理工科系大学と共同開発したレーザー加工チタン文字盤が光で7変化! オリス自社キャリバーウオッチ「プロパイロットX」の新作を実機検証

間もなく創業120周年を迎えるスイスの時計ブランド【オリス(ORIS)】は、2020年に久しぶりとなる自社開発の自動巻きムーブメントを発表した。「キャリバー400」と名付けられたこの高性能なマニュファクチュールムーブメント(詳細は下部)は、ダイバーズの人気シリーズ「アクイス」のほか、ヒストリカルな航空時計をモダンに解釈した「プロパイロットX」に搭載され、世界的に支持を集めている。その最新作となる「プロパイロットX キャリバー400 レーザー」は、新たに“科学の美”へのチャレンジで唯一無二の『表情』を獲得。光によって変化する美がどのようなものか、全貌に迫る。

どのブランドにもない文字盤を生み出した斬新アイデアと高度なテクノロジー

 

昨今、文字盤に個性を持たせた腕時計が増えており、大きなトピックスとなっている。カラーではブルーやグリーンが定番色として広まり、ひとつの文字盤上に階調があるグラデーションのほか、素材ではマザー・オブ・パールやメテオライト(隕石)といった天然ならではの質感を生かした希少価値のあるものまで、各ブランドから趣向を凝らした文字盤が登場している。この傾向は、ユーザーが他とカブらない腕時計を欲していることをきっかけとして始まり、単純なカラーバリエーションの拡充だけでは物足りなさを感じてしまうまで進んでいる。

とはいえ文字盤であるため、時計本来の機能である時刻表示を行えることが大前提であるべき。時刻表示とデザイン性の良きバランスが求められるこの時代に、オリスはこれまでと異なるアプローチで文字盤を作る旗手となってきた。直近では、同社が積極的に取り組む海洋環境保護の観点から開発された海洋プラスチックゴミをアップサイクルした文字盤や、同じく海洋ゴミのひとつとして問題視されている廃漁網から生まれた文字盤などがある。極めてユニークであり、メッセージが込められた両文字盤だが、その表情は実に豊かで元が廃材とは想像できない質感の良さが特徴といえる。


↑リサイクルPETから作り出した文字盤を備える「アクイスデイト アップサイクル 41.5mm」/Ref.01 733 7766 4150-Set 38万5000円


↑廃漁網をアクセサリーとして蘇らせる「ブレスネット」との共作「オリス X ブレスネット」/Ref.01 733 7730 4137-07 8 24 05PEB 38万5000円

 

 

チタン製文字盤に施した微細なレーザー加工が“科学の美”を生む

こうしたエシカルな視点を取り入れた個性ある文字盤のコレクションも展開しているオリスが、最先端の科学を応用し、時計界では初めてとなるレーザー加工で独創的な文字盤を作り上げ、採用したのが「プロパイロットX キャリバー400 レーザー」だ。この文字盤の開発には、欧州トップレベルの理工科系大学として知られるスイス連邦工科大学(ETH)チューリッヒ校の傘下にある研究所が参加。文字盤という小さなサークルの中に、“科学の美”を表現した。

そんな特殊な文字盤はチタン製で、縦方向に約6000本のレーザー刻印(1~2ミクロンの深さ)を施している。この微細な加工によってヒトの目が赤と認識する可視光線の波長が取り除かれ、写真のような虹色に近い見え方となる。しかも驚くことに光の反射角度や強さ、見たときの向きによっても表情が変わるのだ。そのため、時には鮮やかに時には鈍く、瞬間ごとに雰囲気が異なるうえ、着用者が見た際と対峙しているヒトから見た際では違う腕時計のように見える。万華鏡に似た儚い美しさとカメレオンのように気まぐれな性質を持つこの類のない文字盤は、先ほど紹介したETHの研究所と、リチャード・シグリストが指揮するオリスの技術部門のタッグによって実現した。

