開発陣が明かす新型G-SHOCK「MT-G」に初採用されたデュアルコアガード構造の革新性

12角形ベゼルを採用した経緯と必然性

––……そろそろ新作の特徴となっている多角形ベゼルの話を聞いてもいいですか?

牛山:語りたいところが多すぎて(笑)。

松田:ベゼルの形状については、最初はラウンド型もトライしたのですが、裏面のカーボンの張りのある形と対比してメタルのシャープなイメージをデザインに落とし込んだ結果、12角形にたどり着きました。時計好きの方によく8角形と間違えられますけど、MTG-B2000のベゼルは12角形ですからね(笑)。

今回の取材時に用意してもらった歴代モデルと新作の比較用サンプルでも、多角形ベゼルを持つMTG-B2000の存在感が際立つ

中塚:デュアルコアガード構造を成立させるためにベゼルは重要なパーツになっています。というのも、このモデルには裏ブタがないので、文字盤側からのアクセスで組み立てを成立させる必要があります。メタル製アウターケースの文字盤側からモジュールの入ったモノコックケースを収め、これらすべてをカバーするのがサファイアガラスを嵌め込んだベゼルとなるわけです。

ベゼルの対角線上にある4つのビスはアウターケースのみと連結しますが、同時に上から押さえ込む形でモノコックケースも固定しているんです。この3ピース構造は、アウターケースが受けた衝撃を各部に分散させてモジュールへのダメージを低減させる「ダブル受け構造」になっています。ちなみにボタンの取り付けなどを含めた、一連のケース組み立ては山形カシオの技術者がほとんど手作業で行います。

ダブル受け構造を解説する中塚さん。細部に至るコンマ数ミリの設計の積み重ねでこの構造を実現した

松田:私たちがヒーローモデルと呼んでいるタイプでは新色となるボルドーIPをベゼルに施し、これまでとは違った印象に仕上げています。実は、このようにベゼルだけ色を分けたりするのはベゼルとガードやビスの台座が一体型になっていた従来機では難しかったので、MTG-B2000では色々なことができるようになりました。

牛山:すでにG-SHOCKはCMF(編集部注/色:Color、素材:Material、仕上げ:Finishing)デザインに力を入れており、MT-Gでも多層カーボンやレインボーIPなどを展開してはいますが、これからさらにその幅を広げられるようになります。

 

–先日のウェビナーでも説明がありましたが、MTG-B2000はバンドにも進化のポイントがありましたよね。

中塚:メタルバンドにMIM(編集部注:金属粉末射出成形法Metal Injection Moldingの略)を使い、軽量化を図っています。MIM自体は10年以上前からある技術でしたが、金属から結着剤を除く過程でスができてしまっていたんです。最新技術では品質が高まり、MT-Gで採用することができました。これまで高密度の金属塊だったメタルパーツが中空化できたことで、現行機種から約15%も軽量化を実現。ちなみにこのレイヤーコンポジットバンドの組み立ても手作業と、手の込んだ作りになっています。

従来のレイヤーコンポジットバンド構造(写真上)は、金属塊のバンドコマにファインレジンの足を差し込んで固定。対してMIMを採用した新型はメタルが中空設計となった分ファインレジンの割合が増え、十分な堅牢製を保ちながら軽量化を達成。実際に持って比較すると15%という数値以上の軽さが実感できた

牛山:さらにバンドの着脱を簡単にするスライドレバー構造をMT-Gに初採用するのみならず、これを初めてダブルにしました。ただ、G-SHOCKのタフスペックを持たせるために太めのレバーで硬めの操作感に設定しているので、交換バンドをお求めいただいた際の付属品として専用のピンセットもご用意しました。指先でも着脱できなくはないのですが爪を痛める恐れがありますので、ぜひピンセットをお使いください。

レイヤーコンポジットバンドを取り付けた状態でもバンドの輪の中に収まるよう、専用ピンセットは小型に設計。ピンセットの間に指を一本入れて微妙な開きを調整できるようにする使い方は、ウェビナーでスムーズに使えるよう練習を重ねた牛山さんがたどり着いた技

–実際に触れることができなかったので、ウェビナーでダブルスライドレバーの話題になったときに耐衝撃、耐振動、耐遠心重力の「トリプルGレジスト」は大丈夫なのかな、と思った記憶があります。

松田:モノコックケースの裏側に記載はしているんですけど、CARBON MONOCOQUEのロゴを優先させたらトリプルGレジストのロゴまで入れる余地がなくなってしまい……。Bluetooth対応機器には色々と記載しなければならないことも多く、ご心配をおかけしました。

牛山:ちゃんとMTG-B2000も、「トリプルGレジスト」です。G-SHOCKに後退はあり得ませんから、ご安心を(笑)。

ヒーローモデルのボルドーIPに続いて人気というのが、このブルーIPベゼルにメタルバンドの組み合わせ。この状態は、一度、ラバーバンド付きの状態で購入した後、メタルバンドを追加購入しないとできない。しかも交換用バンドを購入できるのは限られた店舗のみという。そんなことを聞いたら余計に欲しくなるが、別売メタルバンドは税抜3万円、ラバーバンドは1万5000円と、ベーシックなG-SHOCKが購入できる価格。こういう点でも上位G-SHOCKならではの優越感(?)が得られる

 

正直、筆者は話を聞くまでは好調なモデルがあるなかでの進化に懐疑的だったが、開発陣からすれば新しい技術や素材、構造がある限り挑戦をし続けるその姿勢こそがG-SHOCKということなのだろう。実際に完成したMTG-B2000は、10万円を超える上位機種としての正統進化を果たし、ヒット作と同等以上に快適な装着感さえ実現した。特徴的な多角形ベゼルは、角型からはじまったG-SHOCKの本来の姿。よりエッジを立たせた2005年のGW-056や近年の2019年のGA-2100などの前例もあり、すぐに馴染むことだろう。それより気になるのは、やはりMTG-B2000のCMF展開。これから本機でどのような挑戦が始まるのか。開発陣の次なる一手は、きっとまた私たちG-SHOCKファンにサプライズを提供してくれるに違いない。

 

問い合わせ先:カシオ計算機 お客様相談室 TEL.03-5334-4869
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