たない。そこでブルガリが考案したのが、超薄型でありながらダイナミックに動作する大型スライドレバーである。

裏に回らなければ見ることのできないその動きは、スタートさせるとトゥールビヨンの装置と同軸上にあるパーツの片足がコラムホイールの隙間に落ち、そのズレがもう片足にセットされたスライドギア、あるいは振動ピニオンを動かしクロノグラフ秒針のギアへと動力を伝達させる。同時に、大型スライドレバーは引き金を引いたような状態になり、リセット用のハートカムを開放。クロノグラフの計測がスタート。もう一度ボタンを押すと動力伝達が切り離されて計測はストップ、さらにワンプッシュで大型レバーが元の位置に戻ると同時にハートカムを叩いて秒と30分の積算針を0位置にリセットするものと思われる。

一番左がリセット状態。ボタンを押すと中央のポジションに大型スライドレバーが移動。もう一度ボタンを押すと大型レバーはそのままで動力伝達が切り離され、計測は停止。さらにもう一度ボタンを押すと大型レバーも戻り計測がリセットされる

ペリフェラルローターにファンクションセレクトボタンを備えた2018年発表の「オクト フィニッシモ トゥールビヨン オートマティック」に輪列構造は近い。もちろんそれ自体も2014年の1作目がベースになっているのは間違いない。ではなぜクロノグラフを追加搭載できたのか、そのトリックはトゥールビヨンにありそうだ。文字盤側からは確かにブリッジが見えるのだが、シースルーバックから観察してみるとトゥールビヨンのキャリッジを支えるものがないことに気づくだろう。

さらに驚くべきは、最新作の左下に残された余白。これは、あらゆる機能を盛り込みながらもさらなる合理設計を推進している証拠といえる。基本なくして応用なし、とはいえこの6年で起こった目覚ましい技術革新を、この余白から感じ取ることができるわけだ。加えて、世界中の時計愛好家を魅了させるのに十分すぎるほど革新的な、クロノグラフ用の大型スライドレバーのメカニズム。「オクト フィニッシモ トゥールビヨン クロノグラフ スケルトン オートマティック」には、世界のトップブランドであるブルガリがウオッチメイキングの分野で持てる最新技術のすべてが詰まっているといっても過言ではない。

ブルガリ「オクト フィニッシモ トゥールビヨン クロノグラフ スケルトン オートマティック」Ref.103295 1742万4000円(予価)
自動巻き(Cal.BVL388)、毎時2万1600振動、52時間パワーリザーブ。グレード5チタンケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径42mm(厚さ7.40mm)。30m防水。世界限定50本。10月発売予定
TAG

人気のタグ