スイスを拠点とする独立系ブランド【H. モーザー(H. MOSER & CIE.)】が、2023年の最新モデルを発表。ブランド史上初めて、レアメタルのタンタルをケース素材に採用した「エンデバー・パーペチュアルカレンダー タンタル ブルーエナメル」が発売される。レギュラーモデルとなり、価格は1182万5000円(税込)。
レアメタルのタンタルをケース素材に初採用
「エンデバー・パーペチュアルカレンダー」は、優美なカーブを描くラウンドフォルムと徹底的にシンプルを追求したダイアルを特徴とし、“レス·イズ·モア(少ないほど豊かである)”というH.モーザーの哲学を体現する特別なコレクションだ。最新作「エンデバー・パーペチュアルカレンダー タンタル ブルーエナメル」ではブランド史上初の試みとして、希少なレアメタル、タンタルをケース素材に採用。その青みがかった灰色の独特の色合いと代々、受け継がれてきたエナメル加工技術によるグラン・フー(高温焼成)のフュメ文字盤が魅惑的なコンビネーションを生み出している。
タンタルという素材に詰まったブランドCEOの想い
1802年、スウェーデン人の科学者、アンデシュ・グスタフ・エーケベリによって発見されたタンタルは、密度が非常に高くて硬質な金属で、耐腐食性や耐酸性があり、さらに展性や延性に長けているため、高精度の加工も可能とする特殊素材だ。融点が約3000℃と高く、加工には高度な専門技術が必要になるため、腕時計の素材としては一般的なものではない。今回、「エンデバー・パーペチュアルカレンダー タンタル ブルーエナメル」の開発にあたり、このレアメタルを選択した理由について、H.モーザーのCEO、エドゥアルド・メイラン(Edouard Meylan)は次のように語っている。
「私は18歳のときに両親から初めて高級時計を贈られたのですが、それがタンタル製でした。以来、いろいろと課題のある素材であるものの、H.モーザーの時計に取り入れたいという思いをずっと抱き続けてきました。タンタル製ケースにポリッシュ仕上げを施せるようになるまで、実に2年以上試行錯誤を重ねました。タンタルの加工はサンドブラスト、つまりサテン仕上げがほとんどなので、ポリッシュ仕上げを実現できたのは特筆に値すべきことだと思います。」
ひとつとして同じものが存在しないフュメ文字盤
本機は、アビスブルーと名付けられたフュメ文字盤も見どころのひとつ。ブランドのお家芸ともいえるフュメ文字盤はベースとなるゴールドに打痕模様を打ち出し、そこに湿らせた4色の顔料を細かく砕き、塗布することで繊細かつ美麗な濃淡を表現。この透明感のあるグラン・フー(高温焼成)エナメルを完成させるためには、ベテランのエナメル加工職人によって計12回もの焼き入れが行われており、ひとつとして同じものがないことも特徴となる。本機の文字盤上にブランドのロゴや12時と6時位置を除いてインデックスが設けられていないのは、フュメ文字盤の美しさを最大限まで際立たせるための意匠だ。
三大複雑機構のひとつ、パーペチュアルカレンダーを搭載
ミニッツリピーター、トゥールビヨンと並び世界三大複雑機構(世界三大コンプリケーション)と呼ばれる、長期間カレンダーの調整が不要の永久カレンダー(パーペチュアルカレンダー)を本機は搭載する。文字盤中央には月を表す小さな針、3時位置には深夜0時に瞬時に日付が切り替わるフラッシュ・カレンダー機能装備の超大型日付ウィンドウを配しており、さらに9時位置には7日間の残量を示すパワーリザーブ表示をレイアウト。見た目はシンプルだが、「エンデバー・パーペチュアルカレンダー タンタル ブルーエナメル」には、H.モーザーの高度な技術力が余すことなく発揮された印象だ。
“超高級時計”に相応しい価値を持った一本
「エンデバー・パーペチュアルカレンダー タンタル ブルーエナメル」は1000万円越えの価格設定となり、多くの時計愛好家にとって高嶺の花の存在となる“超高級時計”にカテゴライズされる。ただ、レアメタルを用いたハイスペックケースに、芸術品のような質感のフュメ文字盤を巧みに調和させ、さらに複雑機構のパーペチュアルカレンダーまで有することを踏まえると、相応の価値を持つ一本といえるだろう。
H.モーザー「エンデバー・パーペチュアルカレンダー タンタル ブルーエナメル」 Ref.1800-2000 1182万5000円/手巻き(自社製Cal.HMC 800)、毎時1万8000振動、168時間パワーリザーブ。タンタルケース&ステンレススチールケース(シースルーバック)、クーズーレザーストラップ。直径34mm、厚さ6.3mm。2023年春入荷予定。
問い合わせ先:スイスプライムブランズ TEL.03-6226-4650 https://www.carl-f-bucherer.com/ja ※価格はすべて記事公開時点の税込価格です。
Text/三宅裕丈
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