時計のコンシェルジュに聞いた、その時計を買ったワケ vol.4 ――IWC編

高級時計は時計店、百貨店、ブティックなどで販売されているが、買いたい時計がまだ決まっていない段階なら、マルチブランド展開をしている時計店の利用を推薦したい。理由は選りすぐられたブランドの主力モデルを中心に揃えていて、それら複数を一度に比較検討できるため。そんな時計専門店で働くスタッフたちは広く時計に精通しているが、個人的にはどんな時計を着用しているのか? そんな疑問を時計専門店oomiyaのスタッフに尋ねる連載4回目は、oomiya 鹿児島店の増満さんに話しを聞いた。

<oomiya 鹿児島店>増満博昭さん

「着用シーンを想像することが時計選びの第一歩です」

長く使えるブランド品に興味があり、その最たるものが高級時計だと考えたことをきっかけにoomiya 鹿児島店で働くことを決めたという増満さん。時計の奥深さを知り、ますます関心が深まったと入社当時について語る。「入社以前はブランド時計はネームバリューがすべてだと思っていました。ですが、すぐに勘違いだと気づかされました(笑)。知名度が低いブランドだとしても、その歴史が深かったり、高度な技術によって開発された時計が多々あります。これほど多く選択肢がある高級嗜好品というのも、実にめずらしいですよね」

だからこそ、一本を選び出すのは難しい。「私の場合、初めて買う本格時計ということもあってフォーマルとカジュアルの両方で使えるモデルをリサーチ。そんなときに出会ったのが、IWCのパイロット・ウォッチ・クロノグラフ(旧型のRef.IW377701)でした。服装を選ばないクラシカルなデザインに加え、シャフハウゼンで培った確かな技術と老舗IWCという安心感、着用シーンや季節に合わせてストラップを交換できるアレンジのしやすさが、この時計に決めた理由です」

「私と同じような境遇(初めての本格時計)の方は、シンプルな3針式も扱いやすいでしょう。IWCから選ぶなら、パイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイアが候補に挙げられます。伝統的な航空時計スタイルを受け継ぎつつ、最新の自社製ムーブメントを搭載しており、精度もパワーリザーブ(巻き上げられたゼンマイによる駆動時間)も大きく進化しています。極めて実用的な一本といえます」

機能のバージョンアップを解説しつつ、新型スピットファイアの個性についても話してくれた。「“スピットファイア”は、かつてイギリス軍が使っていた伝説的な戦闘機に由来します。IWCはイギリス空軍にも航空時計を納入していたことから、このネーミングが採用されました。黒文字盤、ロジウムメッキされた針、カーキグリーンの布製ストラップの各色は、スピットファイア機のコックピットに使われている色彩をヒントにしたものです。裏蓋にはその機体がエングレービングされているなど、航空ファンも虜にするデザインです」

IWC「パイロット・ウォッチ・オートマティック・スピットファイア」Ref.IW326801 59万4000円/自動巻き(自社製Cal.32110)。毎時2万8800振動。72時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース。布製ストラップ。直径39mm、厚さ10.8mm。6気圧防水

 

高級時計を買うシチュエーションは千差万別。増満さんが印象的なエピソードを語ってくれた。「この仕事をしていると、度々素敵なシーンに出くわすことがあります。以前、ご主人への感謝として奥様と娘様が当店へお越しくださり、プレゼントとしてタグ・ホイヤーの時計をご購入いただきました。この時計をいったんお預かりし、後日、ご主人を連れて3人でご来店。なんでも、ご主人は若い頃からタグ・ホイヤーに憧れていらっしゃったようですが、高額なため購入は遠慮されていたとのこと。当日も買うつもりはなく、ご来店されました。

ひと通りタグ・ホイヤーコーナーを見た後、店から出ようとされたときに奥様と娘様が呼び止め、お預かりしていたタグ・ホイヤーをサプライズプレゼント。お二人からの“何十年も仕事一筋、家族のために頑張ってくれてありがとう”という言葉に、ご主人は号泣。つられるようにお二人も、そして私たちもウルウルと(笑)。ご家族の想い出となる大切な日をお手伝いできたことは、スタッフ冥利に尽きます」

 

時計を初めて手にしたときの幸福感や高揚感は忘れがたいもの。ましてやサプライズの贈り物となれば、差し出す方も強く記憶に残ることだろう。時計をプレゼントするなら、まずは時計専門店のスタッフに受け取る側の趣味嗜好を伝えてみよう。きっと良いアドバイスがもらえるはずだ。

【連載】時計のコンシェルジュに聞いた、その時計を買ったワケ

vol.2 ――パネライ編(https://watchnavi.getnavi.jp/interview/37920)

vol.3 ――ブライトリング編(https://watchnavi.getnavi.jp/interview/38145)

<取材・撮影協力>

oomiya 鹿児島店
TEL:099-219-9255
住所:鹿児島県鹿児島市金生町2-11
営業:10:30~19:30
定休日:水曜

※取り扱いブランドは、オフィシャルサイト(https://www.jw-oomiya.co.jp/)に掲載。

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