スイスウオッチブランド【オリス】が新開発した自社ムーブメントを搭載する高性能ダイバーズが続々デビュー

2020年10月、スイスの機械式時計ブランド「オリス(ORIS)」が新しい自社製ムーブメント、「キャリバー400」を公開した。その第一印象は、実用性に重点を置いた作りと頑丈そうな外観である。もちろん性能についても“折り紙付き”だ。そんな最注目ムーブメントの特徴を紹介しながら、これを搭載する3作のダイバーズウオッチについて解説する。

 

キャリバー400搭載モデル「アクイスデイト キャリバー400」

オリス「アクイスデイト キャリバー400」Ref.400 7763 4135-07 8 24 09PEB 37万4000円/自動巻き(自社製Cal.400)、毎時2万8800振動、120時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径43.5mm。30気圧防水

 

オリス自社製の次世代ムーブメント「キャリバー400」が初めて搭載された、ブルーグラデーションの美しいダイアルとブルーのセラミックトップベゼルを備えるダイバーズウオッチ。30気圧防水ながらケースバックがシースルーになっており、精緻なメカニズムを鑑賞できる。外装・デザイン面も抜かりなく、ケース&ブレスレットの入念な仕上げ、両面ドームシェイプのサファイア風防の設置、強力な発光性のあるスーパールミノバBG W9の採用など、同社随一のパフォーマンスを誇る。オリジナルのストラップチェンジシステムも秀逸だ。ラバーストラップ仕様(36万3000円)も同時にリリース。

 

開発に5年の歳月をかけた「キャリバー400」の実力と先進性

創業110周年を迎えた2014年、オリスは35年ぶりとなる自社ムーブメント「キャリバー110」を発表した。こちらは古典的な手巻き式ながら、現在求められているパワーリザーブの強化(フル巻き上げで10日間駆動)を実現する高性能仕様となっている。その後、GMTや多機能カレンダーの追加版、さらにはスケルトンタイプの派生型も開発されるなど、「キャリバー110」系の搭載モデルは人気上々である。

そもそもであるが、オリスは創業当初からムーブメントを手掛けるマニュファクチュールブランドだった背景があるうえ、1970年代にスイス時計界を震撼たらしめたクォーツショック時においても、機械式時計にこだわりを持って作り続けた自負がある。常にユーザー目線からの製品コンセプトとスイスでも指折りの技術を有するオリスだからこそ、「キャリバー110」の開発に10年がかけられ、確実に世に求められるムーブメントに仕上げることができたわけだ。そんな妥協なき姿勢が、今回の新自社ムーブメント「キャリバー400」を生む源泉になったに違いなく、実際に下記のようなユーザビリティをもたらすに至っている。

① 10年間のオーバーホール推奨期間と保証

機械式時計の購入後、ユーザーを悩ます問題が故障と定期メンテナンスである。いずれも費用がかさむうえに、修理中はその時計を着けられない。この負担を少しでも和らげようと、「キャリバー400」搭載コレクションのオーバーホールは10年毎が公式推奨されている。一般的には3~5年毎のため、長期使用に耐える設計で壊れにくいという、オリスの自信の表れともいえる。とくに新採用の「スライドベアリング」が故障の低減に“貢献”している。なお、MyOrisへの登録によって10年保証が付与されるのだ。

 

② ツインバレルによる5日間パワーリザーブ

手巻きの自社ムーブメント「キャリバー110」は、10日間ものパワーリザーブを香箱(ゼンマイを格納)1個、いわゆるシングルバレルで実現している。この開発で得た経験を生かしながら、自動巻きの「キャリバー400」はエネルギー伝達の効率を高めるために発明した特殊な歯形状のギアを採用し、ツインバレルとしている。このロングパワーリザーブの確保に繋がる巻き上げの効率化においても、「スライドベアリング」は“貢献”していると予想される。

 

