まだブーム?もう下火?自分で組み合わせる腕時計の是非をシチズンFTSで問う

なかなか欲しいデザインの時計が見つからない。そんなときに選択肢に上がるのが、自分で腕時計のパーツを選んでオーダーできるカスタムメイドの腕時計。日本では、2014年に誕生したMaker’s Watch Knotが火付け役となり、以後、アンダーン、ルノータス、モノローグ、ノードグリーンなどの新興ブランドが続出。スイス時計界の名門ボーム&メルシエもBAUME名義で同市場に参入するなど、カスタムオーダーは腕時計を選ぶうえで一度は候補に上がるであろう存在となった。だが、本当に新たなビジネスとして起業家が目をつけるほどの魅力が、カスタムオーダーウオッチにあるのだろうか。その実態を知るべく、いまこの市場で最も新しいと思われるシチズンのサービス「FTS」を試した。

腕時計は自分でデザインを決める時代!?

本当の意味でMaker’s Watch Knotが他社に先駆けて行ったのは、カスタムオーダーではない。日本の時計企業として初めてSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)の業態を取り入れたこと。これが大きな成功の要因である。つまり、商品の企画・開発から販売までを行うことで、中間流通をカット。高品質な国産時計を最良の価格で提供できるようにしたのである。低価格・高品質なカスタムオーダーウオッチの市場を開拓した先駆者Knotの人気はいまも衰えず、どこもその牙城を崩すには至っていないのが実情のようだ。

昨今のカスタムオーダーウオッチの背景にはおよそ同じような仕組みがあるわけだが、ここに2019年より日本時計界のメジャー「シチズン」も参入。FTS(ファイン・チューニング・サービス)と銘打ち、累計販売10万本を超える大ヒット作、アテッサAT8040をベースにしたカスタムオーダーサービスを始めたのである。

正直なところ、筆者は既存のカスタムオーダーウオッチに見られるシンプルデザインが好みではなかったのだが、アテッサAT8040なら自分好みの時計オーダーを試してみたいと思い立ち、さっそくシチズンのFTSオーダーページを立ち上げた。今回、カスタムするにあたって自分に課したテーマは「既製品なら絶対選ばないうえに、誰とも被らなそうなカラーリング」である。

ベゼルやケースをブラックにすると追加料金が発生するため、今回は基本設定のみでパーツを選ぶことにする。画面上で作り上げた勢いでそのまま購入するのは少し不安だったので、パーツが展示されているというGINZA SIXにあるシチズン フラッグシップ ストアにも足を運んでみたが、実際に部品を見なくても、既製品のアテッサ AT8040をチェックすれば事足りるだろう。なぜなら実物を組み立てられるわけではないので、どうにもイメージが湧きにくい。むしろ、ほぼ画面の通りなので近くにFTS取扱店がなくても心配せずにオーダーしてまず大丈夫だと感じた。

これが基本的な組み合わせ。というか、この時計なら見たことがある。何度も原稿を書いたやつだ

そんな寄り道を挟んだ後は、PC前に帰還していざ10万円越えの買い物へ。他のSPA業態のメーカーに比べれば割高だが、デュラテクト加工されたスーパーチタニウムだし、エコ・ドライブ電波だし、サファイアガラスには光の反射を抑える99%クラリティ・コーティングも施してあるし、スペック面は文句なし。普通に買っても同様の値段なので、むしろ自分で選べたことで得した気分になる。

自分で時計のデザインを選ぶと愛着3倍増し!

注文してから大体2週間ぐらいで商品が到着。男性ホルモン強めの筆者が作り上げたのが、こちら。

自分が最も選ばなそうな色ということで、時計は白×金で統一。白文字盤にシルバーの針は視認性の観点から既製品ではあまり見かけない組み合わせなはず。とはいえ使い勝手が良くないと実用時計の類は着けなくなるため、秒針のみベゼルと同色とした。また、せっかく長く綺麗に使えるスーパーチタニウムなので、その恩恵にあずかるべくバンドはブレスレット仕様に。筆者はシチズン フラッグシップ ストアで手に入れたバンドのサイズチェックシートで合わせたので装着感も良好だった。ちなみに、微調節であればバックルにあるフィットアジャスターでも調整できる。そんなわけで、手元に届いた実機はおおむねイメージ通りである。ケースの色がステンレススチールではないためわずかにグレーがかっていることも既製品で確認済みで、想定の範囲内。

こちらが画面上で組み合わせたもの。届いた実機とかなり近いイメージだったことがわかります

さて、実際にいろいろなところで着けてみた感想だが、自分が買わないであろうデザインにしたことも功を奏して、意外にも役立つシーンが多かった。たとえば海外旅行では、飛行機での移動中にずっと着けていても気にならないほどストレスフリー。着陸前にはリューズを引き出し、秒針を現地時間の都市名に合わせるだけで時差修正が行える。秒針を目立つようにしておいて、本当に良かった。あとは、リゾートチックな風景に白文字盤がよく映える! 普段はほぼ黒文字盤で過ごしているので、FTSのおかげでホワイト派の気持ちが理解できたことも大きい。

チタンで10気圧防水だからサビを気にせず着けられるのも魅力的。アテッサはビジネス的なイメージが強かったが、デザイン次第では、雪山でもビーチでも使いやすいと感じた

考えて見たらいつも着るシャツは白系が多いので、白文字盤の時計は違和感なく着用できるだろう。この時計で誰かから声をかけられることはないけれど、ひとたび聞かれれば語りたいことはたくさんある。自己満足の世界だが、それこそカスタムオーダーの魅力に違いない。

筆者は価格以上の満足感を得たものの、FTSの12万1000円〜をどう捉えるかは人それぞれ。ひとつ言えるのは、いま使っている腕時計とはまったく違うデザインを買おうと思い立ったなら、多種多彩な中から一本を選ぶよりもカスタムオーダーウオッチの方が断然スピーディかつ確実だということ。実際、自分好みの時計が作れることが、こんなにも楽しいとは思わなかった。シチズンのFTSに限らず、カスタムオーダーウオッチの市場は、まだまだ成長曲線を描きそうだと、身をもって実感した次第である。

「CITIZEN ATTESA(シチズン アテッサ)」のベストセラーモデル「AT8040」シリーズをベースに、バンドやケース、時分針などの細かい仕様まで4万通りにおよぶカスタマイズが可能な新サービス「FTS(ファイン・チューニング・サービス)」。オーダーされた時計は、丁寧に作りこまれた部品を熟練の技能者がシチズンの国内工場でひとつひとつ組上げる。「二人だけのペアウオッチ」も作れます

 

トラディショナルグリーンからカーキグリーンへと二本の間で緩やかなグラデーションを描き、文字盤周辺の見返しリングをホワイトにすることで、さわやかな印象のペアモデルに仕上がっている。参考価格は各12万1000円
一見同じデザインに見えるが、よく見ると左の秒針はブルー、そして右側の秒針はレッドになった「ちょっと変えペア」。参考価格は各13万2000円
ケースをDLCブラックで揃えて、文字盤とストラップをネイビー、ベゼルと見返しリングをブラックにした左側と、同じケースで文字盤とストラップをブラウン、ベゼルをゴールドにした右側で、それぞれを同系色でまとめた「コントラストを楽しむペア」に。参考価格は左が15万4000円、右が13万2000円

 

問:シチズンお客様時計相談室 TEL.0120-78-4807
https://citizen.jp/

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