コロナ禍で変化するニーズを意識した開発コンセプト
――企画・開発者として、完成度というか、満足度はいかかですか?
(佐藤さん)「すごく満足度がありますね。毎回テーマを設けてやるんですけれども、今回は特に、原点回帰じゃないですが、このモデルは輝きのあるオシアナスブルーが入っているだけで個性的だと思うんですが、行き過ぎないちょうどいい個性にしたいというのが企画的にありましたね」
(鈴木さん)「実際、切子を入れた華やかな商品で、いいものはあるんですが、逆に身に着けにくかったりする場合もあるじゃないですか。着けやすく、かつ、こだわりを感じられるバランスが難しくて。着けやすく、程よく主張してくれるような、結構いいところに落ち着いたかなと思います」
(佐藤さん)「今回、光の変化を表現するにあたり、広がりを見せるカットの開発と合わせて、切子を指で触れるように表から入れられないか、ということも試しました。そのサンプルにも蒸着をかけて、どういうふうに見えるかというところまで研究しました。ただ、その試作では、伝統工芸色が強すぎるような印象があったんです。企画意図としては、着けている人の時計を見ても切子感がそんなに強くない感じでありながら、よく見ると、一本一本の切子からジャパンクラフツマンシップを感じてもらえて、誰かから「その時計何ですか?」って言われたときに語れるようなものにしたかった。しっかり普段使いして頂けて、主張できるようなものにしたいという思いがありましたね」
(鈴木さん)「堀口氏と話をしている中で、今までは伝統工芸・切子を主体としたデザインで考えてきたんですが、そういう方向ではなく、オシアナスを主体として、モダンなオシアナスデザインの中に切子が入っている、という考え方で進めてきました。堀口氏も、あくまでもオシアナスのひとつのシリーズのデザインとして考えてくださって。切子を中心に据えると、伝統的な型を意識せざるをえないんですが、今回の切子モデルは切子の型を変えないとできないようなものですから。伝統工芸の型にはまらない展開性が見出せたかなと思っています」
――今後、さらなる切子モデルの展望については、いかがですか?
(佐藤さん)「とにかく毎回出し切ってますので(笑)。いろいろと考えているところはあるんですが、まだお話しできる段階ではないですね。切子だけではなく、オシアナスブルーやサファイアガラスの使い方や表現も、まだまだ可能性はあると思っていますので」
――どんなユーザーに、どういうシーンで着けてもらいたいでしょうか?
(佐藤さん)「オシアナスを実際に買われている層は、30代から50代のビジネスパーソンというふうにデータが出ているんですね。そんな中でも、カシオ製品が好きだったり、スポーツが趣味で、アクティブなマインドの方だったり。オシャレにも気を使っていて、気持ちが若々しいユーザーという印象がありますね。
開発思想的には、今、腕時計を着ける機会って少なくなってきてるじゃないですか。オシアナスの黎明期には、電波ソーラーが正確な時間刻むという機能的なところで、売れた時期もありました。ですが、電波ソーラーに対する価値観って、当時から変化しているのを感じています。腕時計というものが、よりその人の人生というか、ライフスタイルを彩るようなアイテムにシフトしつつある。とは言え、電波ソーラーにしてもブルートゥースによるスマホ連携機能にしても、時間が狂わないという機能性は価値になってくると思うので、そこはキープしつつ、着けているとモチベーションが上がったり、特別な時にこの時計を着けようみたいなアイテムになると思うんですね。なので、スーツを着るような、とっておきのシーンで選んでもらえる一本というのを今回は意識しました。それからライフスタイルとして、エレガントな着こなしをされる方で、でもちょっと個性を求めていて「あの人オシャレだね」っていうような方に選ばれて、そこにジャパンプライドが加味されていて、そういうところに共感してもらえるものを作りたいな、というところがありました」
――コロナ禍の時代の中で、腕時計の企画・開発も変わってきていると思うのですが?
(佐藤さん)「数年前は、新たな機能の搭載や、スペックアップをした新製品を望まれていたのですが、我々も分析をする中で、そういう需要もユーザーのマインドも今、変化していますよね。コロナ禍によって一気に加速したように感じます。そんな中でオシアナスブランドとして、今を生きる人たちに、どういうものを提供できるかということを、ずっと考えてきました。そういう中で出した答えのひとつが、とっておきのシーンであるとか、自分の生活を豊かにしていくようなアイテム、というところです。そういう需要に対して、どういう回答が出せるのかを考えながら、日々開発を続けていますね。モノ自体で考えているところから、着ける人の人生やライフスタイルまで意識して開発するようになったのが、コロナ前とは変わったところかなと思います」
――ポストコロナ時代には、また新しい方向性を考えていく必要がありそうですよね。
(佐藤さん)「やっぱり着ける人のことを考えないといけないですよね。需要だったり、市場だったり。その変化に対して、どうすればオシアナスいいねって思ってもらえるかを考えていきたいですね」
OCW-S5000シリーズ/搭載機能一覧
●タフソーラー(ソーラー充電システム)
●標準電波受信機能
●モバイルリンク機能(対応携帯電話とのBluetooth通信による機能連動)
●アプリ「CASIO WATCHES」対応
●ワールドタイム
●デュアルタイム
●ストップウオッチ
●フルオートカレンダー
●日付・曜日表示
●パワーセービング機能
●ネオブライト
●バッテリーインジケーター表示
〈取材協力者〉
カシオ計算機株式会社 技術本部 企画開発統轄部 企画部 第一企画室 リーダー/佐藤貴康さん
カシオ計算機株式会社 技術本部 デザイン開発統轄部 第一デザイン部 プレミアムリストデザイン室/鈴木貴文さん
問い合わせ先:カシオ計算機 お客様相談室 TEL.03-5334-4869 https://www.casio.com/jp/watches/oceanus/
Text/まつあみ靖 Photo/高橋敬大