ルーペを通して文字盤表面を見ると、レーザーによる縦方向の細かな彫りが確認できる。通常、キャリバー400搭載モデルは小窓式のカレンダー表示が付いているが、本機は文字盤の表現を優先するためにあえて省いている。加えて、ORISロゴやインデックスなどの文字盤上のあしらいは別のレーザー技術を駆使し、植字タイプのような立体感あるデザインに仕上げている。また、蓄光型スーパールミノバのコーティングは時分針のみにとどめ、夜間や暗闇における時刻の読み取りをしやすくするなど、独自の表現美と実用性を絶妙なバランスのうえに成り立たせている。

 

 

<文字盤の『表情』を実機で検証してみた>

強いLED光を3つの方向から当て、「プロパイロットX キャリバー400 レーザー」がどんな表情を見せるかチェックした。時計自体の個体差もあるため一概には言えないものの、左右からの光ではシャボン玉のような言葉では言い表せない美しいグラデーションが出現。その一方で、12時側からの光ではブラックに近いネイビー色となり、オールチタン外装の腕時計らしいツール感が漂う見た目へと変化した。※リューズを引いてハック機能を有効にして撮影。


↑3時方向からのLED光。光沢のあるピンクが表面に出て、もっとも鮮やかな表情に。


↑9時方向からのLED光。左右で濃淡のあるグラデーションとなり、やや落ち着きのあるトーン。

↑12時方向からのLED光。同じ腕時計!? と思えてしまうほど、質実剛健な雰囲気である。

 

検証の結果が示すように、今回の「プロパイロットX キャリバー400 レーザー」ほど実機を一度手に取ってからの購入を薦める腕時計もない。一本の腕時計が様々な表情を見せてくれるため、強い個性を求める者にとって最良の候補となるはずだ。なお本機の文字盤に使われている先進的なレーザー技術は発展も考えられ、彫りの深さや方向を変えることでグラデーション具合も異なるし、傷や汚れが付かなければ理論上は文字盤以外のチタンパーツにも応用可能とのこと。7変化するレーザー文字盤が示すポテンシャルは、その『表情』の多彩さと同じく無限大のようである。


オリス「プロパイロットX キャリバー400」 Ref.01 400 7778 7150-07 7 20 01TLC 81万4000円/自動巻き(自社製Cal.400)、毎時2万8800振動、120時間パワーリザーブ。チタンケース(シースルーバック)&ブレスレット、両面ドーム型サファイア風防(内面無反射コーティング)。直径39mm。10気圧防水。

 

 

搭載ムーブメント「キャリバー400」が汎用ムーブメントに比べて優れている点

【高精度】COSC認定クロノメーターを超える精度テストを、オリスが独自に設定して実施。日差-3〜+5秒を達成。

【高耐磁】30以上のパーツが磁気の影響を受けにくい素材で、耐磁時計の基準ISO764の規定を上回るスペックを実現。

【ロングパワーリザーブ】主ゼンマイや輪列、巻き上げ効率などを工夫し、最大で5日間(120時間)ものパワーリザーブを確保。

【10年保証】自動巻きローターと巻き上げ機構を改良して不具合を低減。マイオリスの登録によって保証期間が10年間へと延長。

なおキャリバー400は発展型を想定した設計を採用しており、すでにスモールセコンド付きの「キャリバー401」やポインターデイト付きの「キャリバー403」を誕生させている。今後も兄弟ムーブメントが登場する予想が立つが、人気のクロノグラフやGMTの機能追加があるのか、実に楽しみだ。とくにブランド創業120周年を迎える2024年は、オリスから目が離せない!!

 

キャリバー400の魅力は、WATCHNAVI Salonの過去記事(https://watchnavi.getnavi.jp/topics/62415)で詳しく解説。

 

問い合わせ先:オリスジャパン TEL.03-6260-6876 https://www.oris.ch/jp ※価格は記事公開時点の税込価格です。

Text/山口祐也(WATCHNAVI編集部) Photo/鈴木謙介

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