③ クロノメーターを超える高精度を実現

「アクイスデイト キャリバー400」の文字盤を見てもわかるが、実のところ「キャリバー400」はCOSC(スイスクロノメーター検定協会)による公的精度テストを受けていない。それは独自に厳格なチェックを実施しているためで、公式発表で日差精度-3~+5秒以内(クロノメーターは日差-4~+6秒以内と規定)としており、シビアに精度を追い込んでいる。この実現に深く“貢献”しているのが、調速機や脱進機などの精密さだ。また緩急調整はフリースプラングではなく、テンプ受けに設置する「エタクロン」型を採用。広く使われている緩急針方式ではあるものの、より細かな設定ができる仕様になっている。

 

④ 耐磁スペックの大幅なアップに成功

シリコン製ヒゲゼンマイは磁気に強い新時代のパーツとして、今や様々なブランドが採用している。しかし「キャリバー400」はヒゲゼンマイのシリコン化ではなく、脱進機(ガンギ車やアンクルなどから構成)をシリコン製とし、ハイレベルな耐磁性を獲得している。写真で青く見えるのがガンギ車で、紫っぽく見えるのがアンクルだ。また、シリコンは決まった方向からの力に対して優れた耐久性を誇り、摩耗しにくい特性からオイルフリーとなり、①の10年毎のオーバーホール推奨にも“貢献”している。そして同キャリバーは、脱進機以外の部位30個以上にも耐磁性パーツが使われていることも特筆すべき点である。

 

なお、このマニュファクチュールムーブメント「キャリバー400」の“カギ”といえる自動巻き上げの機構に投入された「スライドベアリング」については、後日公開の記事で解説したい。

 

キャリバー401搭載モデル「カール・ブラシア キャリバー401 リミテッド エディション」

オリス「カール・ブラシア キャリバー401 リミテッド エディション」Ref.401 7764 3185-Set 49万5000円/自動巻き(自社製Cal.401)、毎時2万8800振動、120時間パワーリザーブ。マルチピースブロンズケース、エリカ社製テキスタイルストラップ。直径40mm。10気圧防水。世界限定2000本

 

センターセコンドの中3針式である「キャリバー400」を、6時位置スモールセコンドタイプへと変更した「キャリバー401」の初搭載モデル。ミッション中の事故による左足下部切断や時代を背景にした人種差別などの苦難を乗り越え、1970年にアフリカ系アメリカ人として初めてUSネイビーマスターダイバーとなったカール・ブラシアに捧げるリミテッドエディションの第3弾だ。これまでに発売されたカール・ブラシア財団とのコラボレーションモデルは完売を記録するほどの人気で、本機も日本入荷分の在庫は残りわずか。ムーブメントスペックは「キャリバー400」と同等で、MyOrisへの登録で10年保証が付与される。

 

キャリバー400搭載モデル「アクイスプロデイト キャリバー400」

オリス「アクイスプロデイト キャリバー400」Ref.400 7767 7754-07 426 64BTEB 53万9000円/自動巻き(自社製Cal.400)、毎時2万8800振動、120時間パワーリザーブ。マルチピースチタンケース(ブラックPVD加工)、ラバーストラップ。直径49.5mm。1000m防水

 

「ウォッチ&ワンダー ジュネーブ2021」にて発表された最新作で、屈強なマルチピースチタンケースによる高気密性、特殊な潜水技術を身につけたダイバーが行える飽和潜水に対応するヘリウムガス排出バルブ、エクステンション機能付きバックルのラバーストラップなど、備えるすべてがプロフェッショナル仕様のタフダイバーズ。逆回転防止ベゼルのトップリングは硬質なセラミックでできており、そのミニッツスケールの機能はセット後にロックできる構造(オリス特許取得のローテーションセーフティシステム)によって、誤って回転してしまうことを防ぐ。ウエーブパターンをあしらった文字盤やPVDケースのブラックと、ベゼルインサートのイエロー、各所に配されたホワイトの絶妙なセンスでモダンなデザインに仕上げられている。

 

<オリス フラッグシップショップ>

オリス銀座ブティック
Tel:03-6228-6866
住所:東京都中央区銀座4-3-14 和光オリスビル
営業:11:00~19:00
定休日:不定休

https://www.oris.ch/jp

 

※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、休業日や営業時間の変更、一時休業などを行っている可能性があります。

 

Text/WATCHNAVI編集部

TAG

人気のタグ