GPSシステムはもちろん、レーダーや無線もなかった時代の航海はとくに危険を伴うものだった。そのため船乗りは地文航法を使い、時代が移って天体航法が広まると一気に時計の重要性が増した。そんな海の冒険時代に重宝された時計をルーツとする、「IWCシャフハウゼン(IWC SCHAFFHAUSEN)」と「ユリス・ナルダン(ULYSSE NARDIN)」の2つの人気コレクションを紹介する。
ノーティカルなルックスに冒険家たちの遺産を継承
「海の英雄、気高き人々」という一節で始まるのは、ヴァスコ・ダ・ガマ、バルトロメウ・ディアス、フェルディナンド・マゼランなどポルトガルの船乗りたちを追憶する国歌。1939年、リスボンとポルトを拠点とする二人のポルトガル商人から、精度に優れる時計のオーダーを受けたIWCシャフハウゼンが発明したのが、ポケットウオッチの高精度ムーブメントを利用した「ポルトギーゼ」のオリジナルモデルだった。これ以降、同社は偉大な冒険家たちの遺産を現代に受け継いでいる。
2020年にリニューアルを迎えたポルトギーゼコレクションの中でも、スポーツテイストの強さは一番。ベゼルやブレスレットに18Kレッドゴールドを取り入れ、エレガントさも兼ね備える。大航海時代のエスプリを感じさせるノーティカルなクロノグラフだ。
問い合わせ先:IWCシャフハウゼン TEL.0120-05-1868
https://www.iwc.com/ja/
マリンクロノメーターを進化させた偉大な技術者集団
18世紀、イギリスの時計師ジョン・ハリソンがマリンクロノメーターを発明したことで、航海はひとつ上の段階へ昇った。とりわけユリス・ナルダンのマリンクロノメーターは、1862年のロンドン博覧会で最高位を受賞して以降、各国の海軍などがこぞって制式採用するなど、信頼性を勝ち取ったのだった。日露戦争時の連合艦隊旗艦・戦艦三笠も、同社製のマリンクロノメーターを備えていたことは知られた話だ。
1923年のブレゲ生誕100年祭でも首位を獲得するなど、ユリス・ナルダン製はまだ危険だった遠洋航海を大いに支えた。その高度な技術力は継承され、後の天文三部作など超複雑時計を生む素地をつくったのである。
多くの探険家が航海に出た19世紀、マリンクロノメーターと同様に高精度を誇った「トルピユール」と呼ばれるポケットクロノメーターが活躍した。視認性に優れた文字盤や懐中時計を彷彿とさせるスタイルといった、当時の意匠を腕時計で表現しつつ、最新のシリシウム製脱進機を使ったCOSC認定クロノメーターの自社製ムーブメントを搭載する。
問い合わせ先:ソーウインド ジャパン TEL.03-5211-1791
https://www.ulysse-nardin.com/