「IWCインヂュニア」ジェンタデザイン完全復活! 高耐磁性能を保ったままよりラグジュアリーに変貌したレジェンドウオッチ

1868年、ドイツ語圏となるスイスのシャフハウゼンにて創業した名門時計ブランド【IWCシャフハウゼン】は、今年のウオッチズ&ワンダーズジュネーブにて、新しくなった「インヂュニア(INGENIEUR)」を発表した。明かされたモデルは合計4本。シルバーとブラック、アクアというステンレススチール仕様のカラーバリエーションに加え、特別感のあるチタン仕様のグレー文字盤もラインナップした。

原点モデルが秘める造形美を最新技術で表現し尽くした新世代

 

インヂュニアの新作は、1976年に登場した「インヂュニア SL」(Ref.1832)がルーツにあり、ラグからブレスレットへ連なるフォルム、5つのポイントを持つベゼル、グリッドダイアル、耐磁構造など、あらゆる要素が現代へと継承された。一方で、もちろん現代的に進化を遂げた部分もある。最もわかりやすいのがベゼルで、新世代モデルはビス留めに変更されたのだ。チーフデザインオフィサー、クリスチャン・クヌープ氏に聞いたところによると、

「以前は5つのくぼみにツールをセットしてねじ込む方式で、個体ごとにくぼみの位置にズレが生じていました。それを5つのスクリューで固定する方式に変更。常に一定の位置となり、完璧さを追求しました」

とのことだった。


↑メルセデス・ベンツC111-Ⅲほか1970年代の名品が置かれた、ジュネーブでのIWCブース。インヂュニアが主役だった

 

これ以外にも、ブレスレットの厚みを抑えつつ新設計の「ミドルリンク・アタッチメント」を採用することで、細い手首への装着性にも配慮。文字盤は、現代のブランドロゴに合うようオリジナルのグリッドスタイルから見直しが図られた。また、伝統の軟鉄製インナーケースを採用しながら厚みを10.7mmにまで抑制。スチールバックを採用し、4万A/mの耐磁性能と10気圧防水を確保した。さらに独自の爪巻き上げ機構を組み込んだ164個の部品からなるキャリバー32111を搭載し、120時間ものロングパワーリザーブで精度を担保する。この、いかにも堅牢なタイムピースに気品をもたらしているのが外装に見られる絶妙なポリッシュ面。とくにアクアは、ブレスレットの中ゴマにも光沢を持たせることで、ひと際個性を放つ一本に仕上げている。それを超えて異彩を放つのがグレーダイアル仕様。難削材と言われるチタンでもIWCは高度な新世代インヂュニアのフォルムを作り上げたのである。さすがはチタンウオッチ開発の先駆者というほかない。


↑現代的な解釈を加えた新生インヂュニア。その復活に世界が驚愕!

 

振り返れば、同じジェンタデザインをモチーフにした2013年版も評価の高い傑作だった。しかし、その遥か上を行く作り込みがなされた最新世代は、まさしくIWCの持てる最新エンジニアリングの賜物である。筆者も実際に見るまでは価格設定にやや懐疑的な部分もあったが、1970年代に生まれた他のジェンタデザイン、いわゆるラグジュアリースポーツウオッチに比べれば破格といえる。事実、発売が始まる前から予約が殺到し、入荷が始まった今もなお世界中で多くの人が順番を待っている状態と聞く。早く決断しなければ、この正統進化を果たしたレジェンドウオッチを手にする機会は遠のく一方となるだろう。


IWC「インヂュニア・オートマティック 40」 (右)Ref.IW328901 (左)Ref.IW328902 各162万8000円

時計デザインの巨匠、ジェラルド・ジェンタが手がけた1976年発表の「インヂュニア SL」のスタイルを継承した最新世代。ミドルケースに連結するビス打ちベゼルや洗練されたリューズガード、人間工学に基づく外装設計、先進の自動巻きキャリバー32111など、数々のアップデートがなされた。磁場にさらされる人々のための時計として開発された出自に忠実な、軟鉄製インナーケースによる4万A/m耐磁性能を保持。ステンレススチールケース&ブレスレット。直径40mm、厚さ10.7mm。10気圧防水。

 


↑IWCの素材開発の歴史を語るうえで欠かせないのが「チタン」であり、新生インヂュニアでも登場。ステンレススチール仕様よりも購入難度がケタ違いという。

 

チタン仕様で披露されたIWCの歴史と技術力

 

IWCは素材開発でも常に業界をリードしている。新型インヂュニアから登場したチタンも、同社は1980年に初採用モデルを発表。以来、技術研鑽を重ねてきた。

新作に使われるグレード5チタンは「チタン合金」とも呼ばれ、難削材と言われている。熱伝導率が低く切削時にこもった熱が工具の摩耗を進めたり、また剛性も低いため加工時の振動で変形しやすいなどというのが、その理由だ。この問題を避けるためには、時間をかけて加工する必要があり、当然、量産には不向き。複雑に面が入り組んだ新型の設計であれば、なおさら時間がかかることになるのは明白だ。

それでもなお選択肢に加えたのは、ステンレススチールよりも約45%軽く、丈夫で肌にも優しいなど多くの魅力的な特性があるから。もちろんIWCの卓越した素材開発の象徴でもある。圧倒的に流通量は少ないものの、入手は不可能ではない。周囲とは違う時計を求める人であれば、狙わない手はないだろう。


IWC「インヂュニア・オートマティック 40」 Ref.IW328904 203万5000円

加工の難しいグレード5チタンを外装に採用。サンドブラスト仕上げのマットな質感にポリッシュの面取りが映える。外装の質感に合わせ、文字盤はグレーとなる。直径40mm。10気圧防水。

 

問い合わせ先:IWCシャフハウゼン TEL.0120-05-1868 https://www.iwc.com/jp/ja/ ※価格は記事公開時点の税込価格です。

 

Text/水藤大輔(WATCHNAVI編集部) Photo/星 武志(estrellas)、嶋田敦之

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