WATCHNAVIの新連載がスタート! あらゆる立場で30年以上も時計業界に関わってきたLouさんが綴るのは、第一線で活躍する時計関係者にまつわる心温まるエピソードの数々。時計を扱う人々のことを知れば、もっと深く時計選びが楽しめるようになるはず!
時計は人で買う
「時計は人で買う」——そんな言葉を聞いたことがありますか?
正規の時計専門店や百貨店の時計フロアには、数えきれないほどの素晴らしい時計が並んでいます。機能やデザイン、文字盤の雰囲気……探せば必ず心に響くポイントがあるでしょう。お店ごとに個性があり、ブランドの展開にもこだわりが見える。そんな空間で時計を選ぶのは、何よりの楽しみです。
でも、時計選びをもっと特別なものにする方法があります。
それが、「時計は人で買う」という感覚です。
お気に入りの時計を探すのと同時に、ぜひ販売スタッフの方々にも注目してみてください。
「あ、この人に勧めてもらいたい」「話してみたい」——そう思える出会いは、嗜好品を選ぶうえでとても大切です。気が合うスタッフと出会えたなら、それは時計以上の「ご縁」の始まり。時計の世界を案内してくれる心強いガイドにもなってくれます。
岡山・トミヤの李さん

第1回でご紹介したいのは、岡山の名店トミヤに勤める販売スタッフ、李さんです。
トミヤは中国地方を代表する時計専門店。岡山の表町商店街で、カジュアルウオッチから超高級時計まで幅広く展開し、街を盛り上げ続けてきました。商店街を歩けば、それぞれ雰囲気の異なる店舗が立ち並ぶ、時計好きにはたまらないスポットです。
その中でもカルティエやブレゲを扱う「ユーロサロン店」で活躍しているのが李さん。約6年前、トミヤの古市聖一郎社長から「ぜひ会ってほしいスタッフがいる」と紹介され、出会いました。お名前から「日本の方ではないのかな?」と思いましたが、彼は中国から日本に渡ってきた青年でした。
努力と真心の人
李さんは熱心で優しい心の持ち主。会ってすぐに打ち解け、東京でのセミナーの折には「会いたい」と連絡をくれて、一緒に食事をするような仲になりました。
印象的だったのは、トミヤの創業祭。会長や社長をはじめ、スタッフとブランド担当者が一堂に会する懇親会で流された、李さんの紹介動画です。中国から単身で日本に渡り、日本語を完璧に習得し、努力の末にトミヤの大黒柱へと成長した姿に、心から感動しました。
彼の接客は温かく、心を通わせるものです。ユーロサロン店だけでなく他店舗にも案内してくれるその姿勢に、多くのお客様が「李さんから時計を買いたい」と感じるはずです。
時計と人のご縁
「時計は人で買う」——この言葉が伝えるのは、単なる販売以上の関係です。時計と人とをつなぐ“縁”を大切にすること。李さんはその象徴のような存在だと感じます。
トミヤには、まだまだ魅力的なスタッフがたくさんいます。きっと皆さんも素敵な時計と人のご縁を見つけられることでしょう。
次回からは編集部の新鋭Ren君とともに、日本各地の名店を訪れ「人」を紹介していきます。どうぞお楽しみに。
Text/Lou
[Lou] 学生時代のカジュアルウォッチチェーンの販売アルバイトから時計の魅力に取り憑かれ、29歳で大手スイス時計グループに入社後は、カジュアルから高級時計まで様々なブランドの事業部長を含む要職を歴任。ファッションの分野でも要職に就いて高級ファッションブランドの時計事業も担当し、営業、販売、マーケティングなど多くの分野で現場を経験。現在は、時計事業のアフターサービス業務を継続しつつ、自身のキャリアと欧米の時計業界との幅広く強固なパイプを活かし、カジュアルウオッチからインディペンデントウオッチまで数々なブランドのコンサルティングを行っている。
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