高級時計の祭典【ウォッチズ・アンド・ワンダーズ】を指揮するリーダーにインタビュー「 ジュネーブが“時の都”となり、世界中に時計製造業を広めるイベントとして」

2025年4月1日から7日までの7日間、スイスのジュネーブにて世界最大規模の高級時計見本市、ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ 2025(Watches and Wonders Geneva 2025)が開催された。同イベントには錚々たる名門ブランドに加えて、著名な独立系メーカーも数多く参加し、新作時計を披露した(ブランドリストは最後に記載)。世界各地から集まったリテーラーやメディア関係者、さらには時計愛好家の熱気で会場は盛り上がり、大きな成功を収めたのだった。本記事では、同イベントを主催するウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ財団のCEOを務めるマチュー・ユメール氏に、今回の振り返りや今後の展望について話をうかがった。


↑ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ財団CEO マチュー・ユメール(Matthieu Humair)。1984年5月4日、スイス/ローザンヌ生まれ。2007年、ローザンヌ大学HECで経済学修士号を取得し、ロレックスやリシュモン・グループでのインターンシップを経て、時計製造の造詣を深める。2009年、高級時計財団(Fondation de la Haute Horlogerie)に入社し、国際高級時計サロン「SIHH」のオペレーション責任者に就任。2017年のオペレーション・ディレクター、2020年のCEOを経て、ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ 2022を運営者のひとりとして成功に導く。2023年2月より、ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ財団のCEOに正式就任。

 

大盛況で幕を閉じたウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ 2025を総括

―― 今回のウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ 2025を振り返り、率直な感想をお聞かせください。

「2025年のウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブでは、新作の数と多様性が非常に印象的で、いくつかの世界記録も発表されました。ブランド各社はデザインや演出において非常に高い創造性を発揮しました。来場者にとっては、他に類を見ない体験となり、スイス時計業界の活力を改めて示す機会となりました。『In the City』によってジュネーブ中心部にも時計の魅力が広がり、ジュネーブ全体が“時の都”として世界中から注目されることとなりました」

―― 今年の一般公開は、3日間とも非常に多くの来場があり、大変な盛況ぶりでした。次回となる2026年は、一般公開日を延長することも検討されていますか?

「現在のフォーマットでは、4日間が業界関係者向け、3日間が一般公開日とされており、あらゆる来場者に対応できるバランスの取れた構成となっています。さらに、『In the City』によって、ジュネーブ中心部でウォッチズ・アンド・ワンダーズの体験を一週間に渡って楽しむことができます。来年の正確なスケジュールはまだ確定していませんが、出展ブランドと連携し、ブランドと来場者にとって最良の出会いの場を提供できるように取り組んでいます」

世界中に時計製造業を広めるイベントとして

―― スイス国内だけでなく近隣諸国からの訪問者も多く見られ、ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブはグローバルに注目されるイベントとして認知された印象です。今後、海外客を対象とする「ウオッチ・ツアー」の企画や上海以外でも開催の計画はありますか?

「現時点ではそのような計画はありません。私たちの焦点は、ジュネーブでの旗艦イベントに置かれています。ジュネーブは世界最大の時計イベントを開催するのに理想的な場所であり、世界中から訪問者を迎えるハブとなっています」

―― 今回、過去最多となる約60のブランドが参加しましたが、どのような条件を満たせば参加できるのでしょうか? 参加ブランドを選定する上で、たとえば歴史や自社ムーブメントの有無、製造国、代表作、あるいは経営状況といった要素は考慮されるのでしょうか?

「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブへの参加を希望するすべてのブランドは歓迎しています。各ブランドは選考委員会によって客観的な基準に基づいて慎重に審査されます。また、会場の空き状況や技術的な制約も考慮されます」

―― 2022年の初開催から今年で4回目を迎えました。イベントが当初掲げた基本理念、そして現在の状況について教えてください。そして、今後の目標についてもお聞かせください。

「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ財団の使命は、イベントの開催を通じて世界中に時計製造業を広めることにあります。その旗艦イベントがジュネーブでのこのサロンです。2023年には、一般来場者への開放と『In the City』プログラムの展開という大きなチャレンジを遂げました。今後の目標はさらに広い層に時計製造の世界を開放し、次世代へのアプローチを継続することです。今回は一週間を通じて5万5000人を超える来場者を記録しました。私たちは時計への関心を喚起し、情熱を育み、ジュネーブを“時の都”として確立したいと考えています」

―― 最後の質問です。年々規模が拡大していますが、まだ参加していないビッグネームを迎える可能性はありますか?

