東京五輪(1964年)の公式タイマー採用に向けて始動した【セイコー】の計時技術と哲学を今に伝えるクロノグラフ

セイコー プロスペックス(SEIKO PROSPEX)】といえば、ダイバーズウオッチのイメージが強い。それは、1965年にセイコーが発表した国産初のダイバーズウオッチを起源とするブランドであるためで、ラインナップの半数以上をダイバーズが占めている。しかし2021年、プロスペックスのもうひとつの“柱”として新たに登場したのが、セイコーの計時技術のクオリティと歴史を物語るクロノグラフだ。

スポーツ計時の発達とともにセイコークロノグラフも進化してきた

セイコークロノグラフの歩みは、まさに1964年開催の東京五輪からスタートした。1959年のIOC総会で5年後の開催地が東京に決まると、その翌年には当時の服部正次社長のリーダーシップでオフィシャルタイマーを目指す方針が打ち立てられた。だが当時、スポーツ専用ストップウオッチすら生産していなかったセイコーにとって、それは未知の分野への挑戦だった。

 

1964年の東京五輪で使われたストップウオッチとは

競技によって3種類のストップウオッチが使い分けられた。それまでにも0.01秒を計れるストップウオッチは世界に存在していたが、セイコー製が革新的だったのは独自のハートカムなどを用いて停止位置を一定にしたこと。これにより十分な技術を持つ測定員ならば、誰が使っても同じタイムが計れるようになった。

 

しかしそこは1960年にスイスウオッチに匹敵するグランドセイコーなどの腕時計を世に送り出すセイコーだけあり、わずかな期間で開発を進め、1962年にはハートカムを搭載したストップウオッチを開発。従来のストップウオッチが抱えていた機械面の問題を克服した。各競技の大会での試用も経て、5月に晴れて公式計時に選定された。ストップウオッチとクロノグラフでジャンルは異なれど、イノベーションが他にも影響を与えて「クラウン クロノグラフ」や「セイコー5 スピードタイマー」の開発に繋がったのである。

 

東京五輪の年、1964年にセイコーが発表した「クラウン クロノグラフ」とは

現行のRef.SBEC009の開発にインスピレーションを与えたワンプッシャー式の手巻きクロノグラフで、秒針の代わりにクロノグラフ秒針を備える。伝達方式に水平クラッチを、作動方式にコラムホイールを搭載するという、当時としては先進的なクロノグラフだった。東京五輪限定モデルなども存在していた。

 

「プロスペックス スピードタイマー メカニカルクロノグラフ」は、これらのレガシーに触発された一本。クラウン クロノグラフの個性であるドルフィン針やダブルバーインデックスがセットされている。文字盤のチャコールグレーは60年代に出回り始めたカラーで、クラウン クロノグラフにも設定があったことから本機に採用された。

 

セイコークロノグラフの革命。その輝かしい軌跡を証明する

セイコー「プロスペックス スピードタイマー メカニカルクロノグラフ」Ref.SBEC009 33万円

新生スピードタイマーの機械式レギュラーモデルは、チャコールグレーの文字盤をセット。セイコー初のクロノグラフを彷彿とさせる形状の長短針やアプライドインデックスを採用する。

スペック:自動巻き(自社製Cal.8R46)、毎時2万8800振動、約45時間パワーリザーブ、日差+25秒~-15秒。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット、デュアルカーブサファイア風防(内面無反射コーティング)。直径42.5mm(厚さ15.1mm)。10気圧防水。

 

問い合わせ先:セイコーウオッチお客様相談室 TEL.0120-061-012 https://www.seikowatches.com/jp-ja/

Text/WATCHNAVI編集部

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