創業150年以上の時計店「やぶ内時計舗」店主に“太鼓判ウオッチ”を聞く! フランス発のマニュファクチュール「ペキニエ」

<取材協力>
やぶ内時計舗

明治5年(1872年)からの歴史を持つ大阪の老舗時計店「やぶ内時計舗」。長く時計を扱ってきた実績に裏打ちされた独自の審美眼を受け継ぐ、5代目の藪内正己さんにこの夏おすすめの腕時計を聞いた。

今夏はやはりフランス製のタイムピースに要注目!

創業152年の歴史を重ねてきた「やぶ内時計舗」。難波神社にほど近い現店舗には2009年末に移転した

「この夏、フランスのパリは世界が注目する都市ですから、せっかくなので腕時計もフランスに目を向けていただきたいですね。いま、高級時計というとスイスが取り沙汰されますが、実は時計製造はその周辺国であるフランスやドイツ、イギリスで発展を遂げてきた歴史があり、いまもフランスにはブザンソン国立天文台で時計の高精度認定を与える体制があります。そのブザンソンよりもスイス側に位置する街『モルトー』で1973年に創業したのがペキニエというブランド。50年以上の歴史を持つ生粋のマニュファクチュールとして、とてもユニークな存在です」(藪内さん)

やぶ内時計舗で本格的に取り扱いが始まったのは2000年代に入ってから。その以前にも顧客に要望に応じて製品は用意していたというが、新世代マニュファクチュールキャリバーをペキニエが完成させたことが、店主の胸を打った。

やぶ内時計舗の5代目店主、藪内正己さん

「2000年代はいろんなブランドがあの手この手で“自社製”を謳っていた時代。その中で、ペキニエの作りはその設計思想からして“本物”だと感じました。当初こそ若干の不具合もありましたが、それも技術研鑽によって改善。いまでは新型の自社製キャリバーであっても安心しておすすめできます。文字盤の針位置がシンメトリーになる輪列設計なんかも極めてフランス的ですし、こうした左右対称のデザインは日本でも好まれる方が多いですよね。実際、今春に行ったペキニエの試着キャンペーンではフランス発祥のマニュファクチュールという存在の希少さも手伝って、多くの方が興味を持ち、新作を試していただけました」

そうしたキャンペーン施策で人気の高かったモデルが、最初のおすすめモデルとなる。

「この『コンコルド』というモデルは、その名の通りパリを象徴する名所のひとつ『コンコルド広場』がモチーフになっています。ブレスレットを見ていただくと、リンクの形状が広場の中心にあるオベリスクを模していることがお分かりになるでしょう。サイズが36mmと40mmで選べるのもポイントです。試着キャンペーンの際には、時計をよくご存じの方が36mmを好まれていたように記憶しています。搭載するのはペキニエの最新型となる自社製キャリバー『イニシャル』で、パワーリザーブは約65時間あるのでビジネスウオッチとして使った場合、週末に外していても月曜日の朝にまだ動き続けているので時間を合わせたりする手間がありません。手間要らず、という点ではペキニエの自社キャリバーらしくカレンダーの操作禁止時間帯がないのも特徴です」

ペキニエ「コンコルド」Ref.9046333 78万1000円 自動巻き(カリブル イニシャルEPM03)、毎時2万8800振動、約65時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット。縦横36mm、厚さ9.25mm。10気圧防水

この操作禁止時間帯がない、という独自機構はペキニエが国際特許を取得。複数の表示を持つ定番「ロワイヤル」でもストレスフリーで使えることは、店主が身をもって体感済みだ。

「ロワイヤルは3枚のディスクが隣接していて段差もないというカレンダー表示が特徴。これはほぼペキニエの時計だけに見られる構造です。しかもリューズだけでカレンダーの調整ができ、もちろん操作禁止時間帯はありません。実用するうえで必要な機能は盛り込まれていながら、余計なものを省いていく“引き算の美学”が感じられる、とても考え抜かれたマニュファクチュールキャリバーだと思いますね。ロングパワーリザーブということもあり、実際に使っていてもとにかく手間がかからない。時計の知識の有無に関わらず、たくさんの方におすすめできるモデルです」

ペキニエ「リュー ロワイヤル キャトル・フォンクション」Ref.9010437 147万4000円 自動巻き(カリブル ロワイヤルEPM01)、毎時2万1600振動、約88時間パワーリザーブ(シングルバレル、等時性保証72時間)。ステンレススチールケース(シースルーバック)。直径42mm、厚さ12.3mm。アリゲーターストラップ。10気圧防水

端正な中に機能とデザインにフランスの感性が息づく

今回、実体験も交えた店主の話を聞きながら、時計作りに対するペキニエの真摯な姿勢が伝わってきた。せっかく自社で開発・製造をするのであれば必要とされる機能は盛り込もうという気概が、スペックや機能に表れているのだ。時計の外装に目を向ければ、普段使い向きの程よい華やかさ、品の良さが漂う。こうした外装とムーブメントの完璧なマリアージュは、ペキニエが自社でムーブメントを製造できる生粋のマニュファクチュールだからこそなせる技なのだ。もしまだペキニエを未体験の人がいたら、ぜひやぶ内時計舗でこのフレンチブランドの実力に触れ、店主と時計談義に花を咲かせてみてはいかがだろう。

【やぶ内時計舗】
住所:大阪府大阪市中央区博労町4-3-12
TEL:06-6253-6110(代)
営業時間:午前11時~午後8時(定休日:水曜日)
https://www.yabuuchi.co.jp/

※価格は記事公開時点の税込価格です。

Text/Daisuke Suito (WATCHNAVI) Photo/Kensuke Suzuki (ONE-PUBLISHING)

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