19世紀に活躍した天才時計師、ハインリッヒ・モーザーの哲学や情熱を受け継ぐブランド、「H.モーザー(H.MOSER & CIE.)」は、独自の美意識を反映したオリジナリティの高い腕時計を輩出している。2021年も、愛好家の心に響くタイムピースをすでに2モデル発表している。
“ファイナルエディション”に相応しい完成度
某スマートウオッチの登場は時計界にも影響を及ぼし、新しい価値観を生むきっかけにもなった。そのアンチテーゼとしてH.モーザーが世に送り出した「スイス・アルプ・ウォッチ」は、あえてお馴染みのスクエアフォルムを纏い、2016年から継続してリリースされ、コレクターズモデルとして支持を得てきた。今回その最終仕様にあたる「スイス・アルプ・ウォッチ ファイナル アップグレード」が公開されたのだ。
ダイアルには、可視光の最大99.965%を吸収する黒素材=ベンタブラック®︎を採用。カーボンナノチューブから構成されるこの特殊なマテリアルにいち早く着目したのもH.モーザーで、その技術力を持ってして本機では個性的な“遊び”を与えている。それがインデックスもロゴもない漆黒の文字盤に浮かぶスモールセコンドで、まるでスマートフォンやパソコンのロード中に出現するインジケーターを想起させるもの。某スマートウオッチを見ているかのような“演出”に、惚れ込んでしまう時計好きも多いことだろう。
同コレクションはこれまでにトゥールビヨンやミニッツリピーターを搭載するハイエンド機もラインナップしてきたが、いずれも生産数がわずかのレアピースだった。アイデアの一本である本機もわずか50本という希少性のため、争奪戦が予想される。
挑戦的なまでのコンセプトを掲げ、遂に完結を見た「スイス・アルプ・ウォッチ」。その有終の美を飾るマスターピースは、スイスウオッチの伝統的な製造技法と腕時計の本質を突く機能美、そして一流のユーモアに彩られている。
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