オーデマ ピゲ×マーベルのコラボモデル第2弾は「スパイダーマン」発表イベントの模様を時計ジャーナリストがレポート

オーデマ ピゲが5月にドバイで行ったマーベルとのコラボモデル第2弾発表イベントの模様を、現地取材した時計ジャーナリスト・高木教雄氏にまとめてもらった。白熱のオークションと、その先を見据えたオーデマ ピゲの展望とは。

TEXT/Norio Takagi

オーデマ ピゲ×マーベルのコラボ第2弾は「スパイダーマン」

去る5月25日、オーデマ ピゲの重要顧客とメディア関係者、インフルエンサー、合わせて約140名がドバイ中心地にそびえ立つセントラル・パーク・タワーの最上階に集結した。重要顧客らは、各々異なる番号が書かれたパドルを握りしめている。この日、オーデマ ピゲ×マーベルの第2弾「ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン “スパイダーマン”」がお披露目され、2021年の“ブラックパンサー”と同じく、市販モデルとは仕様が異なるユニークピースのオークションが開催されたのだ。まだコロナ禍にあった2021年のオークションは、オンラインだったが、ようやく対面での開催がかなえられた。

会場での入札者には、個別番号が書かれたパドルが配られた

今年いっぱいでの勇退が決まっているオーデマ ピゲのフランソワ-アンリ・ベナミアスCEOが登壇し、今回のキャラクターが一番人気のスパイダーマンだと発表されると、会場に大歓声が巻き起こった。しかしこの時スクリーンで紹介されたのは、250本限定の市販モデル。ユニークピースの正体をなかなか明かさず、オークションを盛り上げる心憎い演出である。

まず最初にお披露目された、市販限定モデルの「ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン “スパイダーマン”」。ヒーローのモニュメントは、WG製の手彫り。裏蓋側の靴底まで完璧に再現されている。限定250本。手巻き(自社製Cal.2974)、毎時2万1600振動、約72時間パワーリザーブ。チタンケース(シースルーバック)、ラバーストラップ(ブラックの替えストラップ付属)、直径42mm。50m防水。価格要問い合わせ

白熱のオークションがスタート

今回のオークションに出品されたのは、ユニークピースを含め全部で3つ。まず会場を仕切るオークショニアから発表されたLot.1は、時計ではなく、作家であり映画監督でもあるデビッド・マンデルのサインが入った、マーベルのヴィンテージコミック3冊だった。ベナミアスCEOの一声で、5500ドルからオークションはスタートした。次々とパドルが上がり、また電話やネットでの参加者からも入札が続き、すぐに10万ドルに到達。その後、会場とオンラインともに入札が止まらず、落札予定額を大幅に超えたであろう22万ドルで入札された時、ベナミアスCEOはハンマープラスを促したが、オークショニアはさらにあおった。結果、新たな入札が2つ入り、最終的にスタート時の40倍の価格でのハンマープライスとなった。

Lot1のサイン入りヴィンテージコミック。現物が見られないかかわらず、高額落札された

続いて登場したLot2は、来年発表予定の「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」限定モデルのシリアルナンバー1の優先購入と、今年8月にオープンする「APハウス ロサンゼルス」のオープニングイベント参加権。時計の実機はなく、極めて小さい写真がスクリーンに映し出されただけだったが、オークションは白熱した。5万ドルでスタートしたが、40万ドル、50万ドル、60万ドルとあっという間に価格がつり上がっていく。オンラインで95万ドルの入札が入った時には、今度はベナミアスCEOが、会場をあおった。するとすぐに100万ドルのとの声が上がり、それからもなかなか入札が止まらない。そして最終落札価格は、スタート時の30倍以上に跳ね上がった。

Lot2の「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」限定モデル。スクリーンに映し出されたこの荒れた画像だけで、入札が相次いだ

2つの高額落札に、会場のボールテージは上がる。そしていよいよ本命の「オーデマ ピゲ ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン “スパイダーマン”」のユニークピースが映し出されると、会場はどよめいた。市販限定モデルがチタンケース、オークションにかけられたユニークピースが全体にエングレービングを施したWGケースなのは、前回のブラックパンサーと同じ。しかし今回のスパイダーマンでは、ケースとスパイダーマンの目にセラミック畜光材がはめ込まれ、暗闇で光を放っていたからだ。セラミック系畜光材をケースに使ったのは、時計界初。またケースのエングレービングにはレーザーを用い、実に緻密で、またWGに含まれる銀がレザーの熱で黒化した色調をそのまま残した事例も他にはない。

オークションにかけられた「ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン “スパイダーマン”」のユニークピース。ステージ中央に立つのは、複雑時計部門トップのアンヌ-ガエル・キネ女史。左はフランソワ-アンリ・ベナミアスCEO

20万ドルでスタートしたオークションは、あっという間に300万ドルに到達。日本からの参加者もパドルを挙げ「40ミリオン(400万)」と叫ぶも、すぐに420万ドルの入札が入る。前回のブラックパンサーの落札価格は、520万ドル。今回はマーベルでも一番人気のスパイダーマンだけに、さらなる高額落札が期待されていた。その期待通り、続けざまに会場でパドルが上がり、続いてオンラインで前回を超える550万ドルの入札が入るやいなや、別のオンライン参加者が600万ドルの声を上げた。さすがにここで入札は止まる。しかしオークショニアはあきらめず入札を促し、ベナミアスCEOも「モア、モア」とあおる。それが功を奏し、620万ドルの声が会場から上がった。その後もたっぷり時間をかけてオークショニアは次なる入札を促したが、620万ドルでのハンマープライスとなった。

「ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン “スパイダーマン”」ユニークピース。スパイダーマンが放った蜘蛛の糸が、ケース全体に広がっているかのよう。その細かなエングレービングは、レザー加工ならでは。手巻き(自社製Cal.2974)、毎時2万1600振動、約72時間パワーリザーブ。ホワイトゴールドケース(シースルーバック)、ラバーストラップ、直径42mm。50m防水

ブラックパンサーより100万ドル高い落札に、ベナミアスCEOは、大満足の様子だった。

落札価格は支援する非営利団体へ寄付|次作の予告も

そして決して忘れてはならない、前回も含め、マーベルとのコラボモデルのオークションは、オーデマ ピゲの社会貢献の一環であることを。今回の3つの合計落札価格850万ドルは、社会の変化を求める若者たちの運動を支援する2つの非営利団体、ファーストブックとアショカに寄付される。その活動は、ブラジル、英国、ナイジェリア、カナダ、インドネシアと世界に広がり、恵まれない家庭の若者たちに均等な教育の機会を与えることを目的とする。

最後にベナミアスCEOは、「私は今年でオーデマ ピゲを去りますが、マーベルとのコラボレーションは継続されます。2025年に登場する新たなコラボレーションモデルにご期待ください」と締めくくった。ブラックパンサー、スパイダーマンに続いて何が登場するのか、あれこれ想像しながら2年後を心待ちしたい。

イベントの最後を締めくくったのは、宿泊先のホテルで繰り広げられたドローンショー。ドバイの夜空にマーベルとのコラボを伝える文字や、市販モデルの姿が光のドットで浮かび上がった
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