「私たちの目標は、サロンの成功を支えてきた高いサービスレベルを維持しながら、慎重に拡大していくことです。毎年新しいブランドを迎えており、今年はブルガリと6つの独立系時計ブランドが加わり、合計60ブランドに達しました。確かなことは回答できませんが、今後も来場者の体験をさらに豊かにし、時計の世界への忘れがたい旅を提供していくことをお約束します」

 

果たして、2026年のウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブはどのようなものになるのか? マチュー・ユメールCEOへの期待は大きいが、彼の指揮のもと、必ずや世界中の時計愛好家をワクワクさせる場として“時の都”のイベントはさらに魅力を増すこととなるだろう。

 

「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ ジュネーブ 2025」参加ブランドリスト

A.ランゲ&ゾーネ(A. LANGE & SÖHNE) | アルピナ(ALPINA) | アンジェラス(ANGELUS) | アーミン ・シュ トローム(ARMIN STROM ) | アーノルド&サン(ARNOLD & SON) | アーティ ウォッチズ(ARTYA WATCHES) | ボーム&メルシエ(BAUME & MERCIER) | ベル&ロス(BELL & ROSS) | ブレモン(BREMONT) | ブルガリ(BULGARI ) | カルティエ( CARTIER ) | シャネル( CHANEL ) | シャリオール(CHARRIOL) | ショパール(CHOPARD) | クリスティアン・ヴァン・デル・クラーウ(CHRISTIAAN VAN DER KLAAUW) | クロノスイス(CHRONOSWISS) | サイラス(CYRUS GENÈVE) | チャペック(CZAPEK & CIE) | エベラール(EBERHARD & CO.) | フェルディナント・ベルトゥー(FERDINAND BERTHOUD) | フレデリック・コンスタント(FREDERIQUE CONSTANT) | ジーナス(GENUS) | ジェラルド・チャールズ(GERALD CHARLES) | グランドセイコー(GRAND SEIKO) | グローネフェルト(GRÖNEFELD) | H.モーザー(H. MOSER & CIE.) | オートランス(HAUTLENCE) | エルメス(HERMÈS) | ウブロ(HUBLOT) | ハイゼック(HYSEK) | エイチワイティー(HYT) | IWC シャフハウゼン(IWC SCHAFFHAUSEN) | ジャガー・ルクルト(JAEGERLECOULTRE) | クロススタジオ(KROSS STUDIO) | ローラン・フェリエ(LAURENTFERRIER) | ルイ・モネ (LOUIS MOINET) | マイスタージンガー(MEISTERSINGER) | モンブラン(MONTBLANC) | ノモス グラスヒュッテ(NOMOS GLASHÜTTE) | ノルケイン(NORQAIN)|オリス(ORIS)| パネライ(PANERAI)| パルミジャーニ・フルリエ(PARMIGIANI FLEURIER)| パテック フィリップ (PATEK PHILIPPE) | ペキニエ(PEQUIGNET) | ピアジェ(PIAGET) | レイモンド・ウェイル(RAYMOND WEIL) | レッセンス(RESSENCE)| ロジェ・デュブイ(ROGER DUBUIS) | ロレックス(ROLEX) | ルディ・シルヴァ(RUDIS SYLVA) | スピーク・マリン(SPEAKE MARIN) | タグ・ホイヤー(TAG HEUER) | トリローブ(TRILOBE) | チューダー(TUDOR) | ユーボート(U-BOAT) | ユリス・ナルダン(ULYSSE NARDIN) | ヴァシュロン・コンスタンタン(VACHERONCONSTANTIN) | ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS) | ゼニス(ZENITH)

 

Text/三宅裕丈、山口祐也(WATCHNAVI編集部)

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