――では設計チームのご意見も聞かせてください
土居さん:そうですね、今回のモデルは下側のベゼル部分がかなり薄い設計になっています。この形状を製作するにあたって、山本も話した通り、本当に膝を突き合わせる距離で何度も何度も議論しました。G-SHOCKは頑丈なケースの周りを、弾力性のある樹脂ウレタンで覆う構造にすることで耐衝撃性を実現させています。しかし今回のように、薄くて小さいベゼルをウレタンで構成すると簡単に剥がれてしまいます。そこで、ガラス繊維を含んだファインレジンを使った構造にすることで、本体の下半分をスリムにすることが可能となり、腕にフィットしやすいフォルムが出来上がったのです。
山本さん:ほとんどのG-SHOCKはケースをウレタンで覆う構造のため、裏蓋の方に向かって広がっているデザインになっています。これだとどうしても大きなサイズになってしまう。そこで新作はモジュールを緩衝ボディで挟み、サンドイッチのような設計にしました。この上下ツーピース構造とすることで装着感も優れたものとなり、カラーもツートーンとなってG-SHOCKらしいスポーティな外観を獲得するに至ったのです。
牛山さん:サイズの大きいG-SHOCKの場合、着ける方によっては手首を外側に曲げたときに手の甲にあたってしまうことがあります。新作はその問題を多くで解消するフォルムとなっており、着け心地の向上にもつながっています。
山本さん:そのほか、スタンダードなG-SHOCKはメインボタンを3時側に備えていますが、あえて9時側にレイアウトすることで親指でしっかりと押せるようにしました。
――(分解されたケースを見ながら)いままでのG-SHOCKでは見たことがないパーツが、下側のベゼルですね
土居さん:新たなパーツで「曲面形状バックカバー」と名前がついたようです(笑)。この形にたどり着くまでは本当に試行錯誤の連続でした。
山本さん:新パーツをどう固定するかが、非常に悩みどころです。シンプルな構造の方が強度面に優れるため、むやみにネジも増やしたくない。けれど、このバックカバーだけはどうしてもネジ留めしか考えられず……。
土居さん:デザインや設計を行う3D CADのデータを山本と共有しながら、激しく議論の空中戦を繰り広げていた状態で。最終的には私がCAD上にネジを一本置いて、「どこに打つの?」みたいな(笑)
山本さん:絵や口頭では伝えづらいんですよ(笑)。だから、「ココに!」みたいなやり取りをしていましたね。ベゼルとバックカバーを固定するネジのスペースが本当になくて。それを確保するために考えられない角度から打ち、またそれをカバーするためにケースデザインを改める。デザイナーと設計の痺れるような、そんなせめぎ合いが続きました(笑)
――その甲斐あって多機能ながら特大のレンジマンから、かなりコンパクトになりましたね
牛山さん:太陽光パネルの発電性能がアップしたことや、風防ガラスとパネルを貼り合わせた技術も初めて導入しました。これらは薄型化にも貢献していますし、パネル自体が小さくなったことで小型化への道筋も明るいものへとなりました。
レンジマンと比較すると、液晶のビューエリアはそのままですが、風防ガラスが小さくなっているのがわかります。いろいろなパーツと技術がこの2年の間に進化したことで、サイズダウンを実現できたのです。
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